KaiOSって知っていますか?
マトリックスにも登場したNokia 8110が4Gに対応して復刻されたことで、ケータイマニアの間で話題です。特徴的なデザインもさることながら、本体価格が79ユーロで日本円換算すると1万円を少し超える程度なのも魅力です。昨今のスマートフォンは10万円超えの端末も多いので、10分の1程度のNokia 8111 4Gは極端に安く感じます。
Nokia 8110の特徴は、バナナのようなデザインだけではありません。これには「KaiOS」と呼ばれるフィーチャーフォン向けOSが搭載されており中身はいま風の実装です。
このKaiOSは、Googleが2,200万ドルを投資したことでも話題になりました。
KaiOS搭載の端末は新興市場向けです。Googleは、こうした市場で自社サービスの普及手段として、Android OneだけではなくKaiOSにも期待をしているようです。この投資の一環として、Nokia 8110 4Gには、検索、地図、YouTube、GoogleアシスタントなどのGoogleのサービスが統合されています。
突然降って湧いたOSではない
KaiOSは突然降って湧いたようですが、MozillaでFirefox OSの開発に関わっていたエンジニアが関係しています。ただ、Firefox OSのコピーではなく、これよりもより堅牢かつ拡張された作りになっており、開発元は「私たちを兄弟や子供ではなく、遠いいとことして考えてください。」と語っています。
先でも書いたようにKaiOSは新興市場をターゲットにしていますが、Firefox OSと違うのは搭載端末が、スマートフォンではなくフィーチャーフォンであるところです。スマートフォンだと他のスマートフォンとのパフォーマンス差やスペック差に目が行きますが、フィーチャーフォンであれば通話+α程度しか望んでいないので、別の見方になり他と比較することもありません。
インターネットへのアクセス手段を持たない人は、30億人以上いると言われており、低価格スマートフォンを作る試みがされていますが、フィーチャーフォンにスマートフォンが持つエッセンスを入れるアプローチは、これまでになく面白い試みです。また、成熟市場でも20%近く(日本の場合はもっと多いかもしれません)スマートフォンを使用できないユーザがいるとされているので、こうしたユーザにもアプローチできます。
アプリ開発も可能
KaiOSは、サードベンダーがアプリを開発できます。
KaiOSは、ウェブベースのモバイルOSなので、アプリ開発はHTML5ベースのJavaScriptで行います。GUIで使われているUIパーツなどもFirefox OSの面影が残っており、これを知る筆者としては懐かしく感じます。
開発環境は、FirefoxのWeb IDEを使います。その開発環境にはFirefox OSの面影が多く残っているようで、シミュレータには「B2G(Boot 2 Gecko)」、アーキテクチャの説明ページには、GaiaやGeckoの文字を見かけます。また、APIをWebAPIで定義されている物を使うのもFirefox OSと似ています。
開発したアプリはKaiStoreを通じて配布できます。こうした部分もFirefox OSの残り香があります。
KaiOSは日本語表示が可能です。しかし、日本語入力アプリがないので常用はできません。エレガントさを無視すれば、日本語変換するウェブサービスと連携するアプリを開発して、ローマ字入力されたものを漢字変換する簡易なアプリが作れそうなものです。
面白そうだけど
Firefox OSやPalmのwebOSしかり、技術的に大きな問題がないにも関わらず、ウェブベースのOSは成功事例がありません。KaiOSも同じ道をたどるかは、しばらく様子を見る必要がありますが、Googleの投資によって、Googleのサービスが使えるようになっているのは、これまでとは違う部分で大きな魅力にもなっています。
日本のような成熟市場で売られているフィーチャーフォンにもKaiOSの搭載を期待しますが、割り切りが重要なので贅沢を知っている市場では、コンセプトがブレてダメになる可能性もあります。たとえば、通話とLINEだけと割り切ることができればアリな気もします。
今週は、このあたりで、また来週。