教えて! 最新技術―テックコミュニティの現場から

最終回 AIのこれまでとこれから

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テックコミュニティの運営側で,その技術分野を常に追いかけているエンジニアの方々にお話をうかがうインタビュー企画。ホストは関満徳が務めます。コロナ禍のさなか対面での取材を避け,リモートで行います。最終回のゲストとしてお迎えしたのは,データサイエンティストとして活躍する大城氏と松村氏です。

大城氏は,大企業から中小企業まで約20社のデータ分析案件にアドバイザーとして参画する傍ら,有志によるデータ分析関連の勉強会や,データサイエンティスト協会の九州支部の設立・運営などの活動を精力的に行っています。松村氏は,IT企業にてデータ分析部署の立ち上げに従事する傍(かたわ)ら,Tokyo.RやMusic×Analytics Meetupの運営などの活動を精力的に行っています。

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大城 信晃(OSHIRO Nobuaki)さん

ヤフー⁠株⁠やLINE Fukuoka⁠株⁠などを経て2018年9月にNOB DATA⁠株⁠を設立。大企業から中小企業まで約20社のデータ分析案件にアドバイザーとして参画。また,有志によるデータ分析関連の勉強会や,データサイエンティスト協会の九州支部の設立・運営も行っている。

Twitter:@doradora09
URL:https://www.facebook.com/nobuaki.oshiro

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松村 優哉(MATSUMURA Yuya)さん

修士(経済学)取得後,現職。学生時代は研究の傍らデータサイエンスの実務にも取り組む。現在はIT企業にてデータ分析部署の立ち上げに関わっているほか,Tokyo.Rの運営,音楽×分析をテーマにしたMusic×Analytics Meetupの運営など,コミュニティ活動にも精力的。

GitHub:ymattu
Twitter:@y__mattu
URL:https://ymattu.github.io/

関:AIArtificial Intelligence人工知能)とは何かについて,お二人の立場から説明いただいてもよいでしょうか。

松村:AIとは,機械学習技術の活用ととらえています。統計解析や深層学習,自然言語処理技術も含みます。世の中一般で言われているAIはもっと広い意味で使われることが多く,特にここ5年ぐらいは,何か自動化しているとAIと呼ぶこともあるようです。私は技術者としてAIに関わったこともあり,AIの中でもどういう技術を使うのか,にスポットを当てることが多いです。

大城:広義ではどれもAIですが,狭義では機械学習ととらえています。お客様の中にはドラえもんをAIと考えている方もいますし,RPARobotic Process AutomationをAIととらえている方もいます。商売上,RPAをAIとして売っている業者もいますね。どういう技術を使っているかでAIを区別するとわかりやすいでしょう。

データサイエンティストという役割が誕生して10年が経ち,ITを導入したい,AIを導入したい,というお客様も増えてきました。しかし本当に解決したい課題は別の場所に潜んでいることが多く,AIという言葉や技術にとらわれずに,ビジネスプロセスの改善を含めた課題解決の文脈で,AIをとらえるようにしています。

AIを成功させるには

関:AIの成功と失敗の境界線はどのようなものがあるのでしょうか。

大城:試行錯誤を前提としないとAI開発はたいてい失敗しますね。機械学習の場合,まず最初にデータの可視化,ビジネスプロセスの分析などを行い,機械学習のための情報を積み上げていく必要があります。この積み上げをしっかりしないとだいたい失敗します。東京のある程度大きい会社であれば,分析チームが立ち上がっているケースもありますが,そのような企業でも,巨大IT企業が行っているAIのまねをするのは,簡単ではありません。

松村:AIは,要件がきちんと積み上がったうえで,適切なところに適切な技術を使うことができれば,ビジネス成果につなげやすいのではと考えています。たとえば,システムに対する異常検知のようなものであれば,現場でもうまく活用できている事例があります。

深層学習系については,正直成果が出しにくいと考えています。仮に深層学習を使うのが適切だという話になったとしても,パラメータの調整が難しかったり,技術的な課題が多いことが原因として挙げられます。

大城:1980年代は,実世界の問題を解く実用的ツールとしてエキスパートシステムが広く商用利用されるようになりました。ただ,成功は限定的でした。専門家の知識は定式化できないことが多く,定式化してみると規則間で矛盾していたりするなど,推論エンジンの能力も低いことが多かったのです。

2010年代になると,深層学習に代表される各種機械学習手法が普及するようになりました。多層ニューラルネットワークの学習の研究や,学習に必要な計算機の能力向上,およびインターネットの発展による学習データの流通により,十分に学習させられるようになったのです。その結果,音声・画像・自然言語を対象とする諸問題に対し,ほかの手法を圧倒する高い性能を示せるようになりました。最近では,音声からテキストに変換する精度が上がってきています。人間の五感でいうと,視覚や聴覚はだいぶAIでもカバーしつつありますが,触覚,味覚,嗅覚についてはまだまだと言えそうです。

レコメンドエンジンやグロースハックは,テーブルデータが成功を左右しますし,お客様や取引先のデータ分析は,大量に集まるビジネスデータの活用が成功を左右します。認識系の画像は,写真から認識させる元データの精度が重要になってきますし,故障検知や信号検知の場合は,IoTInternet of Thingsの出来も成功を左右します。

著者プロフィール

関満徳(せきみつのり)

プロジェクトマネージャー・スクラムマスターとして組織・プロダクトオーナー・チームを支援しながら後進人材の育成に従事。アジャイルやプロダクトマネジメントのコミュニティ活動多数。

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URL:https://fullvirtue.com/