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2021年8月第1週3番目のポストは元から存在しない? モバイルOS温故知新

Googleは、次世代OSとなるAndroid 12のベータ3を予定どおりリリースし順調に開発が進んでいます。このベータ3は最終APIと公式SDKが含まれているので、アプリデベロッパは自身のアプリのテストが開始できるようになりました。

このように、例年はGoogleとAppleが秋の新製品リリースに向けてOSの開発を進めていますが、今年は、HUAWEIの「Harmony OS 2」が新たなプラットホームとして加わり、搭載製品を順次リリースしているので、これまでとは違う秋を迎えようとしています。

Harmony OS 2は、米国の経済制裁の影響で、Googleなどを含む米国の技術が使えず、自社端末にGMSを含んだAndroid OSが搭載できないので、代替えとして登場したOSです。現在販売されている端末でHarmony OS 2が搭載されているのは、国内では先日発表された「HUAWEI MatePad 11」「HUAWEI WATCH 3」になります。

Android / iOS以外のモバイルOSが登場するのは久しぶりですが、2010年から2015年ごろまでは、ハード・ソフトともに自社プラットフォームのスマートフォンがいくつか登場して、Android・iOSに続く第3のOSとして多くの話題を提供していました。

この中にはwebOSやTizen、Firefox OSなどがありましたが、どれもモバイルOSとして大成することはありませんでした。

今回はHarmony OS 2が登場のタイミングで、故きを温ねて新しきを知るを機会としてモバイルOSの歴史を振り返ってみます。

不遇な境遇だったwebOS

Palmによって開発されたwebOSは、LinuxとWeb Kitを中核技術としているOSでした。当時としてはモダンな実装でしたが、登場2009年では時期尚早でパフォーマンスに問題を抱えていました。このプラットフォームの立ち上げに失敗したPalmは、経営難に陥り2010年7月にHPに12億ドルで買収されます。

Palmの歴史は買収の歴史とも言えて、1995年にUSRoboticsに買収されて傘下となります。このUSRoboticsは1997年に3Comに買収されたため、Palmは3Comの傘下となります。この後に分社などがありましたが、買収のたびに企業規模が大きくなり成長を続けた栄光があるので、HPに買収された時も好意的なコメントを残していたのが印象的でした。

Palmをとりまく状況は複雑なので、webOSに触れる前に紹介しておきます。

Palmは、自社でハードとソフトを手がけたいましたが、2003年にはハードウェアを扱う会社が「Palm Solutions Group」となり、ソフトウェアを扱う会社が「PalmSource」となり分社化されてます。のちに、Palm Solutions GroupはPalmのブランド名を手に入れて社名もPalmに変更します。取り上げるwebOSは、元ハードウェア部門が開発したOSです。

一方のソフトウェア部門だったPalmSourceは、この当時組み込みブラウザ「NetFront」で席巻していたACCESSが株式を100%取得して子会社化しています。

これでPalm OSはACCESSのものになりましたが、商標権が面倒な所有構造だったために、ACCESSはPalmのブランドを使わなくなり、Palm OSの後継だったOSの名称は「Garnet OS」に変更されPalmの名前がなくなります。

Palm OSは、PalmPilotの時代からハードウェアの進化と歩調を合わせて開発が続けられていました。組み込みOSをベースに開発されたもので、現在のモバイルOSのようなモダンな実装ではありませんでした。当時、筆者もアプリを開発していましたが、ストレージ管理方法がよく知るOSとは異なりカルチャーショックを受けたのと、リソースを可能な限り使わない、割り切った作りと考えをアプリ開発を通じて学びました。

2002年ごろからは、PDAと呼ばれていた携帯端末は携帯電話と統合する試みが行われています。これがいまのスマートフォンに繋がります。

ただ、Palm OSはシングルタスクだったために、チャットの最中に電話がかかってくると接続が切れて会話が途切れてしまう等、Palm OSの弱点を露呈することになります。弱点を解消するために、マルチタスクにもPalm OS 6(Cobalt)が開発されましたが、筆者が知る限りで搭載端末は登場していないはずです。

そしてPalmは、Palm OSではなくwebOSを搭載する「Palm Pre」を2009年に発売します。HPは、スマートフォン市場での生き残りをかけて、このPalmを買収することになりますが、この続きは来週で取り上げます。

今週は、このあたりで、また来週。

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