テストリーダへの足がかり、最初の一歩

第13回テスト報告(前編)

読者の皆さんこんにちは、この連載もいよいよ「テスト報告」です。

一通りテスト実行が終わったからといって、テスト活動が完了したわけではありません。そこで終わってしまっては「やりっぱなし」「後始末」もなにもしないということになってしまいます。

テスト実行が終わったらそれまで行ってきたテスト活動を整理し、報告書としてまとめます。この報告書をもとにテストマネージャなどはテスト活動を終了するのか、それとも追加・継続するのかを判断します。

さて、さっそく今回も中山君の例で考えていきましょう。

【今回の登場人物】

大塚先輩:
入社10年目。5年前に柏田マネジャーと一緒にソフトウェアテスト事業を立ち上げた。カメラが趣味で、暇さえあれば写真を撮りに出かける。
中山君:
入社5年目。本連載の主人公。入社以来ソフトウェアテスト一筋で経験を積んできた。そろそろ大きい仕事をしたいと考えている。

テスト報告

テスト実行工程では多少の混乱がありましたが、大きなスケジュールの遅延がおきることなく終了しました。小川君や千秋ちゃんの底力や大塚先輩の見えないサポートによるものだと、中山君は感謝しています。

しかし、テスト実行担当者とテストリーダでは全く異なる作業内容に大きく戸惑い、つまずきながらもやりとげた中山君は自席で真っ白な灰になっています。

そんなところに大塚先輩がやってきました。

大塚先輩:
お疲れさん
中山君:
あ、お疲れさまです。おかげさまでなんとか乗り切ることができましたぁ…。
大塚先輩:
(ありゃぁ、こりゃ重症だな)
中山君:
小川君と千秋ちゃんには今日のところは早めに上がってもらいました。ずいぶん忙しくしてもらいましたし、身体を休めてもらわないといけませんからね。
大塚先輩:
お、以前のアドバイスを覚えていたか。中山君も少しは成長したな。

ここのところずっと叱られっぱなしだった中山君、その言葉がうれしかったのか生気を取り戻しました。

中山君:
いや、僕も昔のままじゃいられないんで(キラッ)
大塚先輩:
(相変わらず、調子だけはいいんだよなぁ…)
大塚先輩:
それはそうと、もうひとつ仕事が残っていることを忘れてはいないかい?
中山君:
もうひとつ? テストケースはすべて消化しましたし…。
大塚先輩:
報告だ。柏田マネージャへの報告が残っているよ。
中山君:
報告…。そうでした……。

冒頭にも書きましたが、テスト実行が終了したら、そのテストレベルを終了していいかどうかの判断の材料のために、テスト報告書を作成しなければなりません。

大塚先輩:
本日は中山君も疲れていて、ミスが多くなるだろう。今日のところは早めに帰ってリフレッシュしてきなさい。
中山君:
わかりました。報告書はたぶんそんなに時間がかからないと思うので、明日早めにおもちしますね。

大塚先輩は「そんなに時間がかからない」という言葉に片眉をあげましたが、特に何も言いませんでした。何か気にかかるようです。

一日あけて、報告

次の日、お昼前に、中山君は大塚先輩のところに向かいました。

中山君:
先輩、よろしいですか?
大塚先輩:
ん?どうした?
中山君:
報告書をお持ちしました
大塚先輩:
え! ずいぶん早いな…

中山君から報告書を受け取った大塚先輩、パラパラとページをめくります。そして一言、

大塚先輩:
これは報告書じゃないな。読む価値はないからそのまま返すよ。
中山君:
えぇっ! どうしてですか!?
大塚先輩:
今言ったとおり。これは報告書ではない。よく考えてみなさい。その上でもう一度ここにくるように。
大塚先輩:
この調子じゃ、本来行うべき締めの作業もやっていないね。その作業がないからこのような報告書ができあがる。これもよく考えなさい。そしてその作業がわかったら実施すること。

中山君は最後の最後まで却下されてしまい、悩みこんでしまいました。

中山君が大塚先輩に持っていったテスト報告書は以下のような内容です。

  • 【テスト報告書表紙⁠⁠:テスト実行ログの表紙を入れ替えただけ
  • 画像
  • 【テスト報告書内容⁠⁠:テスト実行ログの中身

ここまで連載を読み進めてきた読者の方々には、何が問題なのかきっと一目でわかるはずです。大塚先輩が言うように、テスト報告書にはなっていないことがわかるでしょう。

また、大塚先輩は「本来行うべき締めの作業をやっていない」と指摘しました。それはいったい何でしょうか。ヒントはこれまでの連載にたくさん出てきています。

後編の公開まで、考えてみてください。

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