Samsungのディスプレイ技術情報が中国企業へ
SamsungのOLED技術を同社のサプライヤが中国の競合企業へ流出させたニュースが話題になっています。
これは、企業スパイに技術情報を盗まれたのではなく、Samsungのサプライヤである2社で働く従業員9名が中国の競合企業に1380万ドル(約16億円)で売却しました。韓国の検察当局は、これに関わった2社と9名を明らかにしていません。Nikkei Asian Reviewによると、韓国のパネル製造装置メーカToptecとその関連会社が関わっており、Toptecの社長を容疑者として起訴したと報道しています。
競合企業に流出したのは、3Dラミネーションの生産設備及び技術資料です。
3Dラミネーションは、SamsungのGalaxy SシリーズやGalaxy Noteシリーズで使われている、湾曲したガラスにパネルを貼り付ける技術です。この技術を2018年5月から8月までの間に売却したとされています。
SamsungのOLED技術は、世界をリードしておりシェアは90%以上と言われています。Android関連では、iFixitがPixel 3 XLにSamsung製のディスプレイが搭載されていると分解レポートを公開しています。
OLED関連の最新技術といえば折りたたみディスプレイです。
これを搭載するSamsung製のスマートフォンは、内部事情を知る人物の話によれば、21万~29万円になると言われており、これが本当だとすればGalaxy Note 9やiPhone XS Maxなど、現状のハイエンド端末をさらに上回る価格になります。これだけ見ても折りたたみディスプレイが新たな金脈になる可能性は十分にあります。また、スマートフォン関係の面白そうな技術は出し尽くした感があるので、新たなギミックとしても注目が集まります。
今回の事件が発覚する前に、Samsungに先んじて中国企業のRoyoleから「FlexPai」が発表されました。Royoleはフレキシブルディスプレイを手掛けるメーカーで、自社の技術力をアピールするために折りたたみディスプレイを搭載する端末を開発しています。不正入手した技術を、自社技術としてアピールすることはないと思いますが、符合する部分もあるので開発を進めるRoyoleは、余計なノイズに悩まされることになりそうです。
ソフトウェア技術は流出していない
Samsungから流出したのはハードウェアに関わる技術で、今回の話題を取り扱った報道でも、ソフトウエアに関わる技術が流出しているとは触れていません。スマートフォンに限ればソフトウェア技術も重要で、ハードウェアのみではバランスに欠きます。
折りたたみディスプレイのユースケースとして、持ち運ぶ時はディスプレイを折りたたんで小型化して、腰を据えて使う時はディスプレイを開いてタブレットのように使うがあげられますが、これではあまりにもハードウエア偏重ですし、このたに20万円以上のコストをコモディティ化したスマートフォンに払うとは考えられません。
Googleは、Android OSで折りたたみディスプレイをサポートすると表明していますが、先で示した折りたたみ動作の際に、OSがシームレスに動作することをサポートすると表明しているだけで、この先の具体的なユースケースは提示されていません。Samsungもディスプレイを広げた時の大きさを活かして、3つのアプリを一度に起動できることを提案している程度で、折りたたむ動きを活用した提案や折りたためる形状を活かした使い方の提案はありません。
折りたたみディスプレイが価値あるものとなるには、ハードウェアの特性を活かした新たな価値を作り出すことです。折りたたむことで表面積が小さくなるのは、一時的なものに過ぎず客寄せパンダの扱いで終わる可能性はあります。よって、Samsungのディスプレイ技術を入手した企業の優位性も長続きはしないかもしれません。
ここ数年で、スマートフォンのディスプレイ事情は激変しています。
数年前まで全面ディスプレイで驚いていたものが、次へのステップとして端末形状を変化させるまでに至っています。次は、フォログラムでも登場するのかと期待しますが、折りたたみディスプレイの進化系として、スマートウォッチを兼ねた腕に巻き付けられるスマートフォンが登場するかもしれません。
今週は、このあたりで、また来週。