OSSデータベース取り取り時報

第61回 いよいよ連載6年目,MySQL Database Service本格展開開始,PostgreSQLのリリース情報とイベント情報

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この連載では,OSSコンソーシアム データベース部会のメンバーが,さまざまなオープンソースデータベースの毎月の出来事をお伝えしています。今回から6年目に突入します。引き続きよろしくお願いいたします。

「多様性時代のDB選択」in オープンソースカンファレンス2020 Online/Kyoto

8月28日~29日の2日間に,オープンソースカンファレンス(OSC⁠⁠ Online/Kyotoが開催されました。オープンソースビジネス推進協議会(OBCI⁠⁠,日本オラクル・MySQL GBU,SRA OSS, Incの協賛出展に加え,OSSコンソーシアムのデータベース部会と分散コンピューティング部会,東芝デジタルソリューションズ,ノーチラス・テクロノジーズが協力する形で,OSSデータベース特集トラックを実現しました。

1 多様性時代のDB選択/オープニング
⁠司会]溝口 則行(TIS)
『オープンソースデータベースGridDB ~ なぜデータベースを開発したのか?その理由とGridDBの概要紹介~』栗田 雅芳 ⁠東芝デジタルソリューションズ)
『大規模OLTP Project Tsurugi(劒)の概要紹介』神林 飛志 ⁠ノーチラス・テクノロジーズ)
2 PostgreSQL 13 新機能解説
高塚 遥(SRA OSS, Inc. 日本支社)
3 Always Freeを使って無料でMySQLのレプリケーション検証環境を構築しよう!
山﨑 由章(MySQL Community Team / Oracle Corporation)
4 多様性時代のDB選択/激論!DBMS選択のニューノーマルは?(パネルディスカッション)
《パネリスト》 梶山 隆輔 ⁠Oracle Corporation MySQL GBU⁠⁠ 栗田 雅芳 ⁠東芝デジタルソリューションズ⁠⁠ 才所 秀明 ⁠日立ソリューションズ ⁠⁠ 高塚 遥 ⁠SRA OSS, Inc. 日本支社)《モデレータ》 溝口 則行 ⁠OBCI/TIS)

この記事は開催前に執筆しており,実施状況をお伝えすることができませんので,次回にご報告したいと思いますが,簡単なメモと公開される発表スライド資料・ビデオへのリンクを,OSSコンソーシアムのWebサイトにも掲載しておきます。ビデオの公開は一部の内容になる可能性があります。

[MySQL]2020年8月の主な出来事

2020年8月はMySQLの製品リリースはありませんでした。8月27日にはMySQL 8.0へのバージョンをテーマにしたセミナーとして,KDDIでのMySQL 8.0導入事例紹介があり,MySQLサポートチームの奥野氏などが登壇した,オンラインのイベントMySQL Day Virtual Event in Japanが開催されています。

7月にリリースされたMySQL 8.0.21に関するMySQL開発チームやコミュニティチームのブログのリストはMySQLチームのブログにてご紹介しています。

MySQL Database Service本格展開開始

これまでMySQLを開発するオラクルのクラウドサービスOracle Cloud Infrastructureでは,過去に一度MySQLをベースとしたクラウドデータベースとしてMySQL Cloud Serviceがありましたが,インフラの刷新にあわせていったんプロジェクトを停止していました。

2020年9月より改めて⁠MySQL Database Service⁠として本格的な展開を開始しました。MySQLチームのブログではサービスとしての特徴や他サービスと比較してのコストの優位性などを紹介しています。

サービスの内容や今後のロードマップについては本連載の次回以降にご紹介予定です。

MySQL Shell 8.0.21の新機能 -Dump and Load Utility

MySQL Shell 8.0.21では論理バックアップとそのダンプのロードを並列化して性能向上を図ったユーティリティが追加されています。MySQLの新しいインスタンスを構築する場合や,オンプレミス環境のMySQLからMySQL Database Serviceに移行する場合にも利用できるユーティリティです。

  • util.dumpInstance():ユーザーやメタデータを含むMySQLサーバーインスタンス全体をダンプ
  • util.dumpSchemas():指定したスキーマをダンプ
  • util.loadDump():ダンプされたデータをMySQLサーバーにロード

