LinuxCon Japan 2011 Preview

第1回来たれ! Linux/OSSの未来を背負う若きデベロッパたちよ

The Linux Foundationジャパンディレクタ
福安徳晃氏
The Linux Foundationジャパンディレクタ 福安徳晃氏

来る6月1~3日、⁠LinuxCon Japan 2011」がパシフィコ横浜にて開催される。Linuxおよびオープンソースソフトウェア(OSS)分野の国際技術カンファレンスとしてはアジア地区で最大規模であり、日本では昨年の「LinuxCon Japan/Tokyo 2010」に続く3回目の開催となる。

今回から3回にわたって、その魅力に迫る。第1回目は日本でのLinuxCon開催の意義や今年の見所を、The Linux Foundationジャパンディレクタの福安徳晃氏に聞いた(本文中敬称略⁠⁠。

LiuxCon Japan 2011の見所

――― LiuxCon Japan 2011まで3ヵ月を切りました。今年はどのような内容になるのでしょうか。

福安:現時点(2011年2月)でお話できるのは、基調講演のおもな内容です。まずはLinux 創始者のLinus Torvaldsが来日して講演を行います。Linusの来日は2009年の「Japan Linux Symposium」以来のことです。また、The Linux Foundationからは、エグゼクティブ・ディレクタのJim Zemlinが講演することになりました。

SCSI SubsystemメンテナでNovellに所属するJames Bottomleyも、2009 年の基調講演、昨年の一般講演に続く登壇です。今回はより多くの人に聞いてもらいたいという意図で基調講演をしてもらうことになりました。また、LWN.net 編集者でカーネル開発者でもあるJon Corbetには、Linux.com Japanで人気のコンテンツLinux Weather Forecast⁠Linux天気予報)を生の講演でやってもらう予定です。

Jon Corbet氏(LinuxCon Japan/Tokyo 2010にて)
Jon Corbet氏(LinuxCon Japan/Tokyo 2010にて)

複数のデベロッパによるパネルディスカッションとしては、⁠Kernel Developers Panel」「Asian DevelopersPanel」が予定されています。Kernel Developers Panelは、コミュニティリーダーによるディスカッションを通じて、最新動向や今後の方向性などの話題を提供する予定です。

もうひとつのAsian Developers Panelは、今回からの新たな試みです。昨年はJapanese Developers Panelとしていましたが、LinuxConはワールドワイドでも4ヵ所、米国と日本のほかには南米と欧州でしか開催していないアジア地域で最大級のLinux/OSSイベントです。つまり日本はアジアで唯一のLinuxCon開催地ですから、日本だけでなく中国や韓国のデベロッパの声も聞ける場を作ろうと企画したのです。

――― 中国は近年、オフショア開発の委託先として、日本のみならず世界各国から開発案件が集まっていますから、技術者の数も増えているでしょうし、技術力も鍛えられていることでしょう。韓国もAndroid 端末などの開発を通じて組込み系を中心に技術力を伸ばしていることと思います。

福安:実際、カーネルコントリビュートの数を国別に見れば、日本も相当な数にのぼりますが、中国はさらに多いのです。実態をみると、やはり中国では受託開発企業のエンジニアが多いようですが、韓国ではサムスンのエンジニアが中心となってLinuxコミュニティでのプレゼンスを増してきています。このような彼らの最新動向を知りたいですよね。そこで、Asian DevelopersPanelでは日・中・韓の有力デベロッパを集めてディスカッションしてもらう予定です。

――― 一般演題はCFP(Call for Participation)の募集を締め切って、4月号が発売されるころには、ちょうど選考に入っているところですね。

福安:一般演題では、プレゼンテーション、パネル、分科会、テクニカルチュートリアルなど合わせて60 ~70のセッションを予定しています。受け付けたCFPはプログラムコミッティによるディスカッションを経て審査しますが、昨年は約40の枠に対し80あまりの応募があり、惜しくも見送った例は多いですね。ですから一般演題でも厳選した内容となっているはずです。

LinuxCon Japan/Tokyo 2010のJames Bottomley氏のセッションの模様
LinuxCon Japan/Tokyo 2010のJames Bottomley氏のセッションの模様

