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ウィズコロナ時代の大学のオンライン授業 〜様々なツールを使った授業設計

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学生の苦労,教員の苦労

授業ごとに使うツールが違っていて大丈夫⁉

一般的に学生は一つの学期の間に複数の授業を履修します。それらの授業間で利用するツールが異なる場合,それぞれのツールに習熟する労力が必要となります。ただ,私が教える学生の大半は情報系の学生です。情報系であるから,それらのコミュニケーションツールを一通り使ってみることが重要であると思います。また,学生自身が解決できないトラブルの場合,教員が対応する必要があります。

一方,情報系以外の学生が主な受講生の場合は,大学が用意している環境を使うほうが望ましいでしょう。そうすると,何か困ったことがあっても大学のサポートが得られるはずですので,自力で解決が難しい問題であってもなんとかなるケースが多いでしょう。

ビデオ配信って大変⁉

あらかじめ講義ビデオを録画し配信する場合,従来の講義資料の作成に加えて,ビデオを撮影する労力が別途必要となります。録画に慣れていない時は,1つの授業の録画にその授業時間の倍以上かかっていました。何度か録画していくうちに円滑に録画できるようになりましたが,それでも私の場合は授業時間の1.5倍程度は録画にかかっています。リアルタイムで配信し,その録画を後で配信するのは対面授業と方法は異なれど,労力的には大差ないでしょう。ただこれも,学生のリアルタイムの反応が見えないため,一方通行になってしまいがちです。

加えて,配信や録画などでは従来の対面の授業とは異なり,教員の環境が問題になる場合があります。私の場合,授業をリアルタイムで配信している時に第二子が泣き出し,その音声も含めて配信されたことがあります。また,ゼミでビデオチャット中に宅配便が届いたりなど,プライベートを垣間見せてしまったことがあります。録画であれば無かったことにしてやり直せますが,リアルタイムでのやり取りの場合は完全に避けることはできません。私自身は仕方ないものとして割り切っています。

オンライン授業の展望

情報系の授業の中でもプログラミング演習科目は,オンライン授業であっても様々な開発ツールを利用できます。また,自作のツールと組み合わせて特色を出すこともできるでしょう。ここでは,プログラミング演習科目のオンライン化に絞って考えを述べていきます。

プログラミング環境をBYOD環境で構築すると学生間で微妙な差異が出てきます。GitHub Codespaces昨年5月にリリースされていますので,今日ではこれを利用できるでしょう。これはVisual Studio Codeのブラウザ版の全機能が利用でき,いつでも演習環境に接続・中断が可能になります。ただし,まだパブリックベータであるためか,GitHub classroomでは利用できず,代わりにRepl.itMicrosoft MakeCodeの2つのオンラインエディタのいずれかを利用することになります。gitの操作に慣れない学生には,オンラインエディタを利用してもらい,gitの操作に慣れた学生や,git操作の学習も行う場合は,オンラインのエディタを使わない,という選択になりそうです。

昨年の3月にGitHub classroomにおいて,宿題の自動採点やインラインフィードバックが可能なツールが発表されました。このツールを利用すればプログラムの評価の多くを自動化できそうです。これはGitHub Actionsを使って実現していますが,GitHub Actionsのようなワークフローを自分で書く必要がないようになっています。もちろん,課題の元のリポジトリでGitHub Actionsのワークフローを書いておくと,より複雑な処理も可能となります。ただし,私が担当するような初心者向けの演習科目(短いプログラムをたくさん書くことを目指す)では,数多くのリポジトリを用意しなければならないため,準備が大変であるという問題もあります。

大阪大学では,プログラムの正しさだけではなく,品質にも目を向けてもらえるように,実績可視化システムを利用した授業があるそうです。このシステムはゲームなどで利用されている実績という形式を採用しており,メトリクス値が規定値を達すれば(下回れば)実績を解除します。これにより正しいプログラムを書くだけでなく,プログラムの品質を高めるモチベーションも与えています。

また,従来から演習科目の最終課題に対しては,2つの自作ツール,pochi9rulesを少し修正して適用し,コピー&ペーストチェックとプログラムの品質チェックを行っています。pochiはJavaクラスファイルの類似度を算出することでソフトウェアの盗用を検出するツールであり,9rulesは ThoughtWorksアンソロジーの第5章で紹介されているオブジェクト指向エクササイズを検査するツールです。先程述べた実績可視化システムやこれらのツールをGitHub Actions上のアクションとして提供すれば,GitHub classroomでも利用できるようになります。これらのチェックが自動的に行え,結果が学生にフィードバックされると,プログラムが得意な学生の良い発奮材料になると期待できます。

まとめ

このコロナ禍により,学会もオンラインで実施されるようになり,交通費や宿泊費が不要となりました。さらに学会参加費も値下がりしたため,国際会議であっても気軽に参加できるようになったメリットもあります。

一方でオンラインの学会では,雑談が非常に難しくなった点が非常に大きなデメリットであると個人的に思います。私のこれまでの研究のアイデアの多くは,このような場での雑談から生まれています。オンラインの雑談だと議論が深まることもなく,あっさり終わってしまう点が寂しく思います。

たわいない会話から交流が深まることは皆さんも経験があるのではないでしょうか。オンライン授業を受ける学生も同じような気持ちなのかもしれません。コロナの流行が落ち着き,オンラインとオフラインを上手い具合に併用できるような世の中になりますように。

著者プロフィール

玉田春昭(たまだはるあき)

京都産業大学 情報理工学 准教授。
ソフトウェア工学,ソフトウェア保護の研究。特に,プログラムの読みやすさ評価やソフトウェアの盗用検出の研究を行なっている。

GitHub:tamada
URL:https://tamada.github.io/, https://tamadalab.github.io/

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