MySQLサーバー開発チームのブログでは,デモやベンチマークの情報を掲載しています。

特にベンチマークではMySQLの論理バックアップツールとして古くから利用されているmysqldumpやMySQL5.7.8から登場したものの地味な感が否めないmysqlpumpとの性能比較や,対象のテーブルをパーティショニングしておくことによるデータロード性能の向上を掲載しています。

図1 各論理バックアップツールでダンプしたデータのロード性能比較

各論理バックアップツールでダンプしたデータのロード性能比較

出典:MySQLサーバー開発チームのブログ

9月以降はMySQL Database Service関連のイベントを多数開催予定

MySQLの開発チームが開発から運用,サポートを行うクラウドデータベースMySQL Database Serviceに関してのセミナーが9月以降に予定されています。

日付 概要
9月18日(金) MySQL Database Serviceを導入する理由と技術概要

また日本時間では深夜の開催になりますが,英語でのセミナーも複数予定されています。

日時(米国太平洋標準時) 概要
9月9日(水) Introduction to MySQL Database Service
9月10日(木) Top Reasons to Use the MySQL Database Service
9月14日(月) Migrating from on-premises to MySQL Database Service
9月16日(水) Running Wordpress with MySQL Database Service

日本語版のウェブセミナーの一覧はこちら英語版の一覧はこちらです。イベント個別の申し込みサイトは順次開設予定ですので,ツイッターの@mysql_jpからの情報発信などをご確認ください。

[PostgreSQL]2020年8月の主な出来事

今秋に正式リリースされる予定のバージョン13が着々とベータリリースを重ねつつあります。並行して,現在のサポート対象のPostgreSQL本体や,関連ツールの改善も続いています。また,秋は様々なイベントが開催される時期です。今年はコロナ禍でオンライン開催が中心ですが,通常開催の可能性を模索しているイベントもあります。

PostgreSQL 12.4,11.9,10.14,9.6.19,9.5.23 リリース

8月13日に,現在サポート対象のすべてのメジャーバージョンについてマイナーバージョンアップがありました本家Postgresql.orgの情報日本PostgreSQLユーザ会の情報⁠。今回はバグ修正リリースで,次の2つのセキュリティ修正が含まれています。

CVE-2020-14349: Uncontrolled search path element in logical replication.
search_path のサニタイズに関する追加の修正です。バージョン10,11,12系が対象です。
CVE-2020-14350: Uncontrolled search path element in CREATE EXTENSION.
contribの拡張のインストールスクリプトに攻撃の余地があった点の修正です。すべてのバージョン系列(9.5,9.6,10,11,12)が対象です。

上記を含むすべての修正点について,SRA OSS Inc.から日本語による解説が公開されています。12.3から12.4への変更点の他,それぞれのメジャーバージョン別に整理されています

次期メジャーバージョン PostgreSQL 13 ベータ3 リリース

同じく8月13日,次期メジャーバージョン13の3回目のベータ版がリリースされました。バージョン13の正式版は今秋にリリース予定になっています。このベータ3では,新しい構成パラメーター hash_mem_multiplier が導入されています。これにより,ハッシュアグリゲートに割り当てるメモリ量を調整でき,ディスクストレージを使用するか,メモリに留まるかを詳細に制御できます。また,設定パラメータ hashagg_avoid_disk_plan が削除されました。

ベータ3へのアップグレード方法ですが,ベータ2やベータ1からアップグレードする場合も,メジャーバージョン間でのアップグレードの方法(pg_upgradeまたはpg_dump/pg_restoreなど)を使用する必要があります。

その他のベータ3の詳細についてはオープンアイテムページに記載されています。

PostgreSQL 9.5のEOLのお知らせ

PostgreSQL 9.5の修正版の配信は2021年2月11日が最終になります。本番環境でPostgreSQL 9.5が稼働している場合は,サポートされている新しいバージョンのPostgreSQLにアップグレードする計画を立てることをお勧めします。

