MA受賞への5つのアプローチ

第2回1PAC.INC. ~チームだからこそできること

日本最大級のWebアプリケーション開発コンテスト「 Mashup Awards(MA⁠⁠」の受賞者の方へのインタビューを連載でお届けしています。第2回のゲストは、昨年度(MA5⁠⁠、優秀賞を受賞された1PAC.INC.さんです。

優秀賞受賞作品「TRAVATAR(トラバター⁠⁠」は、ユーザー同士がすれ違う度、自分の分身となるアバターがすれ違ったユーザーのアバターと交換されていくiPhoneアプリです。アバターが誰かのiPhoneをどんどん渡り歩いていくことによって思いもよらない旅を楽しむことができます。TRAVATARのクリエイティブディレクターである山さんは、前年度MA4での最優秀賞受賞者で、MA4受賞をきっかけに昨年フリーランスから1PAC.INC.に転職し、MA5では1PAC.INC.の開発メンバーの皆さんとともに見事二度目の受賞に輝かれました。

それでは、力強いチームワークによって成し遂げた、TRAVATARの誕生、Twitterによる100,000ダウンロードの達成、新規案件の受注等についてお話しを伺ってまいりましょう。

R&Dとして研究開発したプロジェクトを外へ発信していく

-優秀賞受賞作品「TRAVATAR」は、どのように開発されましたか?

左から:テクニカルディレクター山 健太郎さん、チーフデザイナー山口 正人さん、システムエンジニア木田 浩世さん、テクニカルディレクター野村 政行さん
左から:テクニカルディレクター山 健太郎さん、チーフデザイナー山口 正人さん、システムエンジニア木田 浩世さん、テクニカルディレクター野村 政行さん
山口さん:
MAの審査対象となるAPIのリストや流行のサービス等をピックアップして、みんなでブレストしていたのですが、漠然と思っていた"iPhoneを使ってキャラクターが動いていくと面白いんじゃないか"というイメージを具体的に話し合っていくうちにTRAVATARのアイデアが生まれました。
山さん:
月初にブレストして1カ月後が締め切りだったのでかなり切羽詰まっていました。iPhoneアプリの場合、Appleへの申請を10日前には出さないといけないということで制作期間は実質3週間くらいです。通常の業務と兼務しましたが、その期間は比較的、TRAVATARの制作に集中できました。

-コンペティション等への参加には元々積極的に取り組まれていたのですか?

野村さん:
1PAC.INC.は今期で3期目となる若い会社で、1期目はまだコンペティション等に参加できるリリースがない状態だったのですが、2期目に当たる昨年度は、R&Dとして研究開発したプロジェクトを外へ発信していく方向に転換しました。
やりたかったアワード等にやっと参加ができる体制になったのでエンジンがかかった状態です。昨年、MAで最優秀賞を受賞した山が入ったこともMA5に応募したきっかけの一つです。⁠ディフェンディグチャンピオンを目指してもちろん出るよね?」と。
1PAC.INC.はクライアントワークがメインのWEB制作会社なのですが、WEB制作に留まらず、立ち上げの企画からWEB以外の分野までワンパッケージでプロデュースできるような会社になりたいという思いでスタートした会社で、その思いが社名にも込められています。
新しい分野へチャレンジするためにR&Dも積極的に進めていて、MAへの参加もR&Dの一環という位置付けです。Googleにならって普段から「20%ルール」を導入していますが、TRAVATARの制作中は80%以上をR&Dに費やしています。
山さん:
R&Dに対する意識はとても高い会社ですね。そして、そういった研究開発に全力を出せるメンバーがそろっていると思います。

累計100,000ダウンロード。Twitterによる初速でApple Storeランキング無料アプリで総合1位に

-TRAVATARには、どのようなAPIを利用されましたか?

山さん:
「Googleマップ」の他に、⁠ぐるなび」等のAPIをいくつか加えました。まずは企画ありきで、後からAPIを付け足した感じです。
あまり複雑な操作をユーザーにさせないようにしたかったので、使い込んで機能が満たされるかたちのAPIではなく情報提供型のAPIから探しました。
TRAVATARのコンセプトとして、もちろんコミュニケーションはして欲しいのですが、ユーザーが"自ら進んで行動を起こす"のではなくて、"自分がした行動の結果として予期せぬ出会いが生まれる"ことを目指したかったので、ユーザー同士の検索はできない等の制約を敢えて設けています。
検索機能を付けた方がいいんじゃない?とかTwitterと連携した方がいいんじゃない?と散々ブレストしたのですが、あまり高機能にならないようにしました。
iPhoneアプリでは、起動して1分以内に主要な操作が終わらないとユーザーは使ってくれないとよく言われるのですが、TRAVATARも、起動して「自分のところに何がいるか?」⁠こいつはどこから来たのか?」⁠自分のトラバターはどこにいるのかな?」と確認して終わるような、日常のすきま時間で完結する使い方がiPhoneのユーザーにマッチしたんじゃないかなと思います。

