ふたたびデジカメにAndroidが搭載される
最近発売のiPhone 12は、HDRの動画撮影ができるなど高性能なカメラが搭載されているので、カメラに携帯電話機能が搭載されたとも言われています。
iPhone 12だけでなく、今どきのスマホは高性能なカメラが搭載されています。
これは光学性能の進化も関係しますが、写真をデジタル処理することを前提とする「コンピュテーショナルフォトグラフィ」の技術が進み、撮影技術を必要とされていた写真が誰でも手軽に撮れるようになり、ユーザはデジカメの代わりにスマホを使うようになっています。
コンピュテーショナルフォトグラフィのために、ハードウェアも特化したつくりになっています。いまどきのスマホには、画像処理や機械学習処理を受け持つコアがCPUに搭載されており、これらを使いリアルタイムで写真のデジタル処理が行われています。
こうしたデジタル処理技術が、高性能なレンズで撮影した写真と遜色なくなるのも、時間の問題かもしれませんし、デジタル処理された写真が当たり前になれば、これが前提の作例も当然となる可能性があります。
ただ、レンズの持つ表現力は、あらかじめ決めたことしかできないデジタル処理にはない魅力があるのも事実で、コンピュテーショナルフォトグラフィが今ほど盛んではないころに、デジタルカメラにAndroidを搭載するカメラが存在していました。
たとえば、2012年ごろからSamsungが製品を投入しており、コンデジ風のGALAXY Cameraやレンズ交換式のGalaxy NXを発売しています。筆者は、GALAXY Cameraを入手してデジカメとして使っていたことがあります。国内では、パナソニックがコミュニケーションカメラとして、1インチセンサーを搭載した「DMC-CM10-S」を発売していました。
こうした製品は、スマホカメラよりも良いカメラの位置付けで数年間続きますが、当時は、ハードウェアとソフトウェアのバランスが悪く、使いこなしに試行錯誤が必要だったために、手軽に使えるスマホカメラのほうがメジャーになります。
過程を楽しむことは忘れていない
カールツァイスがデジカメにAndroid OSを搭載するZEISS ZX1を発売します。この類の製品では久しぶりの新作です。
2018年に開発の発表がされており、ようやく実製品が発売になります。
ZX1は、コンデジのような見た目ですが、有効3,740万画素の35mmフルサイズセンサを搭載するレンズ一体型カメラです。
高性能なレンズを搭載するカメラで、撮影の過程も楽しむカメラなのでスマホとは異なる楽しみ方ができます。多くは撮影過程に時間を取られることなく、見栄えのする写真が撮れることを望んでいますが、クルマのミッションにMTがなくならないように、コンピュータ任せで撮影するのではなく、自分の判断でカメラを制御して写真を撮りたい層向けのカメラです。
早々に結果が得られるコンピュテーショナルフォトグラフィが全盛になりそうな流れの中でも、結果が得られるまでの過程を楽しみ、使いこなす楽しみや自分なりの成果が得られる試行錯誤する余地を持つ製品が作れるのは、レンズメーカが手掛けるカメラだからこそ取れるアプローチです。
撮影はマニュアルで行いその過程を楽しむとしても、何らかの後加工を行うことを前提としており、本体の背面に搭載された1,280×720ピクセルのディスプレイと写真加工アプリの「Lightroom CC」を使って、PCレスでも好みの写真が作れます。
Lightroom CCはAndroidで動作します。これが関わりそうなスペックは、ストレージが512GB、USB PDにも対応するUSB-C Gen1コネクタ、Wi-Fi、Bluetoothを搭載するといった程度です。また、ネットワークが使える場所では、撮影した写真をクラウドストレージへアップロードする機能も使えます。これはウリの1つだと思いますが、なぜか公式ホームページにも情報が少なくあまり触れていません。
時代は繰り返すなのか
ZEISS ZX1は、高性能カメラに加えて写真の後加工にパワフルなツールが使えます。
加えて2012年当時と比べれば、パワフルなCPUや速いネットワークも使えるようになっています。ただ、周辺状況が変わったとしても製品コンセプトが当時と大差なければ、結果は見えているようにも思います。唯一の違いは、カメラ業界のカールツァイスが手掛けているので、カメラを使った撮影過程を楽しむ要素を忘れていないところです。
今後の動きが気になる製品で、このカメラが売れれば撮影が楽しいAndroid搭載のデジカメが増えるかもしれません。
今週は、このあたりで、また来週。