多摩よこやまの道の道を走った。
このコースは尾根上に延びているので,
とはいえ,
お昼の場所はコース中程にある小さな公園の小さな芝生広場の上。
自前のお握りと,
角煮の味付けが少し甘くてくどいけど,
まだ,
秋口から春先にかけての自転車旅にワンバーナーは欠かせない。北風で冷え切った体を,
お湯を沸かしている火を見ているだけでも和まされる。人はプロメテウスに感謝なくてはいけない。
故に,
ワンバーナー,
高校生だった私には無論のことながら暇はあっても金はなく,
しかし車内と駅舎に寝ることに限定してしまうと行ける範囲が狭くなる。そこでテント泊も可能にしたいと思った。
アウトドアなどという言葉も聞かなかった時代,
幸いなことに親戚が大学山岳部の顧問していたので,
このストーヴ,
これらをザックに詰めて車中の人になる。
どうみてもバックパッカーには見えない。実際に車中で
周遊券では急行列車までしか乗れないから
この旅の間,
このストーヴというのは,
本体を組み立て,
口で言っても簡単じゃあないけれど,
しかし慣れてしまえば,
札幌や稚内の駅前でインスタントラーメンを作っていると,
夏でも冷え込む誰もいない網走駅ではストーヴの火が何よりのご馳走だった。
阿寒湖では,
この旅で ,
白老で食べたスープスパゲッティだ。
旅にあたって,
重かったから早く食べてしまえばよかったのだけれど,
降るような星空の下,
たっぷりのスープの中に,
ストーヴでお湯を沸かし,
ベーコンの他には何も入れない。
そこいら中,
「文句も言わずに運んできたんだから,
独り言が星空に消えた。
このスープスパゲッティには謂われがある。
ヘミングウェイの短編集に収められた
『二つの心臓の大きな川』
手に入りやすい
あらためて空腹を覚えた。こんなに腹をすかしたことは,
いままでにないくらいだ。最初にポークと豆の缶詰, 次にスパゲッティの缶詰をあけて, 中身をそれぞれフライパンにあけた。 「文句も言わずに運んできたんだから, これくらいのものを食べる資格はあるさ」 ニックは言った。その声は暗くなりつつある森に異様な響きを残した。それきりもう, 声を出さなかった。 (中略) 炎の揺れるグリルにフライパンを乗せた。腹がますますへってきた。豆とスパゲッティが温まってきた。そいつをスプーンでよくまぜた。泡が立ってきた。いくつもの小さな泡が, じわじわと浮かび上がってくる。いい匂いがしてきた。 (中略) ニックは中身をの半分をブリキの皿にあけた。それはゆっくりと皿に広がった。まだ熱すぎることはわかっている (中略) もういいだろう。皿からスプーンいっぱいにしゃくって, 口に運んだ。 「やったぁ」 ニックは言った。 「こいつはすげえや」 思わず歓声をあげた。
書き写していても唾がわいてくる。ましてやニックはここまで辿り着くのに,
豆とポークではないが,
そのまま気持ちのいい朝を迎えるはずが,
「ここは国立公園なので,
これが最後の贅沢になった。
この後,
貧粗に過ごしたにもかかわらず,
北海道と都内の国鉄
しかし襲いかかる空腹に勝つことができす,
これを少しずつ囓りながら,
渋谷から浜田山にある下宿まで歩けばいいや,
残った数十円で
マナスルの灯油ストーヴは,
その後,
数年後,
最初のファミリーキャンプ用に買ったプリウスのガスワンバーナーは,