1回目 の記事はいかがでしたでしょうか? 「 ライブ中継をおこなう」と言うと大仰に聞こえますが、実は「( アカウントを作って)スタートボタンを押すだけ」で始めることができるのです。
ただ、前回の方式では、SkypeやFaceTimeのように「自分を映して誰かに話しかける」というスタイルには適していますが、勉強会などのイベントにおいて「講演者を映す」という用途にはあまり向いていません。
MacBook Airの画面を講演者に向けて配信できないことはないのですが、正しく配信できているかどうかの確認ができませんし、何より配信(録画)のスタート・ストップすらまともに操作できません。
そこで2回目の今回は、MacBook Airに外付けのWebカメラを繋げての配信を解説します。
なお、今回から、この連載用のハッシュタグを#eventstreaming としたいと思います。ご意見・ご感想などあれば、ぜひお知らせください。
Webカメラでの配信
「Webカメラ」という言葉ができた頃には「Webに繋がったライブカメラ」という意味だった気がしますが、最近では「USB端子へ接続するカメラ製品」的なニュアンスでも使われています。この記事でもこちらの意味で「Webカメラ」という言葉を使っていきます。
このWebカメラを使った配信方法を解説します。とは言っても、MacBook Air内蔵のカメラを使って配信をしてみた方なら、実は既にWebカメラを使っていたことになります。MacBook Air内蔵のFaceTimeカメラは、内部でUSB接続されているWebカメラに他ならないからです。
つまり、基本的には、内臓のカメラを使うか外付けのカメラを使うかの違いでしかありません。
Webカメラは数千円から一万円程度で購入できるできるものがほとんどですが、価格の他にも対応機種について気にしておきましょう。
ここではMac OS X対応のものを選択するのが良いのですが「Windows用」と売られている製品でも、付属ソフトがWindows用しかないというだけで、本体のカメラはMac OS Xでも利用可能というWebカメラもあります。付属ソフトに魅力を感じている場合は別ですが、カメラとして使いたいだけなら、このような製品を選ぶというのもひとつの手です。
最近売られているのは、UVC(USB Video Class)に準拠したカメラがほとんどだと思いますので、Macでも普通に使えるものも多いはずです。Webカメラが世の中へ出たての頃には、メーカーの独自規格の製品もあり、今よりも「情報収集または賭け」が必要な世界でした(笑)
今回はこの連載のために、Logicool HD Webcam C310 を購入してみました。このWebカメラの対応OSは「Windows Vista、Windows 7またはWindows 8(32または64ビット) 」となっており、Mac OS X対応とは記載されていません。
では、このカメラを使ってライブ配信ができるかどうか試してみましょう。
MacBook AirのUSB端子にカメラを接続します。
図1 Logicool HD Webcam C310
この状態でUstreamへログインし、ブロードキャスター(配信コンソール)を起動します。画面の下部にある、ギアの形をしたアイコンをクリックすると「詳細設定」などの設定パネルが出てきます。
設定パネル左側には、映像と音声のそれぞれの入力を切り替える選択フォームがあります。フォームをクリックすると映像には「Logitech カメラ」 、音声には「Logitech Camera」という選択肢がそれぞれ出てきました(なお、「 Logitech」とは、このWebカメラの製造メーカーであるスイスLogitech社の名称です。「 Logicool」は日本におけるLogitech社のブランド名称です) 。
図2 ブロードキャスターのカメラ選択画面
思っていたより、あっさり認識されてしまいました。この状態でWebカメラを使っての配信ができる状態になっています。
原稿を執筆する前には、このステップではカメラが認識されずに、次に紹介する「CamTwist」というソフトウェアを利用して「カメラが認識されました!」と説明するつもりだったのですが、想定が見事に崩れてしまいました(笑)
気を取り直して、CamTwistの紹介へ移りたいと思います。
CamTwistのインストール
CamTwist は、複数の映像ソースを切り替えたり、映像ソースへリアルタイムにエフェクトをかける(映像効果を合成する)ことのできるMac OS X用の無料ソフトウェアです。
図3 CamTwist Webサイト
このソフトウェアを使うと「Ustreamのブロードキャスターでは認識されないWebカメラ」が使える場合があるので、その実例として「Logicool HD Webcam C310」を購入してみたのですが、前述のとおり、あっさり認識されてしまいました。
