この記事を読むのに必要な時間:およそ 1 分
スマホとPCとの距離が縮まるが,ベンダごとのアプローチが異なり興味深い
Windows 10のスマホ同期の新機能として,Android上のアプリをWindows 10から起動して操作できる機能が追加されました。さらには,Insider PreviewのBuild 20257では,スマホ同期が強化されて複数のAndroidアプリが実行できるようになりました。
スマホ同期からAndroidアプリを起動すると,縦長のウィンドウの中にアプリが表示されます。
リサイズ対応のアプリであれば,ウィンドウサイズを変更して実行することもできます。もちろん日本語入力も可能で,事前に設定を済ませればスマホを手にすることなく操作できます。また,お気に入りのAndroidアプリをタスクバーにピン留めすれば,スマホ同期を経由することなく起動もできます。
これで,WindowsアプリのようにAndroidアプリを使えますが,こうした使い方ができるのは,SamsungのGalaxy Sシリーズ,Noteシリーズ,Z FlipやFoldに限られています。また,アプリの実行はスマホで行われるので,スマホ同期経由でアプリを実行している間はスマホの操作ができません。
Insider PreviewのBuild 20257では,この環境がさらに強化されて,複数のAndroidアプリが起動できるようになりました。こうした使い方ができる端末は,さらに限られており,Galaxy Note 20シリーズ,Galaxy Zシリーズです。
一連の機能が使えるのは,Samsungの一部の端末です。対象端末であれば,スマホ同期管理アプリに相当する「Windowsにリンク」がシステムに統合されているので,アプリをPlayストアからインストールする必要もなく手間をなく始められます。
アプリがPCで実行できるのは,Microsoftのスマホ同期だけではないので,他もみていきます。
Samsungのアプローチ
Samsungは,スマホをデスクトップライクに使える「Samsung DeX」に古くから力を入れています。最近は,PCと接続できる「Samsung DeX for PC」までリリースされています。
これは,PCのDeXアプリを起動するとウィンドウの中でDeXが起動します。PCで動作する仮想マシンのようなものですが,スマホとはUSBケーブルで接続する必要があります。操作はPCのキーボードとマウスを使います。これもスマホ同期と同じく,Androidアプリがウィンドウ内に表示されて,複数のアプリを起動できます。
SamsungがDeXに力を入れのは,自社端末が利用される機会を広げるためのはずです。
この考えと,MicrosoftのモバイルユーザをWindows 10に取り込みたい考えが一致して,スマホ同期のアプリ起動があるのは間違いありません。お互いにメリットがあるので,両社の密な協力関係はこれからも続きそうです。
Appleのアプローチ
くしくも似たタイミングで,AppleもApple M1チップを搭載するMacで,iPhone/iPadアプリが実行できるようになりました。
最新OSの「macOS Big Sur」では,UIにiOSのエッセンスが取り込まれており,iPhone/iPadアプリをmacOSアプリで実行しても,見た目や使用感に違和感がでないように配慮されています。デスクトップとモバイルの差を極力すくなくするために,macOSをiOSに寄せてしまう大胆なアプローチですが,デスクトップとモバイルを手掛けるAppleにしかできません。
スマホ同期のほうは,ウィンドウの中で実行されているアプリはAndroid用で,Windowsアプリと見た目や使い勝手が異なり別物なのでサブシステムのような扱いです。
アプリの実行も考え方が異なり,スマホ同期はスマホのリソースでアプリが実行されて,これがPCのウィンドウに映し出されています。Appleの方は,Macのリソースでアプリが実行されるので,誤解承知で言えばmacOSアプリと同じです。
Appleは,iPhoneの先にiPad,さらに先にMacがあるので,自動車メーカの製品ラインナップの展開に似ていて,ユーザのアプリ資産を守りながら自社製品で段階的にステップアップができるようになっています。
一方のMicrosoftは,Samsungとの関係をみれば,表向きは利便性のためという印象ですが,先にある自社サービスの裾野を広げることを見据えている可能性もあります。
「スマホアプリがデスクトップで使える」といっても,何を売りたいかでメーカの取る戦略が違うのは興味深いところです。
今週は,このあたりで,また来週。