Androidケータイの歩き方

第87回出揃った次世代のWebブラウザたちを評価する(6)

今回は、Dolphin Browserを取り上げます。

Dolphin Browserは、Google ChromeやFirefoxが登場する以前の2009年10月にリリースされており、歴史あるWebブラウザです。古くからAndroidケータイをお使いであれば、使ったことがある方も多いはずです。

評価するのは「Dolphin Browser Beta」

そのDolphin Browserは、スマートフォンをターゲットにした「Dolphin Browser」の他に、機能を絞り込みアプリサイズを1MBまでにダイエットした「Dolphin Browser Mini⁠⁠、タブレット向けに最適化された「Dolphin Browser for Pad」の三種類がリリースされています。

評価するのは、これらではなく「Dolphin Browser Beta」です。

β版を評価する理由は、⁠Dolphin Engine」と呼ぶHTMLレンダリングエンジンが搭載されているからです。これは、標準WebブラウザやGoogle Chromeでも使われているHTMLレンダリングエンジン「Webkit」ですが、Dolphin Browserの開発元であるMoboTap社が独自に改良を加えています。

その結果、標準Webブラウザと比較して10倍、Chrome for Android Betaと比較しても二倍速いとしています。二倍も速くなれば、体感できる程の違いですが、10倍となればケタ違いです。10倍速いとうたうMoboTapの自信作が最近のWebブラウザ達と比較して、どの程度の性能差になるのかを見ていきます。

Dolphin Browser Betaのリリース当初は、対応OSがAndroid 2.3に限られ、同社のブログ経由での配布でしたが、現在は、Playストアからダウンロードできるようになっており、Android 4.1.1でも動作します。

筆者のブログを表意している様子
筆者のブログを表意している様子

スパイウェア疑惑騒動

取り上げるべきか悩みましたが、避けないほうが良いと考えたので、あえて取り上げます。

1年程前の2011年10月25日に、Dolphin Browserに、スパイウェア疑惑が持ち上がりました。多くのニュースサイトを賑わせたので、記憶している方も多いはずです。

疑惑の内容は、当時最新版であったDolphin HD 7.0が「Toggle Webzine」のために、Web閲覧履歴などの情報をサーバへ送信していたというものです。この情報送信が発覚した後、開発元のMobaTap社は、サーバへ送信した情報は保管されることはなく、悪意のある取得ではないこと、また、目的以外には使用していないと表明しています。また、同月の29日に、問題となった機能を削除したDolphin Browserを公開しています。

なかったことに……とは言えないが

スパイウェア疑惑発覚から、1年近くが経過しているので事態は沈静化しています。

この1件をどう受け止めるかは、使う側次第とも言えます。

筆者は、真摯に対応していると感じましたし、その後も素晴らしいWebブラウザを無償で提供し続けているので、開発元の配慮不足で発生した事態ではないかと考えいます。

レンダリングの性能

さて、前振りが長くなりましたが、本題に入ります。

先でも触れたように、Dolphin Browserは、⁠Webkit」に独自の改良が加えられています。この改良がWebページのレイアウトに影響を与えることがないのか、筆者のブログを使って、標準Webブラウザ、Google Chromeのレイアウト結果と比較をしてみます。

まずは、標準Webブラウザからです。

筆者のブログは、2カラムで構成されていますが、エントリが表示されるメインカラムの幅いっぱいにテキストが表示されず、途中で折り返されて余白ができています。これは、意図したレイアウトではありません。

標準ブラウザでのレイアウト結果
標準ブラウザでのレイアウト結果

次は、Google Chromeです。

標準Webブラウザで見られた、メインカラムの余白はなく、カラムの幅いっぱいにテキストが表示されており、意図したレイアウトで表示されています。

Google Chromeでのレイアウト結果
Google Chromeでのレイアウト結果

最後は、Dolphin Browserです。

標準Webブラウザと同じで、メインカラムの幅いっぱいにテキストが表示されず、途中で折り返されて余白ができています。

Dolphin Browserでのレイアウト結果
Dolphin Browserでのレイアウト結果

同じHTMLレンダリングエンジンを使うので、似た傾向が出ると推測していましたが、Google Chromeだけ異なる結果となりました。

多くのWebページで確認したワケではないので、結論付けるのは早計かもしれませんが、Dolphin Browserだけがひどいレイアウトで表示されるワケではないので、Dolphin Engineの独自改良がレイアウト能力に影響していることはないと考えられます。

次回は、性能計測の結果を取り上げます

次回は、毎回行っている性能計測の結果をご紹介します。

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