Linuxおよびオープンソースソフトウェア
世界のトップエンジニアとコミュニケーションできるチャンス
- ――LinuxConとはどういったカンファレンスなのでしょうか。
LinuxConは、
Linuxカーネルやそのほかのオープンソースプロジェクトに携わっている開発者や技術者をターゲットとしたイベントです。たとえばカーネルの開発を進めている方々が、 プロジェクトを進めていく上でさまざまな課題に直面することがあると思います。このようにオープンソース開発における課題について、 オンラインではなく、 実際にOSSコミュニティ参加者と直に会って議論して解決するということがLinuxConのコンセプトになっています。 オープンソースは通常、
メーリングリストなどを使ってオンラインで開発を進めるケースが多いのですが、 このような開発形態であるからこそ、 コミュニティ参加メンバーとの信頼関係が実はすごく重要なんです。その信頼関係を醸成しなければ、 たとえば新しい開発者がコミュニティに参加しようとしても、 なかなか敷居が高いと思うんですね。 またコミュニティの中には有力な開発者がいるわけじゃないですか。たとえば誰かが開発したパッチを取り込むかどうかを決めていく、
あるいはそこに影響を及ぼす開発者です。彼らは1日に何百、 何千というメールを受け取るわけです。そうすると、 すべてのメールに目を通すことは現実的に難しくなり、 自分がよく知っている、 あるいは信頼している人のメールを優先的にチェックしていくんですよね。なので、 コミュニティに積極的に参加して成果を上げるためには、 そういった有力な開発者にまず自分を知ってもらう、 あるいは信頼してもらう必要があると考えています。 ただオンラインだけで信頼関係を醸成するのはなかなか難しい。だからこそ、
実際に会ってコミュニケーションを図ることができるLinuxConのような場所を活用し、 有力な開発者に自分の人となりや技術的な関心をわかってもらう。その上でLinuxやオープンソースの開発に積極的に参加してほしいというのがLinuxConの狙いの1つになっています。 - ――LinuxConの日本での開催は今年で4回目ということになります。この間、
どういった変化があったのでしょうか。 まず、
毎年規模は拡大し続けています。これはLinuxをはじめとするオープンソースが多くの場所、 場面で活用されるようになったからだと考えていますが、 それに加えて近年では幅広い領域で使われるようになったことも影響しています。当初は業務のためにLinuxを利用しているユーザー、 あるいはそのためのサービスを提供するプロバイダなど一般的に 「エンタープライズ」 と呼ばれる分野がLinuxビジネスの中心でした。ところが最近はAndroidを中心に、 組込みやモバイルといった領域でLinuxの利用がすごく増えています。 実際にLinuxカーネルのパッチ投稿のトレンドなどを見ていても、
最近は組込み分野の開発がすごく盛んな印象です。そういったビジネスやコミュニティにおけるトレンドを反映して、 以前はエンタープライズの方々が中心でしたが、 今は従来のエンタープライズ分野での発表に加えて、 組込み分野における発表が増加傾向にあるような気がします。 ただそれも、
昨今の 「クラウド」 や 「ビッグデータ」 などのビジネストレンドを反映し、 どんどん変化してような気がしています。
Automotive Linux SummitとCloudOpenも併催
- ――LinuxCon Japan 2013で特に注目してほしいというポイントはありますか。
実はLinuxCon Japan 2013は、
LinuxConだけではないんですね。LinuxConの前々日と前日に 「Automotive Linux Summit Spring 2013」 を開催するほか、 「CloudOpen Japan 2013」 をLinuxConと同時開催します。 最近は自動車やクラウドなど、
特定の分野の開発者や技術者が集まり、 その中のニーズを把握して課題を解決していこうという動きが加速しています。これまでもLinuxConという枠組みの中で、 1つのトラック (部屋) に仮想化のセッションを集めて、 そこに仮想化に関心のある開発者を集めて集中的にディスカッションするなどといったように、 特定の分野で特定の人たちが集まって深く議論するという試みを行っていました。それが大きくなって、 新たにLinuxを導入していこうという自動車業界の領域において 「Automotive Linux Summit Spring 2013」 を、 そしてクラウドという領域では 「CloudOpen Japan 2013」 というイベントを開催することになったわけです。 特定の領域、