残念ながら実際の例をお見せできなくなってしまったのですが、もし、ブロードキャスターで認識されないWebカメラがお手元にあるなら、CamTwistを試してみると良いかもしれません。
CamTwistのWebサイト から、最新版をダウンロードします。
図4 CamTwist ダウンロードページ
ダウンロードしたディスクイメージファイルをダブルクリックし、展開された「CamTwist.pkg」を実行します。OS X 10.8の場合は、ファイルをダブルクリックしても実行できないはずなので、コントロールキーを押しながらファイルをクリック(もしくは右クリック)し、コンテキストメニューの中から「開く」を選択して実行してください。
図5 CamTwist インストール
一連の処理が終わると、アプリケーションフォルダにCamTwistがインストールされていることが分かります。
CamTwistを使った配信
それでは、CamTwistを使ってUstream配信を行なってみましょう。
機器およびソフトウェアの接続・起動の順番は、次のようにします。
Webカメラを接続
CamTwistを起動
Ustreamブロードキャスターを起動
この状態でブロードキャスターの映像入力選択フォーム(画面左下)に「CamTwist」の名前が出てくれば成功です。
図6 CamTwist ブロードキャスター表示
先ほどの接続・起動の順番は意外と重要で、ブロードキャスターを先に起動してしまうと、CamTwistを認識しないときがあります。ブロードキャスター側から見ると、CamTwistは「接続されているカメラのひとつ」になるわけですね。
さて、ここから配信の準備をしていきます。いま、ブロードキャスターの映像モニタには何も映っていません。つまり、まだCamTwistから有効な映像データが入力されていない状態です。
では、設定をしていきましょう。まず、CamTwistのウインドウをアクティブにしてください。
図7 CamTwistのセットアップ(1)
なにやら画面内に細かい文字がたくさん並んでいます。よく見ると上のほうに「Step 1」「 Step 2」「 Step 3」と見出しがあります。CamTwistは、これらのステップに従って操作していけば良いのです。
各ステップの内容を簡単に説明すると次のようになります(画面内にも記されています) 。
Step 1: 映像ソースを選択する
Step 2: 映像ソースへのエフェクト(映像効果)を選択する(0~複数個を選択)
Step 3: 設定の微調整をする
とりあえずエフェクトはかけずに、Webカメラの映像をそのまま出力するように設定していきましょう。操作手順は次のとおりです。
「Step 1」の下にある「Video Sources」の中から「Webcam」を選択
画面左下にある「Select」ボタンをクリック
画面右側にある「Settings」に「Camera」の選択フォームが出てくるのを確認
「Camera」のフォームから「Logitech Camera」を選択
図8 CamTwistのセットアップ(2)
ここまで正しく設定できれば、Ustreamブロードキャスターの画面に映像が出てくるはずですので、見てみましょう。
図9 CamTwistブロードキャスター表示(2)
ブロードキャスターの映像入力が「CamTwist」になっており、映像そのものはUSB接続したWebカメラから届いていることを確認してみてください。
この状態は、ブロードキャスターから「Logitech カメラ」を選択したときと何も変わっていません。単に手順が増えて面倒くさくなっただけです。このままでは何も嬉しくありませんので、ちょっと嬉しくなるような設定をしていきましょう。
CamTwistのエフェクト(Scrolling Text)
勉強会やカンファレンスなどのイベントでは、講演時間の合間に長めの休憩時間(お昼休みなど)が入る場合があります。「 次の講演が始まる時間」について、Ustreamで参加している人達へ告知するシチュエーションを考えてみましょう。
音声も配信している動画なので、声でアナウンスするという方法ももちろんありますが、アナウンスが終わった後にUstreamの視聴を開始した参加者には伝わりません。イベントの配信を見に来たはずなのに、何やらよく分からない映像が流れている状態に「???」となってしまう可能性もあります。
このような時には、CamTwistの「Scrolling Text」エフェクトを使って、開始時間を告知してみましょう。
「Step 2」の下にある「Effects」の中から「Scrolling Text」を選択
画面下部にある「Add」ボタンをクリック
画面右側にある「Settings」に「Color」「 Y Position」などの設定項目が出てくるのを確認
図10 CamTwistのセットアップ(3)
ここまでの操作の後にブロードキャスターの映像モニタに目を移すと、「 Hello World!」という文字が左へスクロールしているのが確認できます。
