テストリーダへの足がかり,最初の一歩

第14回 テスト報告(後編)

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報告する前にレビューしよう

テスト報告書が出来上がったとしてもそれは作成者の独断が入っているかもしれません。テスト報告書だけの話ではありませんが,文書ができあがった場合は関係者を集めてレビューを行ってください。

今回の場合だと,大塚先輩や小川君,千秋ちゃんなどテストプロジェクトのメンバのほか,設計部門の設計担当者などです。テスト報告書を作成する場合に設計担当者の目を入れるというのは,案外忘れがちなので気を付けてください。なお,もちろんのことプロジェクトの作り方によってはマネージャや営業担当など,さらに多くのメンバを加えます。

テスト活動を評価の整理と評価を行う

中山君と小川君が議論をしているところに,千秋ちゃんがやってきました。

千秋:
テスト終わったのに,なにそんな難しい顔してるのよ。
小川君:
いや,かくかくしかじかで…
千秋:
中山クンまた怒られたんだ。相変わらずね。
中山君:
うぅ,面目ない
千秋:
で,本来行うべき作業が何って話ね?
小川君:
そうなんだ,報告書が良くないということは想像がつくんだけど,それ以外に何かあるかなぁ
千秋:
そんなの決まってるじゃない。打ち上げよ。テストが終わったのに,打ち上げの日程も決まってないのはおかしいじゃない。
小川君:
そんなふざけてないで……。いや,ちょっとまてよ。そうか,そういうことか。
中山君:
何? 何か思いついたの?
小川君:
はい。きっと大塚先輩が言っているのは「振り返り」のことだと思います。

振り返りミーティングを実施する

ここでは「振り返り」と言っていますが,テストウェアの整理や各種書類の取りまとめだけではなく,それらを関係者で評価する場が必要となります。

振り返りはプロジェクトの終了時に行うものとされていますが,マイルストーンごとに振り返りを行っても問題ありませんし,むしろ行うべきです。とくにテスト実装,テスト実行は作業量やかかわる人数も多く,それだけに流れる情報量も当然多くなります。さらに問題点や改善点の情報も多いはずです。

ですから,今回のテスト実行に関する情報を共有し,それらがはたしてどうであったかをディスカッションする場を設ける必要があります。

振り返りミーティングの技法としては「ポストモーテム」「落ち穂拾い」等があります。これらの技法を活用するとよいでしょう。

テストウェアの整理とパッケージ化(凍結)

振り返りによって,情報や活動の整理と評価が行われます。その振り返りでの材料に利用するため,また振り返りの生活物として,これまでに作成したテスト関連のドキュメントを整理し,パッケージ化(凍結)する必要があります。また,ドキュメントだけではなくテストツールなどについても整理を行います。それに加えて,文書化されていない各メンバの感想や見解,意見といったものも整理する必要があります。いわゆるテストウェアと呼ばれるものを整理する必要があります。

結末は…

中山君は小川君と千秋ちゃんの指摘から,テスト報告書を作成するための何をすべきかの見当をつけることができました。早速二人に協力してもらい,テストウェアの整理や振り返りミーティングを行い,社内標準にあるテスト報告フォーマットを利用してテスト報告書を作成しなおしました。確信はありませんでしたが,ひとまずできあがったものを大塚先輩のところに持って行きました。

心配そうな顔をしている中山君の前で,大塚先輩は今度は最後まで目を通してくれました。

大塚先輩:
よし,やるべきことはわかったようだね。でも内容はまだまだだ。とても柏田さんのところには持っていけない。俺も付き合うから頑張って仕上げよう
中山君:
はい!ありがとうございます!!!

それから中山君は大塚先輩の力も借り,レビューを重ねながらテスト報告書を完成させることができました。実に1週間がかりの作業となりました。

テスト報告書を作るということは簡単なことではないのです。でも,それだけに達成感もひとしおです。もちろん,メンバもそれは同じで,その日は千秋ちゃんが行きたがっていた打ち上げを中打ち上げとして出かけることになりました。全員が協力して何かを達成したときその打ち上げで笑顔が見られるのはコミュニケーションの醸成ができているということです。中山君はそれには気が付いていませんが,プロジェクトやチームを運営するに当たってもっとも大切な事柄のひとつです。大塚先輩はメンバが盛り上がる様子を眺めながら安心した表情で酒をすすめたのでした。

次回は,いよいよ最終回。次回の公開までに,今一度第1話から読み直していただければと思います。

著者プロフィール

鈴木三紀夫(すずき みきお)

1992年,(株)東洋情報システム(現TIS(株))に入社。複数のエンタープライズ系システムの開発に携わり,現在は社内のソフトウェアテストに関するコンサルタントとして活動中。ASTER理事,JaSST実行委員,JSTQB技術委員,SQiPステアリング委員 他。

著書


池田暁(いけだ あきら)

2002年日立通信システム(現日立情報通信エンジニアリング)に入社。設計,ソフトウェア品質保証業務を経て,現在は開発に関する設計/テストツールの導入や,プロセス改善に関する業務に従事。ASTER理事,JaSST実行委員,品質管理学会・ACM正会員。

著書