OSSデータベース取り取り時報

第78回 MySQL 8.0.28リリース, PGEConsの「データの時代—ビジネスへ貢献するデータ管理基盤とは」

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[PostgreSQL]2022年1月の主な出来事

1月はPostgreSQLのバージョンアップは無く,主要な関連ツールでも目立ったリリースはありませんでした。そこで今回は,PostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアム(PGECons)主催セミナーのお知らせと,EDB社のセミナーの内容がブログ記事として掲載されていますので紹介します。

2月18日に「データの時代 ―ビジネスへ貢献するデータ管理基盤とは」を開催

例年,PostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアム(PGECons)では,春~夏に研究・検証成果を報告する年次の大・成果発表会を行い,冬にテーマ設定されたセミナーイベントを開催しています。今年度の冬のイベントは,データ管理基盤に着目したものを企画しましたconnpassの申し込みページ⁠。

企業が提供する価値の源泉として「データ」が重要であるという認識が一般にも普及してきました。今後,データ管理基盤の重要性は更に高まり,データ活用のストーリなど,データ取得,分析,活用,運用するためのトータルデザインも必要になります。そこで,⁠データ」の重要性をユーザ企業やシステムインテグレータをはじめとするIT企業に携わる方々に再認識いただくための特別講演と,実際にPostrgeSQLをデータ基盤としてビジネスで活用されている企業へのインタビューによる事例の共有を行ます。

特別講演は東京大学特別教授で国立情報学研究所(NII)所長である喜連川優氏,事例インタビューはPostrgeSQLをデータ基盤としてビジネスで活用されている株式会社EDUCOM様です。

開催日時 2022年2月18日(金)14:00~16:30
配信 Zoomウェビナー(事前登録制)
定員 500名
対象者 PostgreSQLを活用するエンドユーザ,PostgreSQL関連のサービスを提供するシステムインテグレータなど
申込期間 2022年1月24日~2月18日
プログラム 14:00-14:05 開会にあたり
14:05-14:10 PGECons代表の挨拶
14:10-15:10 特別講演 喜連川 優氏
15:10-15:20 休憩
15:20-16:20 エデュコム様 PostgreSQL活用事例インタビュー
16:20-16:25 閉会にあたり

Postgres Build 2021セッションのハイライト

EDB社のブログ記事には,PostgreSQLに関する興味深いものや,先進的な話題が掲載されます。今回紹介するサイトは英語版ですが,日本語サイトもあります。1月になって,このEDBブログに昨年開催されたPostgres Build 2021のハイライトが掲載されましたので,いくつかピックアップして紹介します。

データベースのためのクラウドサービスの考慮事項

チューリング賞を受賞したマイケル・ストーンブレーカー博士による基調講演の要約です。冒頭で,大昔から昨今までのコンピューティング環境の変遷を振り返っています。かつてホストコンピュータでアプリケーションと一緒に稼働していたものが,3層モデルの登場によってアプリケーションとは分離され,現在はクラウドに移行しつつあります。そのクラウド環境でデータベースサーバを稼働させる際に,コスト,柔軟性,セキュリティの3点を考慮事項として示していますが,コストについての博士のコメントが興味深いものでした。⁠コストが最も低いプロバイダーが優勢になる『底辺での競争』に巻き込まれないようにする必要がある」と言っています。クラウドサービスを選択する際に価格は重要な要素ですが,たしかに,価格の安さだけに気を取られすぎない様に注意が必要でしょう。

なお,この記事の中で,昨年にEDBが発表したEDB PostgresのマネージドサービスであるBigAnimalについて触れられています。現在,BigAnimalはMicrosoft Azure上でのみ提供されていますが,今後はAzure以外の他の選択肢が増えると言っています。この部分はEDBメンバの表明と思いますので,期待して良いでしょう。

PostgreSQLクラウド戦略

EDB社CTOのマーク・リンスター氏の講演要約です。企業ITにクラウドサービスを利用するのは,もはや普通のことになりましたが,⁠なぜ企業はクラウドに移行しているのか?」はちゃんと理解しておく必要があると言っています。まずはスピードと敏捷性ですが,その他にもいくつかの主要な理由が挙げられており,クラウド利用が理にかなっていることを確認しています。そして,PostgreSQLをはじめとするOSSが,データベースをクラウドで稼働させるのに一歩先んじている状況を指摘しています。

ただし,クラウドでデータベースを稼働させるにはいくつか選択肢があります。IaaSの仮想マシン,Kubernetesとコンテナ環境,DBaaSを使うという3つの選択肢は,今ではよく知られたパターンでしょう。講演ではこれらの比較検討がされたようですが,結論としてはDBaaSが優れているという判断の様です。DBaaSはクラウドソリューションの主流の考え方に近く,セルフサービス構造やオンデマンドや柔軟性などの点が強化されています。

将来のPostgreSQLの課題

EDB副社長でありPostgreSQLのエバンジェリストであるブルース・モンジン氏の講演要約です。モンジン氏は何度も来日されて講演されたことがありましたので,ご存知の方も多いでしょう。

この講演ではPostgreSQLに投資する企業が注意すべきハードルについて述べています。プロジェクトの課題,競争上の課題,技術的な課題についてです。

プロジェクトの課題は,多くのOSSプロジェクトに共通の課題です。最近,OSSプロジェクトのリーダーが彼らの製品を放棄する様な出来事がありました。このような場合,企業は将来の持続可能な道としてのOSSプロジェクトに注意する必要があるでしょう。その他にもPostgreSQL採用企業が気をつけるべき課題があります。特許攻撃,ドメインと商標に対するアイデンティティの課題,クラウドベンダーの餓死(突然のサービス停止を意味すると思われます⁠⁠。

