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2020年7月第1週Gmail以来の新しいメールサービスHey』(前編)

Gmail以来の新しいメールサービス「Hey」

Basecampが6月15日に開始した、新たな有料の電子メールサービス「Hey」が、テック系のコミュニティで話題になっています。

Basecampの創業者兼CTOのデイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン氏(DHH)がHeyの開発に関わっていることでも注目を集めています。DHHは、こうした紹介よりも、Ruby on Railsの作者と紹介するほうがわかりやすいかもしれません。

以前は、招待制が取られており、ホームページから指定のメールリクエストを送信すると招待コードが送付されて、このコードを持ってアカウントを作成していました。リリース直後は、この順番待ちのリストに数万人が入っていると話題になっていました。現在は、招待制が終了し、誰でもアカウントが作成できるようになり、すぐにサービスが使えるようになりました。

サービスに登録すると試用期間が14日あたえられます。このために、クレジットカードを事前登録する必要もなくフェアな作りです。利用料は99USドル/年です。

現在は、多くの電子メールサービスが無料で使える時代ですが、この対価として個人情報を差し出していることが懸念事項としてあげられます。Heyは、プライバシー保護に重点を置いたサービスで、利用者からサービス使用料を徴収することで、これをサービス提供の運営にあてると明文化しており、サービス利用中に知り得ないところで情報収集が行われません。

時代にあった電子メールサービス

Heyは、新しい電子メールサービスなので、誰しもが驚くような新機能、今どきであれば機械学習を活用したうんぬんとかに期待するかもしれませんが、こうした機能はありません。

乱暴な言い方ですが、Heyには誰しもが驚くような新機能はありません。今どき電子メールが、どう読まれて返信が行われ、そして、整理されているかを見極めて、これをワークフロー化してサービスUIとして実装している印象です。

メールの振り分け先は2つ

たとえば、電子メールでよく使われる振り分け処理は、Heyにも実装されていますが、振り分け先は「The Feed」「Paper Trail」のみで、自身で振り分けフォルダーを作れません。

この2つの使い分けは明確です。

The Feedは、ニュースレターやプロモーションメールなどの振り分け先として使います。Paper Trailは、ネットショッピングの注文メールや領収書のメールの振り分け先として使います。Imboxには、これ以外のメールが表示されます。

古くから使われている電子メールは、多くの人に既成概念が植え付けられているので、使い始めは振り分け先が2種類しかないことに戸惑いますが、今の電子メールの使い道はこの2種類とも言えます。こうして割り切ることで、操作が煩雑化することを防いでいるのと、UIがシンプルでわかりやすくなっています。

PCのサービスサイトとモバイル用アプリで、UIのデザインが大きく変わらず実装されているのがわかりやすい成果です。すばらしいです。

メールと切り離せない迷惑メールの扱い

電子メールと切り離せないのが迷惑メールです。これにもHeyはおもしろい実装がされています。

まず、初めて受信するメールアドレスからのメールは、これが迷惑メールであろうがなかろうが「The Screener」に一時保管されます。ここで、Yes/Noの選択で、今後、メールを受信するか決定します。Yesを選ぶとImboxへ保存されて、Noを選ぶと以降のメールを受信しません。こうした操作で、受信可能なメールのアドレスリストを作っていきます。

Heyは、技術的に複雑で高度な迷惑メールフィルターを使っているワケではありませんが、迷惑メールの判断を利用者に委ねているので、よくある誤認識が起きません。

振り分けのときでも触れましたが、プライベートのメールは、今どき裁ききれないほどのメールを受信することもなく、受信先も絞っていることが多いので、誤認識があるフィルター方式を使うよりも、リスト方式を使うほうが今に則しているのかもしれません。

モバイルクライアントもあります

AndroidとiOS用のクライアントが公開されています。筆者、Android用のクライアントを使っていますが、今のところは何の問題もなく動作しています。

現代のメールサービス

Heyの電子メールに対する考え方は、同種のサービスと異なります。人によっては好き・嫌いが分かれるかもしれませんが、ZoomやSlackなどコミュニケーションの手段が多様化してメールが主役ではないので、現代にあう考えを持つサービスではないかと筆者は捉えています。後編では、もう少し掘り下げたいと思います。

今週は、このあたりで、また来週。

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