テストリーダへの足がかり,最初の一歩

第2回 テスト計画(後編)

この記事を読むのに必要な時間:およそ 1 分

テストの体制とスケジュール

大塚先輩:
スケジュールにちゃんとテスト設計が入っているのはいいね。テスト計画,テスト実施,テスト報告だけで終わらせる人が多いんだ。
中山君:
ありがとうございます。

大塚先輩:
だけど,その仕事を誰がやるのか決めている?

中山君:
朝ミーティングの時にでも決めようと思っています。

大塚先輩:
朝ミーティング?

中山君:
はい。事前に仕事を割り当てても,結局できないこと多いので無駄だと思っています。
大塚先輩:
事前に決めた方がよいこともあるんだ。たとえば,中山君はリーダの仕事だけだと思っているの?
中山君:
はい,今回のプロジェクトではリーダとして管理作業を中心にやろうと思っています。
大塚先輩:
この体制でそれは難しいんじゃないか? このチームの人員数から中山君にも実作業をやってもらうことになる。
中山君:
つまり兼任ということですか?

大塚先輩:
その通りだ。リーダーとプレイヤー,両方を行うことになる。こうなってくると何をやるか事前に決めておかないと,混乱してしまう。また,先々どんな準備が必要かもわからなくなるよ。

体制とスケジュール

タスクと役割の関係を整理したものをTRM(Task Responsibility Matrix)※1と言います。タスクをメンバの責任や役割に応じて割り当てた表のことです。縦軸にタスク,横軸にメンバをとった二次元マトリクスを作り,両軸の交わるマス目に役割を記入します。

このように役割を明確にすることで,計画の精度を上げていきます。

※1)
TRMではなくRAM(Responsibility Assignment Matrix)と言う場合もあります。

スキル一覧

もし,メンバのスキルがわかっていないのであれば,スキル一覧も作っておきます。このスキル一覧を見ながら役割を割り当てていきます。また,プロジェクトに必要なスキルを持つ人員が不足していることがわかりますので,新たに人員を確保するなど対策をとります。

その他

この他に,コミュニケーション計画(定例会の設定や開発チームとのQ&Aのやり方)を決めたり,リスクと対策を決めておいたりします。

そうそう,プロジェクトキックオフや中途振り返り会なども決めておきます。

大塚先輩:
まずは目につくところを挙げてみたがどうだい?

中山君:
はい,正直簡単に考えていました。まさかこんなに考えることが多かったなんて…
大塚先輩:
テスト実施の担当者を長年やっていると自信がついてくるが,リーダーというのは単なる作業とりまとめ者じゃない。必要となる考え方や視点,スキルなど大きく違ってくる。
中山君:
今までは自分に直接関係がなかったので,計画書などもまじめに読んでいませんでした。だからダメだったんですね。
大塚先輩:
そこに気がついただけでも,一歩前進だ。適当に読んでいた計画書をもう一度しっかり読んでごらん。そしてもう一度作成してごらん。
中山君:
はい!初心に戻って,もう一度作成してみます!

どうせ計画書なんて使われないから適当でいいやと考えていた中山君でしたが,結果として大塚先輩にたくさんの指摘をもらうことになってしまいました。

テスト実施者とテストリーダでは求められるものが大きく異なります。特に今回取り組んだテスト計画は,テスト実施者としての作業が主だった頃にはほとんどなじみがありません。リーダを目指すにあたっては,まずこのようななじみのない作業を行うとき,周りがどのように行っているのかちゃんと確認する必要があります。

終わりに

さて,大塚先輩はざっと目に付くことを指摘しましたが,どうやらまだまだ言い足りないようです。これらの指摘以外には,いったいどのようなことに気をつけなければならないでしょうか? 読者の皆さんも「○○は書かなきゃ!」とか「××に気をつけろ!」とか言いたいことがあるかもしれません。再度第1回の資料を参照しながら考えてみてはいかがでしょうか。

また,せっかくの機会ですから,本稿での指摘点などを参考に,皆さんの普段の仕事や,会社に準備されている標準を見直してみてください。きっといろいろなことに気が付くでしょう。

著者プロフィール

鈴木三紀夫(すずき みきお)

1992年,(株)東洋情報システム(現TIS(株))に入社。複数のエンタープライズ系システムの開発に携わり,現在は社内のソフトウェアテストに関するコンサルタントとして活動中。ASTER理事,JaSST実行委員,JSTQB技術委員,SQiPステアリング委員 他。

著書


池田暁(いけだ あきら)

2002年日立通信システム(現日立情報通信エンジニアリング)に入社。設計,ソフトウェア品質保証業務を経て,現在は開発に関する設計/テストツールの導入や,プロセス改善に関する業務に従事。ASTER理事,JaSST実行委員,品質管理学会・ACM正会員。

著書