概要
「やることが多くて,そもそも最初から終わる気がしない」
「頼んだ仕事の進捗がまったくわからない」
「なんで自分がこんな仕事をしなくちゃいけないのか,さっぱりわからない」
「『他人の力を借りたら負け』だと思ってる」
「やり方を変えようとしても,他部署が抵抗してくる」
「問題があっても,空気を乱す発言はしない」
「同じ失敗を何度も何度も繰り返す」
そんな仕事のムダ,ムダな仕事はなぜ生まれる?
問題の原因を図解で示しつつ,解決策を教えます。
大好評『職場の問題地図』に続く働き方改革のバイブル!
【巻頭付録】仕事の問題 全体マップ
著者から一言
どうして仕事が進まない,終わらない?
日々の仕事,どうせやるなら予定どおり終えたいし,成功させたい」
自分の仕事を全うしたい――だれもがそう考えるでしょう。
私たち日本人は元来,几帳面で真面目な国民です。よほどの天邪鬼(あまのじゃく)でない限り,あるいは競合他社から送り込まれたスパイでもない限り,期限までに仕事を終えるようがんばります。コツコツ進めようとします。にも関わらず……
「なぜか,仕事が予定どおりに終わらない!」
こんな叫び,行く職場,行く職場で必ず耳にします。
いや,予定どおりに終わらないくらいならまだマシかもしれません。
「手つかずのまま,時が流れてしまった……」
こんな,夏休み最終日の小学生さながらの光景も見かけます。
以下は,私の過去の勤務先やクライアント先でよく聞いていた,ため息センテンスです。
- ①計画どおり終わったためしがない
- ②というより,計画を立てる人がいない
- ③「いつかやらなくちゃ」とは思っていて,期限を過ぎてしまった……
- ④計画やルールを決めても,定着しない,続かない
- ⑤「横入り」(突発の依頼)が多くて,どうにもならない
- ⑥「し忘れ」「やり漏れ」が常態化
- ⑦「計画どおりに終わらないのが当たり前」と,皆諦めてしまっている
- ⑧一部のデキる人頼み
- ⑨そもそも,最初から終わる気がしない
なかには,
- ⑩いままで勘と気合で何とかなってきたから,計画なんて立てない
なんて猛者(?)も。
1人でやる作業レベルの仕事から,5人,10人,あるいは20人以上で取り組むプロジェクトレベルのチームワークまで,規模の大小にかかわわず,嘆きの声があちこちで発せられています。
いったいなぜ,私たちの仕事はなかなかうまく進まないのでしょうか? 最後まで走りきれないのでしょうか?
そこには,無視できない2つの大前提があります。
①仕事は生きものである
仕事は常に変化します。その仕事への要求事項,前提条件,環境,取り巻く人々との関係性などは,時間の経過とともに変わります。期間が長ければ長いほど(あるいは,手つかず状態で放置すればするほど),変わるリスクは大きいといえるでしょう。仕事は生きものなのです。
②私たちもまた生きものである
そして,仕事をする私たちもまた生きものです。最近では,AI(人工知能)が進化し,人の仕事を代替するかもしれないなどと騒がれていますが,そこに到達するにはもう何年かかかるでしょう。また,AIを操るのも,結局は私たち人間です。しばらくは,人前提でものごとを考える必要があります。
人がやっている以上,完璧はありません。たとえば,「し忘れ」「やり漏れ」は,なかなかなくならないですね。忘れていなくても,目先の仕事に追われて,重要な仕事なのに,ついつい後回しにしてしまうこともあるでしょう。
それはなぜか?
「だって,人間だもの」
仕事がなかなかうまくいかないのは,仕事そのものが,そして仕事をする私たちも,生きものだからです。
そんなことを言うと,たまに厳しいお叱りを受けます。
「はぁ? 生きものだから? 人間だもの? 何を呑気なことを言っているんだ!」
お気持ちはごもっとも。しかし,前述の現場の嘆きの声をもう一度思い出してみてください。
- 「いつかやらなくちゃ」とは思っていて,期限を過ぎてしまった……
- 計画やルールを決めても,定着しない,続かない
- 「し忘れ」「やり漏れ」が常態化
- そもそも最初から終わる気がしない
- いままで勘と気合で何とかなってきたから,計画なんて立てない
どれもこれも,人間の意識や気持ちの部分が大きく影響しているものばかり。正論や「べき論」をふりかざしても,どうにもなりません。キレイごとだけの対策を並べ立ててもダメなのです。
夏休みの終わり間際まで宿題をやらない子どもたち。ルールで縛っただけでは,計画表を作らせただけでは,うまくいかないですよね。目先に大きな誘惑があれば,子どもは計画そっちのけで遊んでしまいます。
- 親が「今日は宿題やった?」と毎日しつこく問いかける
- 「8月20日までに終わっていなければ,21日からの家族旅行は中止」と約束する
- 仲のいい友達と一緒にやる
- 勉強が好きになるようなきっかけを作る
- ご褒美をちらつかせる
親は,あの手この手を使うでしょう。私たちの仕事も同じです。
「生きものだから」「人間だもの」
このリアルと向き合わずして,ものごとは解決しません。なのに,私たちはなぜかそこに蓋をして,キレイごとだけでスマートにやろうとする。そりゃ,うまくいくわけがありません。子どもに宿題をやらせるがごとく,さまざまなアプローチが必要です。
本書では,「仕事が思うように進まない・終わらない」実態を料理していきます。そこには,さまざまな要因が潜んでいます。
- 「計画を立てられない」「進捗が見えない」など,仕事の進め方(プロセス)の問題
- 「期限に終えることができない」など,個人のスキルも関係する問題
- 「一体感がない」「モチベーションが低い」など,意識や気持ちの問題
- 「だれも意見を言わない」など,職場環境や雰囲気の問題
- 「やり方を知らない」「有識者がいない」など,知識の問題
- 「抵抗する人,邪魔する人が多い」など,人間関係の問題
- 「同じ失敗を繰り返す」「失敗から学ばない」など,組織風土の問題
これらの要因を地図にして,解決策を提案します。まずは巻頭の地図を広げてみて,「私,ここでつまずいている!」「ウチの職場はここが弱い!」など,ワイワイがやがやしながら,原因と対策をつまみ食い,拾い食いしてみてください。
人間らしさを受け入れながら,最後まで走りきる仕事のやり方。この地図片手に,ゆるーり,真剣に考えてみましょう。
こんな方にお薦め
- やることが多くて,そもそも最初から終わる気がしない
- 頼んだ仕事の進捗がまったくわからない
- エラい人だけで何でも決めて,ほかの人は蚊帳の外
- なんでこんな仕事をしなくちゃいけないのかわからない
- 期限はただの努力目標だと思ってる
- 会議が管理職の独演会
- 「社外の力なんて借りたら負け」だと思ってる
- やり方を変えようとしても,他部署が抵抗してくる
- 問題があっても,空気を乱す発言はしない
- 同じ失敗を何度も何度も繰り返す
といったことに1つでもあてはまる職場にいると思う方