バージョンごとの最終リリーススケジュールはこちらで確認できます。

Pgpool-II 4.1.3,4.0.10,3.7.15,3.6.22,3.5.26がリリース

8月20日,PostgreSQLで高可用性や負荷分散を実現するミドルウェアである Pgpool-IIのバージョンアップがありました

最新バージョンの4.1.3では,ドキュメントおよびサンプルスクリプト/ファイルに関する複数の変更点と,複数の不具合修正が含まれています。一部ですが次のような修正がなされています。

  • pgpoolの起動時にpidファイルが存在する場合
  • ストリーミングレプリケーションモードでプライマリノードが0以外の場合
  • pgpool_setupの問題の修正
  • RPMパッケージのPCPコマンドのUNIX_DOMAIN_PATHの変更
  • クエリキャッシュの不具合の修正
  • コーナーケースで発生するPgpool-IIのハングアップの修正

ほか。

秋のイベントシーズンに大物セミナーが続々開催

後述のイベント情報にも載せましたが,秋はPostgreSQL関連の大物イベントがいくつか予定されていますので,少し詳しい情報を記しておきます。

ギリギリ間に合う,PostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアム活動成果発表会

9月3日に,PostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアム(PGECons)2019年度活動成果発表会がオンラインで開催され各部会/ワーキングループの成果が報告されます。

新技術検証ワーキンググループ(WG1)は,PostgreSQL 12の性能測定,PostgreSQL 12の新機能であるPluggable Storage機構の調査および実験実装中の2つのアクセスメソッドの検証,PostgreSQL 9.6から導入されたパラレルクエリをメニーコア環境で動作させたときの挙動および性能に関する検証の結果の報告です。

移行ワーキンググループ(WG2)はPGEConsが発足してから継続して活動しているWGですが,PostgreSQL 11でストアドプロシージャが実装されたことによる移行観点での変更点の調査,パラレルクエリを中心としたパラレル処理における移行の考え方の検討,PostgreSQLのメジャーバージョンアップに着目した非互換などの影響について調査・検証について報告があります。

課題検討ワーキンググループ(WG3)では,機械学習によるPostgreSQLパラメータチューニングの自動化に挑戦,性能トラブル事例と対処法の更なる拡充,パブリッククラウドにおけるマネージド型PostgreSQLの机上調査と性能検証の報告をします。

参加いただくには事前の申込が必要で,直前まで可能です。手順が2段階になっている点に注意が必要です。まず最初にconnpassでの申込みになるのでconnpassのアカウントが必要になります。次に,connpassから申し込んだ後に表示されるURLからZoomウェビナーへの登録も必要になります。

EDB Postgres Vision Tokyo 2020

PostgreSQLの主要コントリビューターの1社であるEDB(EnterpriseDB)のイベント,EDB Postgres Vision Tokyo 2020が10月5日(月⁠⁠~10月11日(日)の一週間,オンラインで開催されます。様々な事例や日本国内での取り組みが紹介されるようです。

PostgreSQL Conference Japan 2020 の感染症対策と今後の開催形態変更の可能性について

前回もお知らせしていた 日本PostgreSQLユーザ会(JPUG) PostgreSQL Conference Japan 2020ですが,11月13日に通常の会場開催が予定されています。しかし,楽観視はできませんので,感染症対策の方針と,オンライン化など開催方法の変更の可能性についてもアナウンスされています。なんとか,コロナ禍が落ち着いた状況での予定通りの通常開催を期待していますが不透明です。参加を検討されている方は,JPUGからの情報にご注意ください。

著者プロフィール

梶山隆輔

MySQL Sales Consulting Senior Manager。

日本オラクル(株)において,MySQLのお客様環境への導入支援や製品の技術解説を担当するセールスコンサルタントチームのアジア太平洋地域リーダー。多国籍なMySQL部門にて,オーストラリア,インド,台湾などに在籍するチームメンバーを束ね,アジア太平洋地域の25以上の国や地域でのMySQL普及やビジネスの拡大をミッションとする。


溝口則行(みぞぐちのりゆき)

TIS株式会社

OSSコンソーシアム副会長,オープンソースビジネス推進協議会(OBCI)副理事長。その他,PostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアム(PGECons),日本OSS推進フォーラムなどにも少しずつ関与。勤務先メンバに,PostgreSQL,Zabbix,Ansibleやコンテナ技術などに強みのある癖のある芸人を抱え,タレントマネージャ業が中心になりつつある。