-TRAVATARのリリース後の展開についてお聞かせください。

山さん:
リリース当初は、まずダウンロードしてくれないと困るし、ダウンロードしてくれたユーザーが全国に散らばらないとアバターが動かないし、そもそもユーザー同士がすれ違ってくれるだろうかと、結構ハラハラしていましたが、現在は累計で100,000件のダウンロード、最近のアップデートでも30,000~40,000件のダウンロードがありました。
R&Dなのでプロモーションにまったく費用をかけていないのですが、1PAC.INC.の公式TwitterアカウントとそれをReTweetされたこと等で、リリースの翌日には7,000件、またその翌日には20,000件と、Twitterだけでもかなりダウンロードされました。⁠Buzztter」というTwitterのトレンドワードを出すサービスでもしばらくTRAVATARが1位になっていましたね。
Twitterでの初速のおかげでiTunesのランキングも上がり、Apple Store内のランキングで1週間ほど、無料アプリで総合1位になりました。思わず記念にみんなでスクリーンショットをとっちゃいましたけど(笑)
温めているアイデアもいくつかあり、今後、TRAVATARは大きなプラットホームになり得るサービスだと思うので色々と展開していきたいと思います。
また、MAをきっかけに1PAC.INC.でもiPhoneアプリの開発ができることを認知いただけて、新規クライアントからのiPhoneアプリの開発案件も受注する等の効果も生まれています。

技術的にすごいものじゃなくても表現の仕方を工夫して、MAを表現の場としてとらえたらよいのではないかと感じます

-MAに応募してよかった点は何ですか?また、今後アワード等への参加を検討されている方に向けてメッセージをお願いします。

山さん:
1人で考えてた一昨年とは明らかに違い、チームで応募できたことは、私にとっては新鮮で楽しかったです。キャラクターのイラストを社員全員で描いたり、イメージムービーも簡単なのでいいと言ったのに驚くほど良いのを作ってもらえたり、チームの力のすごさを感じました。
こうやってメディアに取り上げていただいたりMAは認知してもらうためのチャンスだと思うんです。頑張って応募することによって自分の力で環境を変えていけると伝えたいですね。
山口さん:
普段は大人数で行うプロジェクトが多いのですが、今回は4人のコアメンバーで進められたので、4人で決めたコンセプトや決定事項が薄まらず、そのまま自分たちの思うかたちにできたことに充実感を感じました。クライアントワークとは別の楽しさがありましたね。
MA等に個人で応募するのは意外とハードルが高いかもしれませんが、こういう会社やチームのメンバーを誘って取り組むのも入りやすいと思うのでぜひチャレンジしてほしいです。
TRAVATARに取り組んだことによって会社としてもiPhoneアプリ開発のお話しをいただいたり、個人としても仕事の幅が広がったりしました。MAは、自分の可能性を広げるチャンスですし、チャレンジすることで自分自身を変えていくことができると思います。
木田さん:
今まで手を付けたことがない分野に挑戦することになって自分自身のスキルアップになりましたし、単純にとても楽しかったです。
野村さん:
R&Dにおいては、ともすると「自分たちのゴール」にたどり着いたらそこで終わってしまうことがあるのですが、MAのように応募するという明確なゴールがあり、かつ、TRAVATARのようにお客様がいっぱいついて下さると、そのお客様に失礼のないようにモチベーションが持続できるのが良い点だと思います。また機会があったらぜひ応募したいですね。
TRAVATARではマッシュアップと言うほどマッシュアップらしいことはしていません。ただ、技術的にすごいものじゃなくても新しいユーザー体験を演出できたことによって今回の優秀賞という評価につながったのだと思います。なので、これから応募される方にとっても、MAはエンジニアの腕を競う場所ではあるかもしれませんが、マッシュアップとしては単純でもよいので、その表現の仕方を工夫し、表現の場としてとらえたらよいのではないかと感じますね。
以前は、アイデアを持っていてもAPIがオープンになっていなかったり、使い方が難しかったり、ハードルが高かったと思うのですが、公開されるAPIの質も年々高くなってきています。今後、新しいAPIを使って新しい表現を仕掛ける人たちの作品を私自身どんどん見ていきたいです。
以前は、アイデアを持っていてもAPIがオープンになっていなかったり、使い方が難しかったり、ハードルが高かったと思うのですが、公開されるAPIの質も年々高くなってきています。今後、新しいAPIを使って新しい表現を仕掛ける人たちの作品を私自身どんどん見ていきたいです。
すれ違いで強制交換!新感覚コミュニケーションツール【TRAVATAR】
すれ違いで強制交換!新感覚コミュニケーションツール【TRAVATAR】
http://travatar.1pac.jp/
※プロモーションムービーもこちらから
Mashup Awards 5 (MA5)優秀賞
受賞作『TRAVATAR』
http://travatar.1pac.jp/
受賞者 1PAC.INC.
http://1pac.jp/

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