この連載で今まで紹介してきたアナログツールの中に,カレンダーが無かったことに気づいてる方もいるかと思います。筆者が使っているHipster PDA,モレスキン,モレスキン・メモポケッツと,どれもスケジュールを管理するカレンダーを備えていません。筆者は現在,スケジュール管理をトラベラーズノートという手帳で行っています。
今回は,モレスキンとの比較などを交えながら,トラベラーズノートを紹介します。
トラベラーズノートというノート=手帳
トラベラーズノートは,(株)デザインフィルが,ミドリというブランドで販売している「ノート=手帳」です。タイ製の,柔らかい革一枚で,ノート型のリフィルを包むようなシンプルな仕組みとなっています。リフィルとは,21cm×11cmのA5変形ノートです。罫線,無地,方眼などのノートをはじめ,日記,ダイアリーなどもあります。リフィルをはさんだ本体は,細いゴムバンドを横にかけて,ノートが開かないようになっています。
大きさは約22cm×約12cm,モレスキンで言えば,ラージサイズ(21cm×13cm)程度,A4を三折りにしたものがちょうど入るサイズです。
色は黒と茶の二色。茶色が人気のようですが,筆者は黒を使っています。
革の手触りがよくて,筆者の感覚では実に「色っぽい」手帳です。
トラベラーズノート,奥に見えるのはザウルス
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リフィルが色々とありますが,これはホームページでも見ていただくとして,筆者は,2008月間ダイアリーと,セクションリフィルの2冊をセットしています。月間ダイアリーは,見開きで月間カレンダータイプ,セクションリフィルは,5mm方眼のノートとなっています。それぞれでスケジュール管理,ユビキタス・キャプチャーをしています。
ちなみに月間ダイアリーは,本体のゴムに通して,簡単に本体から外れないようにしていますが,セクションリフィルは本体に挟むだけにします。これは,仕事中にセクションリフィルのみを本体から外して,机上に置いているためです。このことの意味については後程説明します。
さらにジッパーケースというリフィルをはさんでいます。これはモレスキンでいうポケットの役割をしますが,透明なのでブラックボックス化することがなく便利です。お札やEdyカードを入れると財布になりますし,ペンや定規,旅行の際の切符,買物のレシートなどを入れています。
堅いモレスキン,柔らかいトラベラーズノート
トラベラーズノートは,本体が柔らかい革でできているため,加工することが容易です。堅いモレスキンに対して,柔らかいトラベラーズノートと言えるでしょう。
様々なユーザーのブログを覗きますと,個性豊かにカスタマイズをほどこした使用例があって,それを眺めるのも楽しいものです。このカスタマイズのしやすさは,モレスキンにはない特色です。
ミドリのホームページには,パトリック(Patrick Ng)という方の,素晴らしい使用例があります。GTDも,トラベラーズノートで実践しているこの使用例を見て,筆者は購入を決めたようなものです。
また,薄いリフィルを組み合わせるという仕組みも「柔らかい」と言えます。
基本はリフィル1冊~3冊で構成するのが普通ですが,リフィル4冊をセットする方法なども,先程紹介しましたプロフェッショナルユーザーのパトリックが公開しています。
リフィル1冊あたりのページ数が多くないので,それらを組み合わせることで,それぞれのリフィルに目的を持たせて使用することが可能です。たとえば,無地のリフィルを旅行専用にして,普段は外して保管しておくといった使い方が考えられるでしょう。
トラベラーズノートという名前の通り,旅をコンセプトに作られたノートということもあって,リフィル1冊で1つの旅,といった使用方法を想定しているように思われます。
筆者が,モレスキンだけではなくトラベラーズノートも使うようになったのは,もちろん,その革のtextureも気に入った点なのですが,その広さが大きなポイントでした。
予定がぎっしり詰まっているわけではない私は,月間ダイアリーの一覧性の高さと,紙面の広さでトラベラーズノートを選びました。モレスキンやザウルスのカレンダーは,やはり小さいと感じたのです。
さすがにスーツのポケットなどで携帯するには,トラベラーズノートは大き過ぎます。しかし,通勤ではカバンに入れ,職場ではデスクワーク中心ですので,あまり問題とはなっていません。この辺り,個々の事情でツールの選択肢は変わってくるでしょう。
トラベラーズノートでユビキタス・キャプチャー
連載の第4回で紹介した,ユビキタス・キャプチャーの基本は,1冊のノートで行います。しかし,筆者はモレスキンとトラベラーズノートの2冊使いを実践しています。
2冊使うのは一種禁じ手のようなものですが,この場合大事なのは,使い分ける場面をはっきり分けておくことです。そうすることで,どちらに情報があるかすぐに判断できます。
筆者は職場ではトラベラーズノート,自宅や休日はモレスキンという使い分けをしています。
先ほども述べましたが,職場では,トラベラーズノート本体から,セクションリフィルだけを外して机上に置いています。そして,何か思いついたらすぐにメモ,さらに重要なアイデア等であれば「□i」と記入しておき,後でモレスキンに転記します。
平日職場では,トラベラーズノートでスケジュール管理とユビキタス・キャプチャーをする。自宅および休日は,モレスキンでユビキタス・キャプチャーをする,といった使い分けとなっています。
こうすることで,平日の出勤時は,トラベラーズノートだけを持って行けばいいわけです。この荷物を減らせるというのが,トラベラーズノートでユビキタス・キャプチャーをやる大きな理由です。
「超」整理手帳の手帳術を応用する
筆者はトラベラーズノートの活用法として,リフィル差し込み,本体の縦の長さなど,類似点の多い「超」整理手帳の活用法を参考にしています。
「超」整理手帳は,野口悠紀雄氏が考案し,販売されている手帳です。独特の細長い形や使い方などが個性的ですが,この「超」整理手帳の使い方の多くはトラベラーズノートに応用可能です。
まず「超」整理手帳は,A4サイズの書類を四折りで保管できますが,トラベラーズノートの場合は,A4三折りではさみこむことができます。あらかじめテンプレートをあちこちに準備しておくと,簡単に三折りにすることができるでしょう。
リフィルを1~2冊程度にしぼっておけば,かなり多くのA4書類を挟み込むことができ,仕事でも便利に使えます。
また,「超」整理手帳では「母艦(マザーシップ)方式」と言って,手帳にセットされているリフィルを,必要な時に必要なものだけ,本体から外して使うやり方がありますが,もちろんこれもトラベラーズノートで実践可能です。筆者は,職場では本体からセクションリフィルだけを「出撃」させて机上に置いておき,ユビキタス・キャプチャーをしています。
このセクションリフィルだけだと,スーツの内ポケットにもすんなり入りますので,打ち合わせなどに持ち運ぶことができます。
トラベラーズノートはまだ新しく若い手帳ですから,独自の手帳術といったものはこれから充実化されるでしょう。そこが,ユーザーにとっては工夫のしがいがある,おもしろい点となっていると思います。
次回はいよいよこの連載も最後です。
連載のまとめとして,筆者のアナログツールの現状と,その考え方について説明しようと考えています。