Android Weekly Topics

2016年5月第4週Google I/O 2016、開催

Google I/O 2016が開催されました。新しいハードウェアの発表はなく、これを期待していた人たちには、残念な内容だったかもしれませんが、これからのGoogleの方向性を示す多くの発表が行われました。

Google I/Oの基調講演では、2016年3月から開発者向けにプレビュー版が公開されている「Android N」に関しても触れており、⁠パフォーマンスの向上」⁠セキュリティの向上」⁠生産性の向上」に分けて紹介が行われので順に振り返っていきます。

パフォーマンスの向上

パフォーマンスの向上については、Vulkan APIのサポートとARTの改良が上げられています。

3DグラフィックAPIのVulkanは、GPUに対しての抽象度が低いローレベルのAPIなので、オーバーヘッドが少なくハードウェアの性能を引き出しやすいのが特徴です。たとえば、Vulkanに対応するゲームでは、より高いフレームレートでのグラフィックス表示が可能になります。また、来るVR時代へ向けてもVulKanがサポートされたのは良いことで重要なポジションを占めそうです。

もうひとつは、ARTの改良です。Android 6.0に搭載されているARTは、事前コンパイル方式(AOT)を採用しており、インストール時にコンパイルを行っていました。こうすることで、アプリの起動時間や実行速度が向上する利点はありましたが、アプリのインストールの時間が長くなるなどの欠点もありました。

Android Nでは、従来からのAOT方式に加えて実行時にコンパイル(JIT)する方式が追加されて併用されることになりました。JIT方式の追加は、アプリのインストール時間を短縮するのが目的です。これを導入することで、インストール時間が75%高速化されています。

これまでのAOT方式は、充電中かつアイドル状態のときにコンパイル処理が行われます。これは、アプリの実行中に収集したプロファイル情報を使って、最適化処理が行われるので、これまでより最大で6倍高速化されるとしています。

セキュリティの向上

セキュリティ向上では、ファイル単位での暗号化、メディアフレームワークの安全性強化、シームレスアップデートが上げられます。

ファイル単位の暗号化は、これまで内蔵ストレージ全体で暗号化されていたのを、ファイル単位で暗号化できる仕様になっています。

メディアフレームワークの安全性強化は、昨年の今ごろAndroidのメディアフレーム「Stagefright」に脆弱性が発見されて、ほとんどの端末が対象となった問題への対処です。現行のメディアフレームワークは、Android 2.2のころに導入されて多くの問題を抱えているので、これの安全性を強化する取り組みです。

最後のシームレスアップデートは、OSのアップデートをバックグラウンドで行います。

Androidのアップデートといえば、専用ファームウェアで再起動した後にシステム領域を書き換える形でアップデートを行っていました。Android Nでは、再起動することなく大半のアップデートをバックグラウンドで行います。たとえば、月例で実施されるセキュリティアップデート中でも制限付きながらアプリが使えたり電話がかけられます。利便性が高くなる仕組みですが、既存のNexus端末では利用できず、2016年後半に発売を予定しているNexus端末で対応を予定しているようです。

生産性の向上

生産性の向上では、⁠マルチウィンドウ」⁠通知機能の強化」⁠絵文字の改良」が挙げられています。

マルチウィンドウは、ウィンドウが重なりあうマルチウィンドウではなく、画面を上下または左右に分割して、それぞれにアプリを表示する仕組みで、複数のアプリを並べて同時に使えます。

通知機能の強化は、アプリを起動することなく通知カードに直接メッセージを入力して返信することが可能になります。

絵文字の改良は、人の表現にバリエーションが増えて、顔や手の肌の色が異なるバリエーションが用意されるようになりました。

円熟の域に達してきた。次の進化のアプローチは?

Androidが登場して7年が経過します。

これから登場するAndroid Nでは、スマホでもマルチウィンドウが使えるなど、iOSよりも進んでいる部分があり、その差もほとんどなくなりました。どちらを選ぶかは、機能の違いではなく、これまでのアプリや周辺機器の資産、好みの問題となりそうです。

そろそろ、次の新しいアプローチが欲しいところですが、それは、今回のGoogle I/Oで発表された、モバイルVRプラットフォームの「Daydream」になるかもしれません。VRは、ようやく立ち上がったところで時期尚早の感があり、その用途もゲームなどのエンタメ系が主軸です。しかし、これ以上の大型化が不可能なスマホのディスプレイとして次の方向性を示すものと考えることもできます。いまは、端末の液晶を自分の方へ向けて操作するスタイルが当たり前のようになっていますが、次の7年では、端末はポケットに入れて、ヘッドマウントディスプレイを着けて操作するスタイルが当たり前になっているかもしれません。

今週は、このあたりで。また来週。

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