今回は、前回ご紹介できなかったOpera Mobileの性能試験の結果をご紹介します。
独自のエンジンを搭載する
詳しい内容に入る前に、Opera MobileのHTMLレンダリングエンジンを簡単にご紹介します。
標準ブラウザのHTMLレンダリングエンジンは、「WebKit」が使われているのに対して、Opera Mobileは、Opera Softwareが独自に開発をしたHTMLレンダリングエンジン「Presto」が使われています。このエンジンは、デスクトップのOperaと同じものです。このPrestoは、W3Cが定めた標準規格と互換性が高かったり、Web標準にどれだけ従っているかをテストする「Acid3」に一番乗りで合格したりと、素性の良さは折り紙つきのHTMLレンダリングエンジンです。もうひとつのJavaScriptエンジンは、「Carakan」と呼ばれるエンジンが搭載されており、これもOpera Softwareが開発したものです。
それでは、このエンジン達の性能をいつものように、JavaScriptとHTML5に分けてで見ていきます。
JavaScriptベンチマーク
Android 4.1.1とOpera Mobileでの計測結果
- SunSpider JavaScript Benchmark - Total : 3798.6ms
- V8 Benchmark Suite - Score : 316
- Kraken JavaScript Benchmark Results - 計測できず
Android 4.1.1と標準ブラウザでの計測結果(参考)
- SunSpider JavaScript Benchmark - Total : 2827.0ms
- V8 Benchmark Suite - Score : 897
- Kraken JavaScript Benchmark Results - Total : 44337.8ms
結果を順に見ていきます。
SunSpider JavaScript Benchmarkは値が小さいほど高速です。結果を見ると、標準ブラウザのほうが30%ほど速い結果となっています。体感するのが難しいくらいの差ですが、標準ブラウザのほうが高速です。
V8 Benchmark Suiteは値が大きいほ高速で、標準ブラウザのほうが良い結果になっています。結果は3倍近い開きがあるので、テスト項目を個別に見ていきます。
Opera Mobile
- Richards : 455
- DeltaBlue : 249
- Crypto : 490
- RayTrace : 293
- EarleyBoyer : 404
- Splay : 109
- NavierStokes : 381
標準ブラウザ
- Richards : 1227
- DeltaBlue : 1311
- Crypto : 1701
- RayTrace : 1014
- EarleyBoyer : 1704
- Splay : 570
- NavierStokes : 491
Opera Mobileは、NavierStokes以外、いずれも振るわない結果です。
これだけの違いがあると比較して傾向を見るような差ではありませんし、V8 Benchmark Suiteに最適化されている・されていないを論じるような結果でもありません。
Opera 12に搭載されているJavaScriptエンジンは、従来のエンジンよりも実行速度が向上したとされています。このエンジンがOpera Mobileにも搭載されているとすれば、もう少し見栄えのする結果が残っても良さそうですが、標準ブラウザに搭載されているV8 JavaScriptエンジンのほうが、格段に優秀なようです。Kraken JavaScript Benchmark Resultsは、計測を終了することができず、途中でブラウザが強制終了する結果となりました。
HTML 5ベンチマーク
Android 4.1.1とOpera Mobileでの計測結果
- PEACEKEEPER - 計測できず。
- html5test - Score : 369
Android 4.1.1と標準ブラウザでの計測結果(参考)
- PEACEKEEPER - Total : 321
- html5test - Score : 281
それでは、こちらも結果を見ていきます。
PEACEKEEPERは、試験実行中にOpera Mobileが強制終了してしまい、結果を計測できませんでした。
html5testは、値が大きいほど良い結果です。参考値として、標準ブラウザの結果は281で、Firefoxの結果が311となっており、Opera Mobileが最も良い結果となっています。冒頭でも取り上げたように、Web標準仕様に準拠するよう長年努力している結果が現れていると言えます。
独自機能と高いレイアウト再現性が魅力
JavaScriptベンチマークは、標準ブラウザと比較しても振るわないので、JavaScriptを多用したWebサイトを見るには、不向きなWebブラウザと言えます。
では、魅力的がないかと言えばそうではなく、ブックマークやスピードダイヤルをOperaのサーバに保管できる「Opera Link」は、複数端末を所有している場合は同期に使えます。また、トラブルで端末が使えない場合でも代替え端末に簡単に復旧できます。また、前回取り上げたように、レイアウトの再現性の高さは他のブラウザを圧倒しており、html5testも良好な結果を残してえいます。こうした部分に魅力を感じるのであれば、Opera Mobileを使ってみるのも良いでしょう。