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第14回 FPGAに高速性と柔軟性を! ついにベールを脱いだIntel製FPGA「Agilex」のポテンシャル

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Intelは3月5日,6日(米国時間)の2日間に渡り,同社最大の工場を擁する米オレゴン州ヒルズボロにおいて,次世代データセンター向けポートフォリオに関する報道陣向けワークショップを開催しました。ワークショップ全体を通して語られたテーマは「データセントリックな世界(Data-Centric World⁠⁠」で,具体的には

  • クラウドコンピューティングへのシフト
  • AIおよびアナリティクス関連のワークロードの急増
  • (5GやNFVなど)ネットワークおよびエッジコンピューティングの進化

という3つの大きなトレンドに沿って,データセンター向けポートフォリオを拡充していく姿勢を示しています。

数多くの新製品や新戦略が語られたワークショップにあって,ひときわ注目されていたトピックがFPFA(Field Programmable Gate Array)製品群の「Agilex」ファミリでした。Intelは2015年,Xilinxと並ぶFPGAのリーディングカンパニーであったAlteraを買収し,業界に大きな衝撃を与えましたが,その後の技術統合やロードマップ刷新が後手後手に回ってしまい,とくに主力となる10nmプロセスの開発において競合のXilinxに大きく水を開けられた状態にありました。3年もの時間をかけ,ヒルズボロというIntelの本拠地で発表されたAltera後継のFPGA「Agilex」はどんなアーキテクチャなのでしょうか。本稿では現地での取材をもとに,その概要を紹介します。

3年の月日が費やされたAlteraの資産を受け継ぐFPGA「Intel Agilex」

3年の月日が費やされたAlteraの資産を受け継ぐFPGA「Intel Agilex」

さまざまな技術の融合がイノベーションを呼び起こす

「Agilexはデータセントリックワールドへとあらゆる企業をいざない,ビジネスを"アクセラレート"する存在。イノベーションを呼び起こす究極のアクセラレータとなるFPGAを目指した」―Intel プログラマブルソリューショングループ CTOオフィス シニアマネージャ ホセ・アルバレス(Jose Alvalez)氏はワークショップの冒頭,Agilexの開発目的についてこう語っています。

ホセ・アルバレス氏

ホセ・アルバレス氏

Intelにはすでに「Intel Stratix 10 FPGA」というFPGAファミリが存在しており,⁠Intel Hyperflex」アーキテクチャをベースにしていますが,AgilexのFPGAファブリックについては「2nd Gen Intel Hyperflex Architecture」という説明がありました。つまり,基本的にはStratix 10のファブリックをコアにしつつ,Alteraの技術を統合することで,AgilexはStratix 10よりも1世代先を行くFPGAとして位置づけられることになります。

アルバレス氏はAgilexをStartix 10と比較して「パフォーマンスは40%アップ,省電力も40%アップ,さらにDSPパフォーマンスは40TFLOPSまで向上した」と語っており,大幅な高速化が図られていることが伺えます。また,外部メモリとして次世代メモリのDDR5とHBMをサポートするほか,Intelが開発する最新のパーシステントメモリ「Intel Optane DC Persitent Memory」をサポートし,データセンターのモダナイズに最新の技術でもって対応している点も特徴です。

「データセントリックワールド」に最適化された設計をめざしたというAgilex。パフォーマンスや省電力も大幅に向上し,3DパッケージングやCPU⇔FPGA間のキャッシュコヒーレントなインターコネクトなど業界初となる技術を数多く実装

「データセントリックワールド」に最適化された設計をめざしたというAgilex。パフォーマンスや省電力も大幅に向上し,3DパッケージングやCPU⇔FPGA間のキャッシュコヒーレントなインターコネクトなど業界初となる技術を数多く実装

Agilexにはこのほかにも"イノベーションのアクセラレータ"として機能するべく,業界初(あるいはIntel初)となる画期的な最先端技術が実装されています。以下にそのメインとなる技術を挙げておきます。

10nmプロセス

Intel既存のFPGAファミリであるStratix 10は14nmプロセスにとどまっており,より微細化した10nmプロセスの実装は,微細化で先を行く競合のXilinxの状況を考えても,どうしても実現しなければならないゴールでした。今回の発表に至ったことにより,ようやく10nmプロセス量産のめどが立ったことがうかがえます。

3Dパッケージング

Agilexでは「EMIB(Embedded Multi-Die Interconnect Bridge⁠⁠」というIntelが開発した高密度パッケージング技術が使われており,FPGAファブリックとは別に,各チップレット(トランシーバやカスタムI/O,カスタムタイルなど)が基板上に配置されます。チップレットはカスタマイズ可能で,アルバレス氏は「"Any-to-Any"を実現するヘテロジニアスなチップレットベースのパッケージング」であることを強調しています。また,より柔軟なカスタマイズを実現するため「Intel eASIC」⁠Intelが2018年7月に買収したストラクチャードASICベンダeASICの技術)チップレットも搭載可能となっています。

EMIBは正確には2.5次元のパッケージング技術であり,Intelが2018年12月に発表したロジックどうし(CPUとGPUなど)のヘテロジニアスなスタッキングを可能にする3次元パッケージング技術「Foveros」とは異なりますが,あえて今回,Agilexを「ヘテロジニアスな3Dパッケージング技術をベースにするFPGA」⁠アルバレス氏)としているのは,将来的にFoverosを含む本格的な3Dパッケージング技術に対応させる予定を見込んでのことだといえます。

著者プロフィール

五味明子(ごみあきこ)

IT系の出版社で編集者としてキャリアを積んだ後,2011年からフリーランスライターに。フィールドワークはオープンソースやクラウドコンピューティング,データアナリティクスなどエンタープライズITが中心。海外カンファレンス取材多め。Blog 「G3 Enterprise」やTwitter(@g3akk),Facebookで日々IT情報を発信中。

北海道札幌市出身/東京都立大学経済学部卒。

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