明確な目標よりも大事なもの
皆さんそれぞれ仕事を持っていて,日々その仕事に取り組んでいますが,日々の仕事に追われる一方,自分のやりたいことがなかなか見つからず,焦ったり不安を感じたりしている人も中にはいらっしゃると思います。最近は,むしろこちらのタイプの人の方が実は多いのではないかと感じるようになっています。
私はキャリアアドバイザーという立場でこれまで約1,000人のエンジニアの方々と接してきましたが,明確な目標があり計画立ててスキルアップを進めている方は少なかったように感じます。多くは自分は何を目指せばよいのか,どのようにキャリアアップしていけばいいのかなど,少なからず将来に対して悩みを持っている方です。
棚卸しのポイント-自分の気持ちを大切に
このような状態にあるとき多くの方に共通していることが,徐々にわかってきました。それは,先のことを考えるあまり現在の自分を見失っているということです。多くのカウンセラーが,よく「自分の棚卸しをしましょう」と言うのを耳にされるかと思いますが,これは非常に大切なことで,自分自身を客観的に見て現在の状態を把握する重要な作業です。
それでは,棚卸しする際にどのようなことを見て行けばよいのかというと,まず次のような点が挙げられます。
まずこれを把握することが最初に行う作業になります。自分の武器となるものは何なのか,どのような部分が成長できたのか,ということを理解するのですが,それだけではなく次に考えるべき大切なポイントがあります。
- その仕事で楽しみ(やりがい)を感じる部分はどのようなことだったか
- その仕事で何か違うなと感じる部分はどのようなことだったか
この2つの作業が非常に重要です。今まで経験してきた仕事で得たスキルを把握して,今後身につけるべきスキルをただ単に考えるのではなく,自分がその仕事を通じて何を感じたかということを整理することで,進みたい方向の判断基準ができてきます。
ここまでの棚卸しをせずに,スキル面のみで今までの仕事とこれからやるべき仕事を判断して先に進むと,自分で決めたことなのになんとなくやらされている感覚が生じて,結果後悔することも多いと思います。それは棚卸しの際に自分の感情が加味されていないからです。
それでは,次章で筆者の経験を交えた事例を見ていきまよう。