ゲームをおもしろくするコツ

第5回 「ちょうどいい」と感じる難易度調整

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難易度バイパス

プレイヤーのスキルレベルに合わない面を回避するために,いろいろなバイパス手法もあります。

ミスバイパス

アクションゲームなどでミスした際に難易度を一時的に低くする方法です。たとえばミスしてもゲームが続く場合,残機は減るが一定時間無敵になる仕様,ミスすると面がリスタートされる場合,ミスの原因となったギミックや敵が出現しない仕様などがそれです。

無理なく自然な流れなのですが,ノーミスでクリアした場合とゲーム体験が異なるという問題があります。

コンティニュー

ゲームを途中からリスタートする方法です。ゲーム体験が変わることもなく,ノーコンティニューでクリアすれば自慢できるため良い方法と言えます。

問題は難易度自体が変わっているわけではないことです。コンティニュー回数に制限を付けるなどをやりがちですが,それでは難易度調整にはなりません。また,時間をおいてプレイした場合は最初からやり直しになるため,すでにクリアした面をスキップする機能もあるとよいです。

コース分岐やワープ

難易度が低すぎる場合,通常ではない操作を行ったり隠しコースを進むことにより,次の面ではなくより難易度の高い面に誘導する方法です。筆者が開発したゲームでは『カイの冒険』注5に実装されており,あらためてプレイする際にも手早く好きな面まで進めるので好評でした。

問題は,先の面にワープしたものの,その面の難易度が高すぎてプレイできない場合でも戻れない点です。もう1回やり直すのが楽なら問題にもならないんですが。

面セレクト

プレイヤーに自分が好きな面を自由に選ばせる方法です。難易度が自分で決められるのでプレイヤーに責任が転嫁された形ですが,ここにも問題があります。

まずはどの面がどのくらいの難易度なのかがわからないことと,この方法でゲームをクリアしても達成感が低く,良いゲーム体験にはなりにくいことです。

さらに,すでにクリアした面しか選択できない方式が多く,結局はボトルネックとなる面で詰まると先に進めない不具合があります。

注5)
1988年に現バンダイナムコエンターテインメントがリリースしたファミリーコンピュータ用のアクションゲームです。

動的難易度調整

最近ではFPSFirst Person Shooterなどを中心に動的難易度調整(DDA:Dynamic Difficulty Adjustmentを実装しているゲームが増えています。プレイ内容からプレイヤーのスキルレベルをコンピュータが判別して,それに合わせて難易度をゲーム中に自動的に調整する方法です。リアルタイムにプレイヤーの状況を判断して対応できるため,常にフロー状態の範囲に難易度を抑えられる可能性はあります。

考え方は新しいものではなく,筆者も『ゼビウス』で簡単なDDAを実装していますが,DDAにも実はいろいろな問題があります。

気付くと不愉快

プレイ中にDDAが難易度を調整したとプレイヤーが気付くと,⁠殺しにかかってきたよ」とか「舐められているな」とか,コンピュータに何かされていることに不愉快さを感じます。

アルゴリズムが特定される

DDAはプログラムなので,そのアルゴリズムはプロのソフトウェアエンジニアやマニアが解析してしまいます。彼らにとってはパズルのようなもので,アルゴリズムの特定もゲーム攻略の一部だからです。こうした解析は現在ではWikiで共有され,特定されしだい誰もが知ることができる情報になります。

そしてプレイヤーの中には「効率厨」という人種がいます。彼らはDDAの動作を逆手に取って,難易度が上がらず高得点が可能なプレイスタイルを作り出します。これもまたネットで共有されるので,誰もがパターンとして利用することになります。こうなっては,DDAの本来の意味は失われますね。

自己主体感

ゲームのおもしろさを決める重要な要素として,今一番筆者が注目し研究しているのが「自己主体感」⁠sense of agency)です。自分が意思決定をしている感覚が自己主体感であり,操作に対して結果が予測されるイメージの範囲内であれば自己主体感は維持されます。しかしドライブゲームでブレーキをかけても車が減速しないなど,操作に対して著しくイメージと異なる結果となる場合,自分が操作しているように思えなくなる─⁠─つまり自己主体感が失われるのです。

DDAの問題点であるプレイ中に難易度変更されて感じる不愉快も,自己主体感が損なわれることが原因です。CPUの自動操作はプレイヤーの意思と関係なく行われるので,ゲームをプレイしているのではなくプレイさせられているように感じるわけです。

これは料理の味付けを好みに合わせるような方法で解消できます。プレイヤー自身が難易度の加減を「もう少し難しめに」とか「もっと簡単に」とか選択できるチャンスを与えるのです。その結果としてCPUが難易度の操作を行うのであれば,イメージとの違いが多少あったとしても自己主体感は損なわれにくいのです。

難易度は設定を間違えるとせっかくおもしろいゲームを台なしにしてしまいます。これを回避するにはテストプレイを繰り返して調整するのが一番で,そのためにはテストプレイの時間的余裕が持てるよう,まずは早くゲームを完成させることに尽きます。

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著者プロフィール

遠藤雅伸(えんどうまさのぶ)

ゲーム作家,研究者。アーケードゲーム『ゼビウス』『ドルアーガの塔』をはじめ,ファミコン『機動戦士Zガンダム・ホットスクランブル』『ファミリーサーキット』『ケルナグール』,カードゲーム『真・女神転生デビルチルドレン カードゲーム』『巫法札合戦 犬夜叉』など多数のゲームの制作に参加し,現在は東京工芸大学芸術学部ゲーム学科でゲームデザインを教えている。日本のゲームプレイヤーの行動と,コンセプト主導のゲームデザインに関する研究が専門で,ゲームデザイン教育の演習などの考案も行っている。

遠藤雅伸研究室:http://endohlab.org/