山は緑のアイスクリームのてんこ盛り
桜の花が終わって、気温がぐんぐん高くなってくると、山の木々達…広葉樹と針葉樹が適度に入り交じって、そう、できれば広葉樹の割合が少し多い目が良いかな…は「待ってました」とばかり新芽をふくらませていきます。
遠くから眺めていると緑のドームが日に日に大きくなっていくようです。
一歩、森の中に足を踏み入れてみれば、上から緑の光が降りそそぎ、目の前には手ですくい取ることが出来そうに湿気をおびた空気が漂い、足下からは実生のドングリや、爆発的に育っていく夏草の息吹が立ち上っててきます。
風にのって、葉の裏の白いところをキラキラさせながら「おいで、おいで」している森の声にのって、気分がのってきて、「それでは」と、自転車にのってでかけました。
山梨県・笹子峠 国土地理院五万図『都留』
JR中央線・笹子駅~(2km)甲州街道旧道~(3km)矢立の杉~(1.5km)笹子峠(旧笹子トンネル)~(6km)甲斐大和
このコースは、自転車ツーリングで初めて走った峠です。久々の「徒然走稿」第一回[1]は、初心に返って笹子峠に行きましょう。
いつもは東京・日野市の自宅からJR中央線・笹子駅まで輪行[2]します。
が、この日はえらく陽気な陽気に誘われて、甲州街道を西へ西へと自走[3]です。
大垂水峠[4]の辺りからダンプ、トラック、トレーラーが増えはじめて、こちらは川、あちらは山に囲まれ、広くなれない甲州街道を舞台に彼らとの戦いが始まりました。
トラック、ダンプの方々もバイクや自転車に慣れているんでしょうね。狭いところでトラック同士が対向し、路肩に私がいるというのにちっともスピードを緩めません。緩めるどころか加速して追い抜いていきます。肩のあたりを車輪がすれすれに通っていく、この気分たらありません。笹子駅に着いたときにはくたびれ果て果てです。
やはり、輪行すれば良かった。
気分を取り直してのスタートはJR中央線・笹子駅。
駅からしばらくは現役甲州街道を走ることになります。だらだらと上り坂、この辺りもともかく大型車が多いから、ここはあせらず、ゆっくりと。
右手にコンビニが見えてきたら旧道入口の目印。旧道に入ってしまえばお店は皆無(峠茶屋跡の立て札があるくらい)です。ここで食料を仕込んでおきましょう。
橋を渡って左に。
旧道!旧道です。
もう、トラックもダンプもいません。
風が気持ちよい、小鳥たちの声が気持ちよい、日差しが、新緑が心地よい。
これで登りじゃあなかったら天国なのですけどね。
でも、自転車ツーリングは登りがあるから面白い…と、何年かやっていると思うようになります。
笹子峠に限ったことではありませんが、旧道とは言ってもまったく車が来ないわけではありません。バイクのツーリスト、山菜採りのおっさん、二人っきりになりたい二人組などなどの車とポツポツとすれ違ったり追い越されたり。見通しの悪いカーブでは気をつけましょう。
「ああ、しんどいな」「休もうかな」と思ったら即休んで、「降りて押そうかな」と思ったら即降りて押して、峠までは5km弱、歩こうが休もうが2時間はかからない…よしんば、かかったところで、峠の先は下りです。急ぐより、今を楽しむ、、、というか楽することが肝心。
そうこうする内に「矢立の杉」。
戦陣に向かう武士達が矢を立てて武運を祈ったという巨木です。
内側は枯れて虚になっていて、根本の穴から2~3人内側にはいることが出来るくらいの大きな木、一見の価値ありです。ベンチも東屋もあるから、ここで食事、お茶を楽しんで、さあ出発。
さあ!といっても、ここから峠はもうすぐそこ。
旧笹子トンネルの東側(南側といってもいいけど)は赤煉瓦造りでちとモダン。内部は真っ暗ですから、明るい内に帰宅する予定でいても、ここのために電装[5]は準備しておいたほうがいい、って、私は忘れていったんだけど。
トンネルを抜けた左の斜面に「笹子峠」への案内があります。
看板を見れば峠まではすぐですから、自転車を置いて登山道を登ってみました。
地面には落ち葉、木々もまだ芽吹き始めたばかり。
峠の春はこれから、といった寂しい風景でしたが、途中に神社があったりして、実に峠らしい峠です。向こう側から旅姿の浪人や侠客がやってきそうな…。
雰囲気をたっぷり味わって、さて、お待ちかねの下りです。
ヘアピンカーブの続く坂道を甲斐大和[6]に向かって下っていけば、山間の集落にはまだまだ桜の花が残っていました。