LinuxConの意義

――― The Linux Foundationとしては、LinuxConをどのようなものと位置づけているのでしょうか。

福安:LinuxConはデベロッパに軸足を置いたカンファレンスです。来場する方には、講演者の話を聞くというより、積極的にディスカッションに参加し、抱えている課題を解決する場として使っていただきたいと考えています。

普段、デベロッパの方々はオンラインでディスカッションしているわけですが、たまにこうしてリアルな世界で話し合うことも意味のあることです。いきなりオンラインのコミュニティに発言する勇気がないという方でも、世界のデベロッパに売り込む場として使えるでしょう。日本人には奥手な方が多いですが、一度会って話をすればコミュニティに入りやすくなるはずです。LinuxCon Japanは、日本と海外のデベロッパが出会う貴重な機会を提供します。

――― 今年のLinuxCon Japanは、2009年のJapanLinux Symposiumから数えて3回目となる大きなイベントです。大々的に行うことにも意味があるということでしょうか。

福安:昨年のLinuxCon Japan/Tokyo 2010では仮想化やTracingのミニサミットを開催しました。その後、TracingはKernel Summitで議論されました。また、仮想化はコミュニティで議論され、開発の方向性に大きな影響力を与えました。これは、Linuxのサポートをビジネスとする日本のベンダやシステムインテグレータにとって、大きな価値を持つものといえるでしょう。今後も同様に、LinuxCon Japanは日本のデベロッパたちの声を集約するための場となるはずです。

LinuxCon Japan/Tokyo 2010のセッションのひとコマ
LinuxCon Japan/Tokyo 2010のセッションのひとコマ

来場者への期待

――― Linux/OSS活用の幅は大きく広がり、今やWebの大規模なサービスや大企業のシステム、スパコン、モバイル端末など組込み用途にまで、普通に使われる時代となりました。Linux/OSSの開発が社会に与える影響も大きなものとなっています。LinuxConでは、ユーザ側の立場の方の参加も期待しているとのことですね。

福安:ユーザとデベロッパの橋渡しをすることもTheLinux Foundationの役割のひとつです。ユーザの方々には、要望や質問などを、メンテナたちに直接伝えられる場として、ぜひLinuxConを活用していただきたいですね。Linuxに対するコントリビューションはコードだけではありません。ユーザからの要望というのも非常に貴重なものなのです。

――― もちろん、おもな来場者となるのはデベロッパの方々ですね。彼らにはどのような期待をしているのでしょうか。

福安:Linuxコミュニティには高齢化という不安材料もあります。もっと若い人たちにも積極的に参加してほしいですね。LinuxConで世界のメンテナたちに出会い、彼らを目標にしてほしいと考えています。LinuxConには、メンテナたちが数多く参加してきますから、ワールドクラスのデベロッパとダイレクトに対話できる機会があります。

また、どんどんCFPを出してほしいと思います。世界中からトップクラスの技術者が集まるLinuxConJapanに投稿されるCFPの質は極めて高く、若い方が投稿しても簡単には通らないかもしれません。でも、世界で活躍するための一種の登竜門として、何度となくチャレンジしてほしいです。たとえ選考から漏れてしまっても、トップメンテナや世界中のLinux業界リーダにCFPが見てもらえるだけでも、とても大きな価値だと思います。ぜひ、若手デベロッパにも世界の舞台に立っていただきたいですね。

開催概要

日程2011年6月1日(水⁠⁠~3日(金)
会場パシフィコ横浜
来場者約500名(予定)
参加費4月20日まで150USドル、4月21日以降200USドル
申し込みURLhttp://events.linuxfoundation.jp/events/linuxcon-japan/register
主要
テーマ
(1)Linux Kernel全般
  • ファイルシステム:Ext4、Btrfsなど

  • 仮想化:KVM、ネットワーク

  • 高速化、高信頼化技術

(2)組込みLinux
  • SMP(メモリ共有型並列コンピューティング)対応

  • パワーマネジメント

  • ディストリビューション:Android、MeeGoなど

  • 標準化:Linaro、Yocto Project

(3)その他
  • ライセンスコンプライアンス:企業がLinuxを導入する際の法的な取り組みなど

  • ディストリビューションの動向:RHEL6、Debian、Ubuntu、Fedora、SUSEなど

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