引き続き、次世代のWebブラウザを取り上げていきます。今回は、デスクトップ版も存在する「Firefox」を取り上げます。
激動歴史を持つFirefox
Firefoxは、Internet Explorerからの代替えブラウザの有力候補でしたが、Google ChromeがWeb技術の潮流を素早く取り込み、また、凄まじい勢いで進化をした結果、Firefoxと変わらない程のシェアを得るようになり、代替えブラウザの一番座をFirefoxから失いつつあります。
モバイル用も歴史が長い
モバイル用のFirefoxは、デスクトップほどの激動史を持ちませんが、モバイルブラウザの黎明期から積極的に取り組んでいたものの、Androidケータイで使えるようになるまでは、随分時間がかかりました。
また、モバイル用のFirefoxは、はっきりとした世代分けができるほどの進化があります。
初代は、Firefoxではなく「Fennec」としてリリースされています。これは、2007年11月に発売された、NOKIAのインターネット端末「N810」向けに開発されたもので、2009年3月17日に、Fennec 1.0のβ1が公開されています。この頃は、デスクトップと同じレイアウトで、Webページが閲覧できるモバイルの用ブラウザは、iPhoneのWebブラウザくらいだったので、驚きを持って迎え入れられました。
Fennecは、Android向けにも「Firefox 4 Beta 1 for Android」として2010年10月にリリースされています。このFirefoxは、画面を左にスワイプすると、タブが表示され、右にスワイプすると、進む/戻る、お気に入りへの登録ボタンなどが表示されて、タッチパネルを活かしたユーザインターフェースが特徴でした。筆者は、このユーザインターフェースが非常に気に入っていたので、現在のFirefoxではなくなっているのは残念に思っています。
現在のFirefox 14は、二世代目と言え、初代から大きな変貌を遂げています。
たとえば、デスクトップ版のFirefoxとブックマーク、履歴、タブ、パスワードが同期できる「Firefox Sync」、選択肢は少ないものの、ブラウザを自分好みに拡張できる「アドオン」機能などを備えています。また、ユーザインターフェースもデスクトップのFirefoxユーザが多くの学習時間を割くことなく、使いこなせるよう見直しがされています。初代が持っていたユニークさは薄まりましたが、より多くの人に受け入れられるWebブラウザに進化したと言えます。
前振りが長くなりましたが、Firefoxの性能試験結果をお伝えします。
JavaScriptベンチマーク
Android 4.1.1とFirefox 14での計測結果
- SunSpider JavaScript Benchmark - Total : 2705.3ms
- V8 Benchmark Suite - Score : 437
- Kraken JavaScript Benchmark Results - Total : 53372.8ms
Android 4.1.1と標準ブラウザでの計測結果
- SunSpider JavaScript Benchmark - Total : 2827.0ms
- V8 Benchmark Suite - Score : 897
- Kraken JavaScript Benchmark Results - Total : 44337.8ms
結果を順に見ていきます。
SunSpider JavaScript Benchmarkは、値が小さい程高速です。これの結果は、誤差と言っても良い程の差です。V8 Benchmark Suiteは、値が大きい程高速で、標準ブラウザの方が良い結果になっています。結果は、2倍以上の差があるのでテスト項目を個別に見ていきます。
Firefox 14
- Richards : 897
- DeltaBlue : 631
- Crypto : 799
- RayTrace : 203
- EarleyBoyer : 576
- Splay : 1193
- NavierStokes : 639
標準ブラウザ
- Richards : 1227
- DeltaBlue : 1311
- Crypto : 1701
- RayTrace : 1014
- EarleyBoyer : 1704
- Splay : 570
- NavierStokes : 491
個別のテスト結果を見ていくと結構な差があり、傾向が見られるので、V8 Benchmark Suiteは、GoogleのJavaScriptエンジン「V8」に最適化されており、FirefoxのJavaScriptエンジン「JagerMonkey (イェガーモンキー)」にとっては、苦手な試験となっているのかもしれません。
Kraken JavaScript Benchmark Resultsは、値が小さい程高速ですが、数値情報は1.2倍程度の差ですが、この程度の差であれば、体感できる程の差ではありません。
HTML5ベンチマーク
Android 4.1.1とFirefox 14での計測結果
- PEACEKEEPER - 計測できず。
- html5test - Score : 311
Android 4.1.1と標準ブラウザでの計測結果
- PEACEKEEPER - Total : 321
- html5test - Score : 281
結果を見ていきます。
PEACEKEEPERは、試験に使っているNexus Sでは、試験実行中に、Firefoxが強制終了してしまい計測ができませんでした。何度試しても、同じテスト項目で強制終了するので、メモリ不足に陥っているのかもしれません。html5testは、値が大きいほどよい結果です。標準ブラウザと比較すると、FirefoxのほうがHTML5への準拠度合いが高いと言えますが、使っている限り顕著な違いはありません。
PCのブラウザがFirefoxであれば、オススメ
試験結果を数字で比較すると標準ブラウザより見劣りしますが、実際使ってみると快適に動作します。デスクトップ版のFirefoxとブックマーク、履歴、タブ、パスワードが同期できる「Firefox Sync」は魅力的な機能となるでしょうし、同じような感覚で使えるユーザーインターフェースも評価できます。デスクトップのWebブラウザもFirefoxを使っているのであれば、Firefoxはオススメです。