EMSOneが、10月10日のニュースとして、台湾のHTCが、PC大手の中国レノボと、身売りか出資受け入れの交渉を行っていると報じています。このニュースは、香港の日刊紙「星島日報」が報じたもので、早ければ2014年上半期中にも話がまとまるだろうとしています。
【携帯】 スマホのHTC身売りか レノボと交渉と香港紙 - EMSOne中国電子・電気・通信市場情報からEMS情報まで毎日更新!
www.emsodm.com
今回は、HTCとは、どんなメーカなのか?そして、HTCに、何かあったのか?を取り上げていきます。
HTCとは、どんなメーカなのか?
HTCは、1997年設立の台湾を拠点とするスマートフォンメーカです。
立ち上げ当初は、Windows CE搭載の「HP iPAQ」やPalm OS搭載の「Palm Treo 650」のODMで製造を行い、急成長を遂げます。ODMで経験を積み、独自ブランドの端末を製造することになります。
それまでは、ツボを抑えた端末を作る知る人ぞ知るといったメーカでしたが、2008年に発売された「HTC Touch Diamond」が、HTCの名前を知らしめることになります。Windows Mobile 6.1を搭載していたこの端末は、黒く輝く背面カバーがダイヤモンドカット風のデザインで、事務的なデザインの多い端末の中で異彩を放つ存在で話題になりました。いま思えば、デザインコンシャスなスマートフォンは、これが走りだったと言えるかもしれません。
日本市場では、イーモバイルからはじまり、ソフトバンク、NTTドコモの3キャリアから発売されていたので、この端末がどれだけの人気だったかをご理解頂けるはずです。
この端末は、秀逸なハードウェアデザインだけではなく、「 Touch FLO 3D」と呼ばれた独自のタッチインターフェースを持ったホーム画面が搭載されているのも人気の要因でした。Touch FLO 3Dは、ホーム画面から電話の着信確認や受信メール確認、予定の確認ができるなど、ホーム画面に、現在の端末が持つ状況を表示するアプリの走りで、HTC製のAndroid端末に搭載されている「HTC Sense」の源流です。
Androidの発展に賭けて、栄華を極める
GoogleがAndroidを登場させると、その発展に賭けて、2008年には、世界初のAndroid端末「T-Mobile G1(HTC Dream) 」をリリースします。日本市場では、翌年の2009年7月にNTTドコモから「HT-03A」をリリースしています。その後、「 HTC Desire」やFacebookボタンを搭載した「HTC Cha Cha」など、スマートフォンブームに乗って、特徴的な端末をリリースして、HTCの名前を世に広めていきます。
最近では、「 HTC butterfly」や「HTC One」など、特徴的なデザインを持つ端末をリリースしています。これらの端末は、auが販売しているので、お使いの方も多いはずです。
日本市場向けに、HTC J OneやHTC J butterflyを投入して、積極的に取り組んでいる
転機の訪れは、2010年ごろ
Androidに賭けて、栄華を極めたHTCですが、そのAndroidが原因で、2010年頃から雲行きが怪しくなりはじめます。
Android陣営に脅威を感じはじめたAppleが、マルチタッチに関する特許をはじめ、計20件の特許を侵害しているとして、GoogleではなくHTCに対して訴えを起こします。AppleがHTCを訴えた理由は諸説ありますが、Googleとの直接対決を避けて、はるかに規模の小さいHTCを相手にする方が有利と考えたとも言われる説もあります。この訴えは、2012年9月に和解が成立しますが、これまで、飛ぶ鳥を落とすかの勢いだったHTCが失速しはじめた要因でもありました。
その後は、皆さんの記憶にも新しいはずです。
社運を賭けて世に送り出した「HTC One」の需要の読み違いや、Facebookとコラボした「HTC First」が壊滅な状態になるなど、戦略ミスが目立つようになります。その結果、人材流出が相次ぎました。また、同社を離脱した幹部が批判まじりのツイートをするなど、よくない話題ばかりが続きます。
最近では、同社の幹部が産業スパイを働いて、相次いで逮捕されたり、HTC Sense 6.0に関わる技術を中国に企業に流出させるなど、次々と不祥事が発覚して大打撃となり、今回のニュースとなり、先行きが危ぶまれる状況に陥ります。
思い入れのあるメーカ
筆者は、Windows CEのアプリ開発に情熱を注いでいたころ、HTCのエンジニアと交流があり意見交換していた次期があったので、思い入れのあるメーカです。ゴタゴタはあれど、HTCは、すばらしい製品をリリースしているので、自浄作用を高める取り組みを徹底的に行い、HTC One Maxとともに元気のある姿を再び見せてほしいものです。