OSSデータベース取り取り時報

第56回 MySQLの高可用性構成案,PostgreSQLのかなり気の早い新バージョン情報

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この連載では,OSSコンソーシアム データベース部会のメンバーが,さまざまなオープンソースデータベースの毎月の出来事をお伝えしています。

[MySQL]2020年3月の主な出来事

2020年3月の製品リリースはありませんでした。新型コロナウイルスなどの影響により,開催予定だったイベントの代替としてオンラインセミナーなどが計画されています。MySQLコミュニティのMySQL Casual Talksも3月25日に初のオンラインセミナーを開催しています。

2020年版のMySQLの高可用性構成案

MySQLには従来からいくつかの高可用性構成が選択可能でしたが,ここで改めて方式を整理しておきたいと思います。各構成に共通するのは,オープンソース,共有ディスクを必要としないシェアード・ナッシング型,サード・パーティー製のツールなどを必要としない点です。

MySQL InnoDB ReplicaSet MySQL InnoDB Cluster MySQL NDB Cluster
データ複製技術 レプリケーション レプリケーション ストレージエンジン
ストレージエンジン InnoDB InnoDB NDB Cluster
同期・非同期 非同期 ログ:同期
データ:非同期
完全同期
アプリからの接続フェイルオーバー
DBの自動フェイルオーバー ×
クラスタモード シングルプライマリー シングルプライマリー or マルチプライマリー マルチマスター

連載第55回でご紹介したMySQL InnoDB ReplicaSetは,従来型のレプリケーションの運用管理の効率を向上させることに主眼をおいて開発されているパッケージです。データの複製は非同期レプリケーションとなり,データベースの自動フェイルオーバー機能もないため,高可用性構成しては物足りない面もあります。

MySQL InnoDB Clusterで利用されているグループ・レプリケーションはコミットされたトランザクションが他のノードに複製されることが保証できるため,高可用性を求める場合にはより適切な選択肢となります。参照時のノード間のデータ整合性は設定により変更できます。ただし,グループ・レプリケーションの要件にはGTID(Global Transaction IDentifier)や行ベースのバイナリログが含まれているほか,制約事項のひとつとしては利用可能なストレージエンジンがInnoDBのみとなっています。これ以外の利用機能や要件がある場合には,準同期レプリケーションを利用し,接続フェイルオーバーなどは適宜設定する必要があります。

MySQL NDB Clusterはよりミッションクリティカル,かつ大量トランザクションを処理するシステム向けに最適化されています。構成内に単一障害点はなく,ノードを追加することでデータ容量と処理性能の向上を図れるアーキテクチャとなっています。もともとはKVS(キー・バリュー型のデータストア)として開発が始まったため,トランザクション対応のKVSとして利用することもできる製品となっています。

[PostgreSQL]2020年3月の主な出来事

3月はPostgreSQLもバージョンアップ等のリリースはありませんでした。COVID-19(新型コロナウイルス)の影響はPostgreSQL関連でも出ています。世間は重苦しいニュースであふれていますので,気分を変えるために,少し先の話題として次期メジャーバージョンのPostgreSQL 13について取り上げてみます。

COVID-19(新型コロナウイルス)の影響など

技術認定資格 OSS-DB Silver/Goldの有意性の期限の延長
PostgreSQLの技術認定資格であるOSS-DB Silver/Goldは,認定日から5年間の有意性の期限があります。COVID-19(新型コロナウイルス感染症)が拡大している状況を受け,有意性の期限が2020年3月1日~2020年4月30日の場合,2020年5月1日に延長(更新)されます。詳しくはLPI-JapanのWebサイトをご参照ください。
世界各地のPostgreSQL関連イベントが中止に
世界各地で開催予定だったPostgreSQL関連のイベントが相次いで中止になっています。3月のNordic PGDay 2020(フィンランド⁠⁠,pgDay Paris 2020(フランス)が開催中止,PGDay Ukraine 2020(ウクライナ)は延期。4月以降も,PGCONF Nepal 2020(ネパール⁠⁠,PGConf.DE 2020(ドイツ)が中止となっています。中止が発表になっていないイベントについても開催は不透明だろうと推察されます。
5月末には,いわばPostgreSQLの世界大会とも呼べるPGCon 2020がカナダのオタワで予定されていましたが,オンライン会議に変更になりました。当初は通常開催ができるかどうか4月1日まで待ち,その時点の状況で判断される予定でしたが,状況が改善する見通しが無いために,早めの決定となったようです。

PostgreSQL 12.1から12.2への変更点の詳細な日本語情報

前号でリリースをお知らせしたPostgreSQL 12.2ですが,SRA OSS Tech Blogに,12.1からの詳細な変更点情報が日本語で掲載されています。変更点は全部で75項目もあるので,影響有無を確認するにはとてもありがたい情報です。

