ITパスポート試験や基本情報技術者試験では,パソコンを社内ネットワークにつなげるなど,初歩的な接続設定ができる知識が求められています。今回は,出題頻度の高いイーサネットの仕組みと,ネットワーク接続用の機器について説明します。
LANとWAN
オフィス内や学校内にあるコンピュータを,通信回線(ケーブルなど)で結んだ,比較的小規模なネットワークのことをLAN(ラン:Local Area Network)といいます。また,構内無線(電磁波や赤外線を使った無線)を利用し,ケーブルなどを使わないLANのことは無線LANと呼びます。
LANに対して,NTTなどの電気通信事業者が敷設した回線を利用して,遠隔地と結ぶ大規模なネットワークのことをWAN(ワン:Wide Area Network)といいます。インターネットは世界最大規模のWANです。
イーサネットLAN
LANを構築しているところでは,そのほとんどがイーサネット(Ethernet)というLANの規格を採用しています。
イーサネットLANでは,CSMA/CD(シーエスエムエー・シーディー:Carrier Sense Multiple Access with Collision Detection)方式(※1)というアクセス方式を使います。このアクセス方式では,データを送る前に,LAN上に他のデータが送られていないことを確認してから,データを送信します。
しかし,複数のパソコンがデータを同時に送信した場合,LAN上で衝突が起こり,データは送信されません。衝突が検知されると双方が一定の時間待ってから再送する仕組みになっています。そのため,LANに接続しているパソコンの台数が多くなったり,データ送信が混み合う時間帯では,なかなか送信できない状態が続くことがあります。
ネットワークの構成装置
イーサネットLANでネットワークを構成するには,パソコンに通信機能を追加するためのLANアダプタ(※2)を装着してLANケーブル(※3)を接続し,下記に説明する接続装置を使います。
ハブ(HUB)
LANケーブルどうしを接続する装置のことをリピータ(Repeater)と呼びます。リピータは,一方から受信した信号を増幅・補正して他方へ送り,ネットワークを延長する機能を持っています。
ハブはリピータの一種で,集線装置とも呼ばれます。LANケーブルをつなぐためのポート(接続端子)を複数備えており,複数のパソコンをケーブルでポートにつなげてLANを構築することができます。あるパソコンから送られたデータは,そのハブに接続しているすべてのパソコンに送られますが,送信先に指定されたパソコンのみがデータを受け取ります。
また,同じ規格のLANどうしをハブでつなげて,LANの規模を大きくすることもできます。例えば,12個のポートを持つハブには最大でも12台のパソコンしかつなげません。しかしハブ同士を接続して(カスケード接続という),ひとつのLANに接続できるパソコンの台数をさらに増やすこともできます(LANの規格によって,カスケード接続できる段数には制限がある)。
図1 カスケード接続の例
![図1 カスケード接続の例 図1 カスケード接続の例]()
スイッチングハブ(レイヤ2スイッチ)
スイッチングハブは,LAN上に不必要なデータを流さない制御の仕組みを備えています。パソコンに取り付けられているLANアダプタには,一台ごとに装置固有のMACアドレスという認識番号が出荷時につけられています。スイッチングハブは,送られてきたデータにつけられた送信先のMACアドレスを読み取って,送信先にのみ送ります。
スイッチングハブと区別するために,この制御機能を持たない単純なハブをリピータハブと呼ぶこともあります。
ブリッジ(Bridge)
ブリッジは,アクセス方式の異なるLANどうしを接続する装置です。スイッチングハブと同様に,データが送られてくると,送信先のMACアドレスを読み取り,その送信先が含まれるLANにのみデータを送るアドレスフィルタリング機能を備えています。
図2 アドレスフィルタリングの例
![図2 アドレスフィルタリングの例 図2 アドレスフィルタリングの例]()
ルータ(Router)
ルータは,主にLANとWANとの接続に使われる装置で,LANとインターネットとの接続などによく用いられています。ルータは,送られてきたデータのIPアドレス(第3回参照)を読み取って,ルーティング(経路選択)を行います。「送信先により近いアドレス(第3回参照)」を情報として保存するルーティングテーブルを持ち,それを参照して最短経路を選択してデータを送信します。