インターネット上で何らかのサービスを展開するとき,
アプリケーション開発で大きな鍵を握るのは“品質”
- ――リクルートライフスタイルの中における,
お2人が所属するチームの役割を教えてください。 小川氏:リクルートライフスタイルでは,
宿・ ホテルを探して予約できる 「じゃらん」 や, クーポンももらえるグルメ情報サービスである 「ホットペッパー グルメ」 など, 日常的な消費行動に対して価値を提供することがビジネスドメインとなっています。その中で私たちのチームは, 新しい軸となる事業やサービスを開発する役割を担っています。 特徴的な部分としては,
企画と一緒になって開発を進めていることがあります。企画は別の部署が担当していますが, 同じスペースの中で2つの部署が一緒になって仕事をするような進め方もしていますし, それぞれの部署の担当者同士でのコミュニケーションも多いですね。 「僕たちは企画です」 「僕たちはシステムを作っています」 という形ではなく, 「一緒に新規事業を作っています」 というマインドで働いています。 - ――従来のパソコン+ガラケーからスマートデバイスへと,
ユーザが使う端末はここ数年で大きく変化しました。開発者として, こうしたデバイスの違いで強く意識することは何でしょうか。 小川氏:ユーザとの距離感が1つのポイントとして挙げられると思います。スマートデバイスはユーザとの距離感が近い一方,
アプリケーションが落ちる, あるいは表示速度が遅いといった不満があれば, すぐに離れてしまいます。そういった部分にこだわらなければユーザに見放されてしまうため, これまで以上に品質が大切になっていると感じています。 豊島氏:Webサイト上で提供するサービスとアプリケーションとの比較で言えば,
やはりアンインストールの概念があることが大きなポイントではないでしょうか。ユーザにアプリケーションを気に入ってもらえれば近しい関係になりますが, 一度アンインストールされると逆にすごく遠ざかってしまう。そのため, アプリケーションがアンインストールされないように, あらゆる面で気を配っています。
ロジックツリーでアプリケーションの機能を絞り込む
- ――開発したアプリケーションをユーザビリティの観点から検証することもあるのでしょうか。
小川氏:ユーザインタビューやユーザテストは重点的に実施しています。特に新規で開発したアプリケーションについては,
そのアプリケーションに対するアンケートを実施したり, 提供している機能についての意見を聞き, その内容を反映したりしています。実際, アプリケーションの挙動に違和感がある, このボタンを押したときにこの画面に遷移しないのはストレスが溜まるなど, さまざまな意見を集約してアプリケーションを改善することもあります。 豊島氏:ユーザインタビューで一番悲しかったのは,
便利に使ってもらえるだろうと考えて組み込んだ機能が全然理解されなかったケースです。説明すると理解してもらえるのですが, アプリケーションの画面だけではわからなかったんですね。そういったときに, やっぱり機能の説明も必要なんだなと改めて実感しました。 小川氏:アプリケーションに機能を詰め込み過ぎると,
そもそも何のアプリケーションか曖昧になるので, どう引き算するかもすごく大切になります。たとえば何かを予約するアプリケーションに対して, 気になったものをあとで参照できるクリップの機能を充実させると, そのアプリケーションの目的は予約なのか, それともクリップなのかが不明瞭になりかねません。そもそもユーザに何をしてほしいのか, どういった体験を提供したいのかは, 常に意識していることの1つです。 - ――具体的に,
どのように考えて機能を絞り込むのでしょうか。 小川氏:よくロジックツリーで考えています。一番大切なことは何かをまず考え,
それを分解していく。アプリケーションの目的を分解して考えていくことにより, この要素はそぎ落とせる, これは必要だといったことを考えやすくなります。これはアプリケーションに限った話ではありませんが, たくさん盛り込もうとすれば目的が見えづらくなるし, リソースも分散してしまいます。そこで引き算して, 何をすべきか明確にしていくことは重要ではないでしょうか。 たとえば電卓ってすごく良いと思うんです。計算にだけ集中していて,
ユーザが迷いようがない。一般的なアプリケーション開発ではそこまで絞り込めませんが, だからといって電卓に予定表の機能をつけるのはおかしいですよね。ただアプリケーションを開発していると, あれもこれもと機能が増えがちで, おかしいことに気づかない。そのときにアプリケーション全体を俯瞰し, 不要な機能を省くのは大切でしょう。 豊島氏:エンジニアが企画側に対して,
この機能を追加するとアプリケーションとしての整合性がなくなるといった話をすることもあります。エンジニアはアプリケーションの細部まで把握しているところがあって, 企画側が見落としている問題に気づくこともあります。それをエンジニアが指摘し, 「たしかにここは直すべきだよね」 といった会話が生まれることもよくあります。