図11 CamTwistブロードキャスター表示(3)
もう一度CamTwistの画面を戻り、「 Settings」の各設定項目を次のように入れてみてください。
「Y Position」に「-0.45」( 下へ移動する)
「String」に「次の講演は13:00からです!」( 好きなテキストを入れる)
「Speed」に「4.2」( 遅くする)
図12 CamTwistのセットアップ(4)
すると、次の講演の開始時間をお知らせするテロップ(Scrolling Textエフェクト)が画面の下部に流れるようになります。
図13 CamTwistブロードキャスター表示(4)
さて、講演時間直前になりました。講演中にこのテロップが流れてしまうのは、さすがにイケていませんので、これを解除しましょう。
エフェクトの解除には「一時的に解除する」「 完全に解除する」という2つのパターンがあります。
「Step 3」の下にある「Effects in use」の中が、現在使っている映像ソースとエフェクトの一覧になります。それぞれの名称の左側にある水色のチェックボックスが一時的な解除で、さらに左側にあるバツ印が完全に解除するためのインターフェイスです。
図14 CamTwistのセットアップ(5)
水色のチェックボックスをON/OFFして、Ustreamブロードキャスター内のテロップの状態を確認してみてください。その効果が把握できたら、バツ印をクリックして「Scrolling Text」を完全に解除してしまってください。
CamTwistのエフェクト(Twitter Search)
最近の勉強会やカンファレンスでは、そのイベントごとのTwitterハッシュタグが用意されていることも多いと思います。
次は講演中の映像に「Twitterでツイートされたイベントハッシュタグの内容」を重ねて出してみましょう。先ほどと同じ手順で、今度は「Twitter Search」というエフェクトを追加していきます。
「Step 2」の下にある「Effects」の中から「Twitter Search」を選択
画面下部にある「Add」をクリック
画面右側にある「Settings」に「Query」などの設定項目が出てくるのを確認
設定項目は次のように入れてください。
「Query」を「#eventstreaming」( この連載のハッシュタグ)
「Refresh Time」を「5」( 5秒で画面更新)
「Color」をちょっと濃い目の色に
「Position」をちょっと上に(黒い■をドラッグする)
図15 CamTwistのセットアップ(6)
すると、ブロードキャスターの画面にTwitter検索の結果が表示されるはずです。
図16 CamTwistブロードキャスター表示(5)
「Refresh Time」で設定した秒数でツイートの内容が書き換わります。
ただ、#eventstreamingの検索結果 は今回決めたものなので、ツイート数が少なく、変化がないかもしれません。その場合には、Twitter上でトレンドになっている他のハッシュタグで試してみると良いでしょう。
撮影している映像の構成により、ツイート表示が邪魔になってしまう場合も多いと思いますが、ハッシュタグの盛り上がり次第では面白い映像になるかもしれませんね。
CamTwistには、ここで紹介した他にもたくさんのエフェクトがあります。実用的なものから、お遊び的要素がかなり強いものまでありますので、あれこれといろいろ試してみてください。
また、複数のエフェクトを同時に使うことも可能です。例えば、今回のスクロールするテロップとツイート表示を一緒に使うこともできます。実際にこれを行なうと、映像が文字だらけになってしまうので使う機会はないと思いますが(笑)
まとめ
ここまでの説明で出てきた各ソフトウェアと機器の関係をまとめておきます。
図17 各機器・ソフトウェアの関係
ブロードキャスターの映像入力からは3つの映像ソースがあるように見え、CamTwistの「Webcam」からは2つの映像ソースがあるように見えます。
ブロードキャスターでCamTwistを選択し、CamTwistでWebカメラ(今回はLogicool C310)を選択すると、Ustreamには「Webカメラ+CamTwistのエフェクト」の合成映像が流れるというイメージです。
CamTwistでは、映像ソースの映像にリアルタイムでエフェクトの合成ができます。特に勉強会やカンファレンスなどのイベントでは、次のエフェクトが役立つかもしれません。
Scrolling Text
Twitter Search
それから形式的ではありますが、メーカー動作対象保証外の製品を使う場合は、すべてご自身の責任の元で行なってください。今回はうまく動作しましたが、もしご自身の機器が動作しなかった場合でも、筆者及び技術評論社は責任を負い兼ねます。あらかじめご了承ください。
では、今回はここまでです。
次回はもう少し具体的に「勉強会での配信」を意識した内容を紹介したいと考えています。