巻き返しのときがやってきた、Wear OS by Googleのテコ入れ
Wear OS by Google(以降Wear OS)がようやく本気を出しました。メンテナンスモードだった状態に対して、テコ入れの発表がされました。しかも、Samsungと協力してTizenとWear OSを統合して、新たなWear OSとして出発することになります。
何が起きても不思議ではないIT業界ですが、基盤プラットフォームが統合されるのは非常に珍しいことです。最近は、GoogleとSamsungが協力してAndroidの開発を進めることが多くなりましたが、ここからも蜜月な関係であることがわかります。
これだけでなく、Wear OSにはFitbitの健康管理機能も追加されます。期待高まるWear OSは2021年の後半に製品が登場予定です。
今回から2回に分けて、Wear OS by Googleを取り上げていきます。まずは、Wear OSとTizenを振り返ります。
駆け足で振り返るWear OS
Wear OSは、もともと「Android Wear」という名前でした。名前からもわかるようにAndroidベースのOSで、時計型のウェアラブルデバイス向けに設計されています。
これは、2014年6月に開催されたGoogle I/Oで発表が行われ、3種類の搭載端末「LG G Watch」「Samsung Gear Live」「Moto 360」が発表されました。
LG G Watchは、四角いケースのデザインが特徴で筆者はこれを入手をして使っていました。Samsung Gear Liveは、これ以降はTizen搭載のスマートウォッチを販売しており、いまのGalaxy Watchにつながります。
Moto 360は、エポックメイキングとなったスマートウォッチです。他がデジタル表示の腕時計のデザインを継承する中で、アナログ表示の腕時計に似たデザインを採用し、いまでは当たり前になった円形ディスプレイを最初に搭載したスマートウォッチです。
同じ年に、LG G Watch R、ASUS ZenWatch、Sony SmartWatch 3が登場してスマートウォッチを盛り上げました。2016年ごろからは、いわゆるIT端末を扱うブランド以外からも、Wear OS搭載のスマートウォッチが登場します。
たとえば、高級腕時計ブランドのTAG Heuerは「Connected」というブランドでWear OS搭載の腕時計を販売しています。また、高級ブランドで言えば、ルイ・ヴィトンの「Tambour Horizon」にもWear OSが搭載されています。他にも筆記用具の「Montblanc」やファッションブランドの「MICHAEL KORS」などもスマートウォッチを販売しています。
OSは、Android Wear 2.0が登場する2016年5月までマイナーバージョンアップが続けられました。2018年はリブランドされて「Wer OS by Google」に名称が変わります。これも名前が変わっただけで大きな変化はありません。多くのブランドから搭載スマートウォッチが登場しましたが、この頃になるとSONYやLGからは、新型が出てなかったり、SamsungやHUAWEIのように独自OSの切り替えるメーカーもありました。
駆け足で振り返るTizen
Tizenといえば、NTTドコモがiPhone対抗としてデベロッパーを巻き込み、アプリ開発を行い準備を進めていたものの、iPhoneを取り扱うことになり2014年1月にTizenスマートフォンの導入を中止したことがあります。当時は少し騒ぎになって、筆者は振り回されるデベロッパーのぼやきを聴いた記憶があります。Tizenが悪いわけではありませんが、こうした背景を知っているのでいわく付きに感じてしまいます。
TizenはLinuxベースのOSで、スマートフォンやタブレット、ノートパソコンやスマートテレビで使われることを想定しています。Tizenは、C/C++でもアプリ開発ができますが、HTML5を関連のWeb技術を使ってアプリが開発できます。先で触れたNTTドコモのTizen端末向けアプリもHTML5ベースで進めていたので、導入中止で宙に浮いたアプリをどうにかできないかと、デベロッパは同じ技術でアプリ開発ができる「Firefox OS」に白羽の矢を立てましたが、これも長続きすることはなく、2016年にMozilaは開発を中止します。
多くのTizen搭載のコンシューマ向け機器はSamsungが開発しています。スマートウォッチもSamsungです。
Samsungは、Gear Sを皮切りにS2, S3と続き、Galaxy Watch、Watch Active、Watch Active 2と続き、最新作は、Galaxy Watch 3です。
製品名は、そのときのブランド展開に合わせて変更されていますが、Samsung Gear S2以降は円形ディスプレイを採用して、腕時計らしいデザインを採用し続けています。円形ディスプレイに最適化されたユーザーインターフェイスだけでなく、回転ベゼルを使った操作も客寄せパンダのようなものではなく、小さなが画面をちまちまスワイプするよりも使いやすく実用的です。
今週は、このあたりで、また来週。