MBaaS徹底入門――Kii Cloudでスマホアプリ開発

第12回Kii CloudとMVP(Minimum Viable Product)

前回までで、Kii Cloudを利用したチャットアプリケーション開発の例を提示しました。最終回となる今回は、第1回で触れたMVP(Minimum Viable Product)という観点から、チャットアプリケーションを振り返ってみましょう。

MVP(Minimum Viable Product)

「アプリケーション開発に求められるもの」はたくさんありますが、第1回で上げたMVP(Minimum Viable Product)は、その中でも重要な概念です。

  1. アイデアのシンプルな実装と迅速なリリース
  2. アプリ内データの分析と分析に基づく改善

シンプルかつ、フィードバック・実装・リリースがスピーディーである、いわば『Keep it simple, stupid, and speedy』であることを要求しています。

Kii Cloudが提供する機能を要求に応じて組み合わせることで、シンプルな実装を平易に完成させることができます。またサーバ側の開発・構築・運用のコストを削減できることも見逃せません。サーバ側の開発は、ユーザ/データの増加に応じたスケーラビリティの考慮も必要となり、クライアントアプリケーションとは異なるノウハウが必要になります。これらの問題を気にすることなく、クライアントアプリケーションの開発に専念できることはKii Cloudを使う上での大きなメリットであり、迅速なリリースには欠かせない要素です。このように、Kii CloudとMVPには密接な関係があります(MVPという概念を前提としてKii Cloudは開発されたため、ある意味当然とも言えます⁠⁠。

では、今回のチャットアプリケーション開発はMVPの観点で見るとどうだったのでしょうか? 機能とUIの面に分けて振り返ってみましょう。

機能のMVP

今回連載したチャットアプリケーションでは、以下の機能を持っています。

  • ユーザのサインイン/サインアップ(Facebookアカウントでのサインアップ含む)
  • チャット友達の追加
  • チャットルームの作成
  • チャットメッセージの送受信(スタンプ機能含む)

この状態は、チャットアプリケーションとしては必要十分かつ簡素な機能を持っている(⁠⁠アイデアのシンプルな実装と迅速なリリース⁠⁠)といえるでしょう。スタンプ機能については、Kii Cloudの持つデータ分析機能(Flex Analytics)によりスタンプの利用状況を取得しています。この情報を元にスタンプ機能改善のアイデアを検討(⁠⁠アプリ内データの分析と分析に基づく改善⁠⁠)できます。

なお今回はスタンプ機能についてのみデータ分析の対象としましたが、年齢・性別などのユーザ属性をサインアップ時に入力してもらい、これらを解析対象とすることも考えられます(Activeユーザの年齢層など⁠⁠。ただし、この場合は個人情報の使用と目的をユーザに許諾してもらうプロセスが必要になるでしょう。

ユーザインターフェースのMVP

今回の連載では大きく取り扱いませんでしたが、より良いユーザインターフェースの提供がアプリケーションの成功に寄与することは疑いのない事実です。現状のチャットアプリケーションはとてもシンプルなユーザインターフェースを提供しています(⁠⁠アイデアのシンプルな実装と迅速なリリース⁠⁠)が、さらにアプリケーションを使いやすく、そして楽しくするために改善を続けていく必要(⁠⁠アプリ内データの分析と分析に基づく改善⁠⁠)があります。

ユーザからのフィードバックを得ながらユーザインターフェースを改善するために有用な機能が『A/Bテスト』です。A/Bテストは、A案/B案の2つの案を実装し、その2つを一定の確率(たとえば、A案:30%、B案:70%)でユーザに適用する機能です。ユーザによって見えるUIを変え、その状態での使用状況を分析することで、A案/B案のどちらを採用するかの判断材料を開発者に与えます。現在、Kii CloudではA/Bテスト機能を開発中であり、近日公開予定です。

その他のアプリケーション例

MVPを考える上で、⁠自分のアイデアを最も簡単に実装するために、Kii Cloudのどの機能を使えばよいか』という観点が重要になります。2つの代表的なアプリケーションでの機能使用例を以下に示します。

位置情報を扱うアプリケーション

現実世界の位置情報とリンクした機能は、ソーシャルネットワークやゲームと相性が良く、多くのアプリケーションで使われています。チャットアプリケーションであれば、位置情報を元に近くのユーザをチャット対象に検索する機能などが考えられます。

この手のアプリケーションは、何はともあれ『対象となる物・人の位置情報』を保存しなくては始まりません。Kii Cloudは位置情報管理に特化した機能を提供しているため、まずはこの機能を用いてMVP実装を完成させると良いでしょう。

位置情報管理機能
http://documentation.kii.com/ja/guides/android/managing-geo/

ゲームアプリケーション

ゲームはスマートフォンアプリの中で最もマネタイズに成功しているジャンルと言えます。ゲーム内で使用するアイテム等に課金する行為は今では決して珍しいことではありません。そして最近の人気のあるゲームは、少なからずソーシャルな要素を含んでいる傾向にあります。たとえば、友達と協力してクエストをクリアしたり、プレゼントをあげたり、ランキングで競ったりといった具合です。実はMBaaSはこういったゲームアプリととても相性が良いです。

ゲームに必要な情報のうち、⁠ネットワーク経由で取得しても(=多少の遅延があっても)問題ないデータ』がKii Cloudに保存する主な対象となります。チャットアプリケーションでも使用したオブジェクト機能を用いて、ゲームデータを表現すると良いでしょう。

なお、ゲームアプリケーションに特化した機能が現在開発中です。ゲームアプリケーションのバックエンドとしても、更に使い勝手を良くしていく予定です。

その他のアプリケーションについても、下記のドキュメントを確認して、MVP実装に必要な機能を考えてみてください。

まとめ

全12回の連載にお付き合い頂きありがとうございます。Kii Cloudを利用したアプリケーション開発はいかがだったでしょうか? サーバ側の実装をほぼ不要とし、クライアント側の開発に注力できることのメリットが少しでも伝わったならば幸いです。アプリケーション開発に興味が出てきた方は今すぐ開発者ポータルに飛び、開発をスタートしましょう!

開発者ポータル
https://developer.kii.com/

最後となりますが、下記のページにKii Cloudの情報が日々アップデートされているため、ぜひご覧いただければと思います。

コミュニティ
http://community-jp.kii.com/
Kii Cloudホームページ
http://jp-cloud.kii.com/
ブログ
http://jp-blog.kii.com/

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