あるいは特定の業界でLinuxを使っている人たちには、 やはりその領域や業界ならではのニーズや課題があるんですね。それをしっかりディスカッションするという機会を別に設けているというのが今回の大きな特長だと考えています。 - ――Automotive Linux Summit Japan Spring 2013はどのようなカンファレンスになるのでしょうか。
実はAutomotive Linux Summit Japanは2011年に日本で始まりました。そして2回目となる去年はイギリスのJLR
(=ジャガーランドローバー) が持っているファシリティを使って開催しています。ただスピード感を持って自動車業界の課題解決に取り組むべきだという考えから、 今年から年2回開催になったという経緯があります。 このイベントで対象と考えているのは自動車業界の方々ですが、
組込みやモバイルといった領域で開発を行っているエンジニアにもぜひ来ていただきたいですね。自動車業界とモバイル、 あるいは組込みといった業界は、 おそらく今後垣根がどんどんあやふやになって融合されていくのではないかと思っています。それに自動車業界も、 ある意味で先行している組込みやモバイルの分野からもっと学びたいというニーズが間違いなくあります。その中で、 業界の枠を取り払ってディスカッションすることができれば、 大きな成果につながるのではないでしょうか。
Linuxに若い力を! 学生トラックも展開する今年のLinuxCon
- ――CloudOpen Japan 2013の目的を教えてください。
クラウド系のイベントは数多くありますが、
本当に技術に対して中立的でオープンにディスカッションする場というのは意外とないんです。日本ではあまりそういう声は聞こえてきませんが、 アメリカではクラウドは新たなベンダーロックインだとも言われています。 実際、
去年IDCとLinux Foundationが共同で行ったリサーチ結果を見ても、 ユーザーがクラウドプラットフォームを選ぶときに重視するポイントとして、 オープンソースが使われていることやオープンスタンダードであること、 あるいはオープンなAPIが提供されていることなど、 オープンであることが重視しているという結果が出ました (※)。だとすると、 いろんなクラウドプラットフォームテクノロジーがある中で、 クラウドに関わる人たちが一堂に会して 「オープンなクラウドとは何か」 をオープンに議論する場はすごく重要だと考えるようになりました。そうしたところから、 CloudOpenというカンファレンスが始まっています。 - ――カンファレンスの開催に向けた現状の進捗を伺わせてください。
いずれのカンファレンスも発表者は公募で、
現在は幅広く発表したい内容 (CFP:Call for Participation) を募集している段階です。このCFPの締切は2月28日になっています。その後プログラムコミッティと呼ばれる人たちがCFPをレビューし、 有意義であると思われるCFPを投稿した人にカンファレンスで発表していただくという形です。 ちなみに今年も学生向けの取り組みを昨年に続き行いたいと考えています。Linuxカーネルコミュニティの課題として、
年齢層が徐々に上がってきているということがあるんです。それで新しい若い人たちに参加してもらいたいということで、 学生の方々からもCFPを応募し、 学生トラックという枠の中で発表してもらおうと思います。 - ――最後に、
LinuxConの注目すべきポイントを教えてください。 日本においては、
LinuxConはグローバルに対する窓口みたいな役割を担っていると考えています。世界中からトップレベルの開発者が集まって皆さんの講演を聴くわけですから、 そこでコミュニケーションが生まれる可能性は高いわけです。また、 日本での開催ですが、 グローバルのイベントということで、 発表は英語で行います。つまりグローバルなステージで、 グローバルな人材と対峙し、 自分たちの課題を彼らと共有して解決することができる。その意味で、 現状課題があって困っている、 あるいは何か先端的なことをもっと学びたいと考えている人にとっては、 参加する意義の大きいイベントになっているので、 ぜひ多くの方々に参加していただきたいですね。
日程 | 2013年5月29日 |
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会場 | ホテル椿山荘東京 |
参加費 | 2月28日まで300USドル、 |
申し込みURL | http:// |