Project TrebleがカスタムROM開発に改革をもたらす
Android 8.0にはProject Trebleと呼ばれる、OSのアップデートを容易にする仕組みが追加されました。これがカスタムROM開発に、革命をもたらすことになると話題になっています。
ここ数年で独立系カスタムROMベンダは皆無になったので、この話題が寂しく感じますが、SamsungやLG、HUAWEIなど自社端末にカスタマイズしたAndroidを搭載するメーカは多く存在します。メーカごとの多様性はAndroidの魅力ですが、これが要因で最新OSのアップデートに時間がかかったり、ベンダによっては古い機種はアップデート対象から外す状況です。
こうした状況を示す数字として、2017年11月のAndroidのバージョン別シェアでは、最新のAndroid Oreoが0.3%、ひとつ前のAndroid Nougatでも20.6%止まりで、最新OSの普及が低いことがわかります。
端末ベンダは、既存のハードウェアに新しいOSを対応させて動作検証を行います。
アップデートを無償で提供することを前提に、新製品開発とは別に人員を割り当て、時間とコストをかけて取り組むので、対応が早いベンダでも1ヵ月程度、Androidのカスタマイズ範囲が大きく、販売シェアの大きい端末メーカになれば、3ヵ月程度の時間がかかっています。
打開策としてのProject Treble
こうした状況を打開するのがProject Trebleで、これは端末ベンダ固有の実装部分とAndroidのフレームワークを分離して、端末メーカがOSのアップデートやセキュリティ修正作業を容易にするものです。
これまでは、Androidのフレームワークの一部に端末ベンダの固有実装が含まれており、新しいバージョンがリリースするために改変と検証する必要がありました。また、システム互換性を保証するためのテスト群「Vendor Test Suite」がリリースされて、ルーチン化できるようになったとも異なる点です。
ただ、Androidの面倒なところは、Project Trebleを採用するかは端末ベンダの判断に任されています。たとえば、OnePlusは、自社端末のOnePlus 3, 3T, 5, 5Tには、Project Trebleを採用しないと明言しています(ただ、OnePlusは、タイムリーにアップデートを提供しています)。
移植は1日仕事
さて、カスタムROMに話を戻します。XDAで公開された記事によれば、XDAシニアメンバーのphhusson氏がカスタムROMの開発にPeoject Trebleの有用性を確認したところ、20時間程度の研究、開発、デバッグで、異なるベンダの異なるSoCを搭載した端末で、システムイメージを作成してブートすることを確認したとしています。
具体的には、Huawei Mate 9で起動したシステムイメージが、Honor 8 Pro、Honor 9、Sony Xperia XZ1 Compact、およびEssential Phoneで起動したとしています。
また、AOSPベースのAndroidでは、開発過程でカーネルのソースコードを一切変更することなく、AOSP ROMを完成させたとしており移植性が向上していることもわかります。
カスタムROMは、ベンダおよび端末ごとにシステムイメージを提供しており、提供側に大きな労力を必要としていました。しかし、今回の成果はカスタムROMの提供がこれまでとは、比較にならないコストで実現できる可能性があることを示しています。これを機会に、ここ数年で見かけなくなった、独立系カスタムROMベンダが復活してくる可能性も考えられます。
端末を買って来てOSをインストールする時代がくる?
Windowsのように、Project Trebleに対応したハードウェアを買っていれば、最新のAndroidを入手してインストールして使うと言った使い方が当たり前になる時代も考えられます。他、特色があるAndroid端末を開発するベンチャーでも、Project Trebleに対応した端末を作ることで、作りっぱなしにが避けられる可能性はあります。
Android 8.0 Oreoは、カスタマイズしたAndroidを搭載するベンダの端末もアップデートのタイミングが早いので、Project Trebleに対応した端末ではなくても、移植性の高さの恩恵を受けて、その成果として早期のリリースとなっているのかもしれません。
今週は、このあたりで、また来週。