Androidケータイの歩き方

第84回出揃った次世代のWebブラウザたちを評価する(4)

引き続き、次世代のWebブラウザを取り上げていきます。今回は、デスクトップ版も存在する「Firefox」を取り上げます。

激動歴史を持つFirefox

Firefoxは、Internet Explorerからの代替えブラウザの有力候補でしたが、Google ChromeがWeb技術の潮流を素早く取り込み、また、凄まじい勢いで進化をした結果、Firefoxと変わらない程のシェアを得るようになり、代替えブラウザの一番座をFirefoxから失いつつあります。

モバイル用も歴史が長い

モバイル用のFirefoxは、デスクトップほどの激動史を持ちませんが、モバイルブラウザの黎明期から積極的に取り組んでいたものの、Androidケータイで使えるようになるまでは、随分時間がかかりました。

また、モバイル用のFirefoxは、はっきりとした世代分けができるほどの進化があります。

初代は、Firefoxではなく「Fennec」としてリリースされています。これは、2007年11月に発売された、NOKIAのインターネット端末「N810」向けに開発されたもので、2009年3月17日に、Fennec 1.0のβ1が公開されています。この頃は、デスクトップと同じレイアウトで、Webページが閲覧できるモバイルの用ブラウザは、iPhoneのWebブラウザくらいだったので、驚きを持って迎え入れられました。

Fennecは、Android向けにも「Firefox 4 Beta 1 for Android」として2010年10月にリリースされています。このFirefoxは、画面を左にスワイプすると、タブが表示され、右にスワイプすると、進む/戻る、お気に入りへの登録ボタンなどが表示されて、タッチパネルを活かしたユーザインターフェースが特徴でした。筆者は、このユーザインターフェースが非常に気に入っていたので、現在のFirefoxではなくなっているのは残念に思っています。

現在のFirefox 14は、二世代目と言え、初代から大きな変貌を遂げています。

たとえば、デスクトップ版のFirefoxとブックマーク、履歴、タブ、パスワードが同期できる「Firefox Sync⁠⁠、選択肢は少ないものの、ブラウザを自分好みに拡張できる「アドオン」機能などを備えています。また、ユーザインターフェースもデスクトップのFirefoxユーザが多くの学習時間を割くことなく、使いこなせるよう見直しがされています。初代が持っていたユニークさは薄まりましたが、より多くの人に受け入れられるWebブラウザに進化したと言えます。

Firefox 14は、第二世代目のモバイル用Fireofxと言える
Firefox 14は、第二世代目のモバイル用Fireofxと言える

前振りが長くなりましたが、Firefoxの性能試験結果をお伝えします。

JavaScriptベンチマーク

Android 4.1.1とFirefox 14での計測結果

  • SunSpider JavaScript Benchmark - Total : 2705.3ms
  • V8 Benchmark Suite - Score : 437
  • Kraken JavaScript Benchmark Results - Total : 53372.8ms

Android 4.1.1と標準ブラウザでの計測結果

  • SunSpider JavaScript Benchmark - Total : 2827.0ms
  • V8 Benchmark Suite - Score : 897
  • Kraken JavaScript Benchmark Results - Total : 44337.8ms

結果を順に見ていきます。

SunSpider JavaScript Benchmarkは、値が小さい程高速です。これの結果は、誤差と言っても良い程の差です。V8 Benchmark Suiteは、値が大きい程高速で、標準ブラウザの方が良い結果になっています。結果は、2倍以上の差があるのでテスト項目を個別に見ていきます。

Firefox 14

  • Richards : 897
  • DeltaBlue : 631
  • Crypto : 799
  • RayTrace : 203
  • EarleyBoyer : 576
  • Splay : 1193
  • NavierStokes : 639

標準ブラウザ

  • Richards : 1227
  • DeltaBlue : 1311
  • Crypto : 1701
  • RayTrace : 1014
  • EarleyBoyer : 1704
  • Splay : 570
  • NavierStokes : 491

個別のテスト結果を見ていくと結構な差があり、傾向が見られるので、V8 Benchmark Suiteは、GoogleのJavaScriptエンジン「V8」に最適化されており、FirefoxのJavaScriptエンジン「JagerMonkey (イェガーモンキー)」にとっては、苦手な試験となっているのかもしれません。

Kraken JavaScript Benchmark Resultsは、値が小さい程高速ですが、数値情報は1.2倍程度の差ですが、この程度の差であれば、体感できる程の差ではありません。

HTML5ベンチマーク

Android 4.1.1とFirefox 14での計測結果

  • PEACEKEEPER - 計測できず。
  • html5test - Score : 311

Android 4.1.1と標準ブラウザでの計測結果

  • PEACEKEEPER - Total : 321
  • html5test - Score : 281

結果を見ていきます。

PEACEKEEPERは、試験に使っているNexus Sでは、試験実行中に、Firefoxが強制終了してしまい計測ができませんでした。何度試しても、同じテスト項目で強制終了するので、メモリ不足に陥っているのかもしれません。html5testは、値が大きいほどよい結果です。標準ブラウザと比較すると、FirefoxのほうがHTML5への準拠度合いが高いと言えますが、使っている限り顕著な違いはありません。

html5testを実行した様子
html5testを実行した様子

PCのブラウザがFirefoxであれば、オススメ

試験結果を数字で比較すると標準ブラウザより見劣りしますが、実際使ってみると快適に動作します。デスクトップ版のFirefoxとブックマーク、履歴、タブ、パスワードが同期できる「Firefox Sync」は魅力的な機能となるでしょうし、同じような感覚で使えるユーザーインターフェースも評価できます。デスクトップのWebブラウザもFirefoxを使っているのであれば、Firefoxはオススメです。

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