競争上の課題については割愛します。前述のプロジェクト課題は,OSSプロジェクトに共通する課題でしたが,最後の技術的課題の多くは,PostgreSQLというOSSプロダクトに固有の課題です。モンジン氏はPostgreSQLの重要な技術課題として次の5つを挙げました。Write Amplication(SSD等で実際に書き込んだデータの量よりもフラッシュチップに対する書込量の方が多くなってしまう現象⁠⁠,クラスタファイル暗号化/TDE,水平スケーリング,廃止されたツールチェーン,ドラスティックな技術の変化。

ここでは各講演の一部分のみしか紹介できていませんので,関心を持たれたものがあった場合はオリジナルをご参照ください。また,Postgres Build 2021の講演はオンデマンド配信もされているようです。

2022年2月以降開催予定のセミナーやイベント,ユーザ会の活動

「データの時代」ビジネスへ貢献するデータ管理基盤とは

日程 2022年2月18日(金)14:00~16:30
場所 オンライン開催(Zoomウェビナー)
内容 本編でも紹介しました,PostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアム(PGECons)による企画セミナーです。東京大学特別教授で国立情報学研究所(NII)所長である喜連川優氏の特別講演,PostrgeSQLをデータ基盤としてビジネスで活用されている株式会社EDUCOM様の事例インタビューです。
主催 PostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアム

PostgreSQL テクニカルウェビナー ~あなたのPostgreSQLの旅が楽しくなる連続講演~

日程 2022年2月2日 ⁠水⁠⁠ 12:05~12:45
2022年2月16日 ⁠水⁠⁠ 12:05~12:45
場所 オンライン開催(Zoomウェビナー)
内容 “SELECT * FROM customer WHERE id = 100⁠⁠ は PostgreSQL の中でどのように処理され,どのようにデータを取得し,クライアントに返されるのでしょうか?PostgreSQL の基本的なアーキテクチャ,仕組みや使わている技術を紹介し, それまでブラックボックスだった PostgreSQL をより明確に理解していきます。
2月2日(水)PostgreSQL入門 ~アーキテクチャ編~では,PostgreSQLのアーキテクチャを中心に解説します。PostgreSQLサーバを構成するプロセス郡や,共有バッファ,テーブル・インデックス等の解説をしながら関連する設定パラメータについても紹介します。
2月16日(水)PostgreSQL入門 ~クエリ編~では,クエリがPostgreSQLサーバに届いてから結果がクライアントに返るまで,PostgreSQLはどのようにクエリを処理し,考え,データを取得するのかを解説します。
主催 エンタープライズDB株式会社

MySQL 8.0入門セミナー MySQL Workbench編

日程 2022年3月4日(金)15:00-16:30
場所 オンライン(Zoom)
内容 MySQL Workbenchはオラクルが開発しているMySQLの公式GUIツールです。MySQL WorkbenchにはMySQLの運用管理に役立つ機能のほか,SQL開発に役立つ機能,DB設計に役立つ機能,データ移行に役立つ機能も兼ね備えています。このセッションでは,MySQL Workbenchの機能や利点をデモを通してご紹介いたします。今回のウェビナーでご紹介する主なMySQL Workbenchの各機能
  • ER図を用いたデータベースの設計
  • SQL文の作成や最適化
  • 性能監視と分析
  • データマイグレーション
⁠2/4開催予定から日程変更)
主催 日本オラクル株式会社 MySQL Global Business Unit

オープンソースカンファレンス 2022 Online Spring

日程 2022年3月11日(金⁠⁠・12日(土⁠⁠ 10:00~18:00
場所 オンライン開催(ZoomおよびYouTube Live)
内容 オープンソースカンファレンスは,オープンソースの「今」を伝える総合イベントとして,東京だけでなく,北は北海道,南は沖縄まで全国各地で開催しています。例年は東京で開催されていたこの回もオンライン開催となりました。セミナープログラムは近日公開される予定です。OSSコンソーシアムでは,OSSとDX(デジタルトランスフォーメーション)をテーマにしたセミナーを企画中で,データベース部会も参加します。次回で詳しくお伝えいたします。その他のOSSデータベース関連のセミナーについては公開されるプログラムをご参照ください。
主催 オープンソースカンファレンス実行委員会

著者プロフィール

梶山隆輔

MySQL Sales Consulting Senior Manager。

日本オラクル(株)において,MySQLのお客様環境への導入支援や製品の技術解説を担当するセールスコンサルタントチームのアジア太平洋地域リーダー。多国籍なMySQL部門にて,オーストラリア,インド,台湾などに在籍するチームメンバーを束ね,アジア太平洋地域の25以上の国や地域でのMySQL普及やビジネスの拡大をミッションとする。


溝口則行(みぞぐちのりゆき)

TIS株式会社

OSSコンソーシアム副会長兼データベース部会リーダ。他に,PostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアム(PGECons),日本OSS推進フォーラム(JOPF)にも参画。また,OSS推進活動の他に,日本のIT業界がDX(デジタルトランスフォーメーション)の波の藻屑とならないように,DX推進と変革に微力ながら勤しむ。