概要
人生は短く,読む本は多い――「運命の一冊」をモノにする方法とは?
「本を探すな,人を探せ」
「本屋は出会い系,図書館は見合い系」
「本棚を無限にする方法」
「5万円の本を5千円で手に入れるには」
「読書本から盗んだ技術で,その読書本の論理破綻や誤読を探せ」
「ゴミみたいな“大人の教養”は捨てておこう」
「『あとで読む』はあとで読まない」
かつてない本の味わい方を名著の数々とともに伝える,日本最高峰の書評ブロガー初の著書。
【特別付録】「読書は毒書」禁断の劇薬小説+トラウマンガリスト
こんな方におすすめ
著者から一言
かつてないほど情感を震わせる一冊。
固まった頭にガツンと一撃する一冊。
目に映る世界の解像度を上げる一冊。
自分を変える凄い本は,たしかにある。読前と読後で,自分が一変してしまうような衝撃や視座をもたらすようなやつ。価値観や生活感だけでなく,ともすると人生そのものにインパクトを与える。見慣れた世界をひっくり返したり,世界の解像度が上がるような「目」を手に入れるという喜びをもたらす。読み始めたら最後,徹夜を覚悟しなければならないような,「夢中本」とも「徹夜本」とも呼ばれる一冊だ。
そんな運命の一冊となる凄い本のことを,「スゴ本」と呼ぶ。そして,(ここ重要)そんな運命の一冊は,じつは何冊でもある。
では,そんなスゴ本に,どうやって出会うのか?
気になる本をぜんぶ読んでるヒマはないし,そもそも積読山を崩してるうちに人生が終わる。すべて読まなくても,ネットの画面越しであっても,少なくとも「そんな本がある」ことを知らなければ始まらない。どうやって,知らない本を知ることができるか?
ヒントは本書のタイトルにある。
あらゆる本はすでに読まれているのだから,それを読んだ「あなた」を探そう。どんなにアンテナを振りかざしても,わたし一人の観測範囲では限界がある。だが,「あなた」を見つけ出し,「あなた」のお薦めにより,わたしの世界は拡張するのだ。
「あなた」にオススメすると,オススメ返しされる。「これはスゴ本だ,このセリフに撃たれた」とアツく語ると,「ならこれは? そこが刺さったなら,これは号泣必至やね」と,さらなる熱量をもって推してくる。競い合うように,おもしろいように,読みたい作品がどんどん出てくる。
さらに,「あなた」が何が好きでどんな人で,わたしの世界と重なるところと外れるところが見えてくる。既読本も違った解釈・観点から切り込まれ,「あなた」をダシにした別の味覚があることに気づく。この本が好きな「あなた」が好きな本を知りたい。これが,本を通じて人を知り,人を通じて本に会う極意なり。
ある「作品」なり「作家」という狭い範囲だけではない。自分の知らないジャンルをごっそり拡張する瞬間も味わえる。わたしの場合は「料理」だ。本好きは食いしん坊でもある。ブックトークに持ちよった手料理に惚れ込んで,手ほどきを受け,自分で作れるようになる。同時に,美味しさの秘密を解明する科学本や,料理と人の歴史本を読み漁るうちに,作るとは知ることであり,食べるとは生きることに気づく。
淵の深さを思い知ることもある。なんとか死なずに生きてきて,酸いも苦いも飲み下したつもりでいた。だが,人の闇を描いた本をオススメしあううち,覗き込むことすらままならない深い裂け目があることに気づく。裂け目はけっこう至近距離で,ふっと惑えばたやすく墜落するだろう。そんな,価値観を激変させるような劇薬本を,後悔すること承知で読む。
どれも,わたし独りの力では,たどりつけなかった知見であり,見つけられなかった感情だ。たいていのことは本にあるが,行き着くまでが大変だ。だから,わたしは「あなた」を探す。わたしが知らないスゴ本を,きっと読んでいる「あなた」を。
同時に,本書を手にする「あなた」のスゴ本を探すヒントを見つけてほしい。あなたが知らないスゴ本は,きっとだれかが読んでいるのだから。