次期バージョンPostgreSQL 13情報

バージョン11と12は10月にリリースされましたので,次期メジャーバージョンのPostgreSQL 13もおそらく秋頃にリリースされるのではないかと思われます。公式ロードマップでは,暫定スケジュールとして2020年の第3四半期にリリース予定となっています。ここでは,@nuko_yokohama さんが3月に公開されたブログを紹介します。

なお,ベータ版よりも前の開発途中の段階に基づいた確認情報なので,ベータ版の段階,そして正式リリースの段階では変わる可能性は,当然ですが大きくあります。

「PostgreSQL 13がやってくる(1) 設定パラメータの差分(2020-03-14)」
設定パラメータの変更点から見えてくるのは,バックトレースの出力などの新機能もありますが,安定稼働に貢献しそうな改善点がいくつも目に付きます。PostgreSQLは新機能追加もありますが,さらに安心して使えるようにすることにも重点が置かれているように感じます。
「PostgreSQL 13がやってくる!(2) システムカタログの差分を調べてみる」
ANALYSEやその他の状況を把握しやすくするものや,パラレルクエリやパーティショニングなど大規模DBに貢献しそうな追加や変更点が入っています。既存機能の完成度がさらに高くなって,こちらもより安心して使える方向に向かっている様に感じます。

2020年4月以降開催予定のセミナーやイベント,ユーザ会の活動

本稿は3月23日時点の公開情報に基づいて記載をしていますが,セミナーやイベント等の開催が中止になるケースが増えています。ここに掲載した下記のイベントも予定が変更になる可能性がありますので,各セミナーやイベントのWebサイトなどにご注意ください。

オープンソースカンファレンス 2020浜名湖/名古屋/北海道

日程 浜名湖 2020年4月11日(土)10:00-18:00(展示は17:00まで)
名古屋 2020年5月16日(土)10:00-18:00(展示は16:00まで)
北海道 2020年6月27日(土)10:00-18:00(展示は16:00まで)
場所 浜名湖 浜松市市民協働センター 2F ギャラリー
名古屋 名古屋市中小企業振興会館(OSC受付:3F 第2ファッション展示場)
北海道 ACU札幌(アスティ45/ACU-A,OSC受付16F)
内容 オープンソースカンファレンスは,オープンソースの「今」を伝える総合イベントとして,東京だけでなく,北は北海道,南は沖縄まで全国各地で開催しています。セミナープログラムはおおむね開催の1ヶ月前には確定し公開されます。OSSデータベース関連のセミナーについては公開されるプログラムをご参照ください。4月の浜名湖(浜松)には,日本PostgreSQLユーザ会などのブース出展が予定されています。また,データベース部会ではありませんがOSSコンソーシアムも出展します。5月の名古屋では,企画セミナー「OSSデータベース入門セット ~二大OSS-DB & アプリ開発⁠⁠超⁠⁠入門」を予定しています。これは1月に大阪で行ったセミナー(本連載第54回)とほぼ同じ内容です。
主催 オープンソースカンファレンス実行委員会

【Webセミナー】MySQL 8.0入門セミナー ~チューニング基礎編,SQLチューニング編~

日程 2020年4月15日(水)14:00-17:00
内容 2020年1月に東京で開催したMySQL 8.0のパフォーマンスチューニングセミナーを,Zoomを利用したWebセミナーとして開催します。今回のセミナーでは,MySQLをチューニングする時に役立つさまざまな機能やチューニングの基礎知識を解説します。また,オプティマイザの仕組みや,実行計画を確認する際のポイント,実行計画を調整する方法など,SQLチューニングの基礎について解説します。
主催 日本オラクル株式会社 MySQL Global Business Unit

PostgreSQL/PowerGresハンズオンセミナー

日程 2020年4月15日(水)15:00-17:00
2020年5月14日(木)15:00-17:00
2020年6月17日(水)15:00-17:00
場所 SRAグループ池袋オフィスビル
内容 PowerGres の全体像を理解しつつ,実際に機能を体験できるコースで,ノートPCを持参すればインストール・設定までを行うことができます。
主催 SRA OSS Inc.

著者プロフィール

梶山隆輔

MySQL Sales Consulting Senior Manager。

日本オラクル(株)において,MySQLのお客様環境への導入支援や製品の技術解説を担当するセールスコンサルタントチームのアジア太平洋地域リーダー。多国籍なMySQL部門にて,オーストラリア,インド,台湾などに在籍するチームメンバーを束ね,アジア太平洋地域の25以上の国や地域でのMySQL普及やビジネスの拡大をミッションとする。


溝口則行(みぞぐちのりゆき)

TIS株式会社

OSSコンソーシアム副会長,オープンソースビジネス推進協議会(OBCI)副理事長。その他,PostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアム(PGECons),日本OSS推進フォーラムなどにも少しずつ関与。勤務先メンバに,PostgreSQL,Zabbix,Ansibleやコンテナ技術などに強みのある癖のある芸人を抱え,タレントマネージャ業が中心になりつつある。