無関心な現場で始める業務改善

第14回「見える化」「見せる化」

業務改善リーダー

ここで言う⁠リーダー⁠は、⁠責任者⁠でも呼び名は何でもいいのです。下記のような人を指します。

  • 業務改善の全体を取りまとめるPM(Project Manager)的な役割を果たす人
  • 各改善チームのとりまとめ役(PL:Project Leader)
  • PM、PLを含み、業務改善の中核メンバーとして動く事務局

業務改善の実行では、改善テーマごとに、個別の改善チームが同時にあちこちで動き出すことになります。リーダーはこれらのチームから上がってくる改善報告を受けて、課題の整理やチーム間の情報共有を促し、調整役として、また、組織の潤滑剤としての機能を果たすことが求められます。

リーダーの役割は調整役と潤滑機能

業務改善が開始しておよそ2ヵ月も経つと、スケジュールどおりに業務改善が進むチームと、遅れがちになるチームが出てきます。

元々、⁠ほったらかし」第12回と、⁠やらざるを得ない環境」第13回を作るために、意図的にチーム間が相互に影響し合うスケジュールとタスクの構造にしています。したがって、改善チームのタスクの遅れが、ほかの改善チームのタスクに遅れの影響を与えてしまい、チーム内のメンバー同士やチーム間での関係がぎくしゃくすることがあります。これでは、何のためにこれまで仕掛けを作ってきたのかわからなくなります。

このときに、考えなければならないことは、遅れているチームをどのように、チーム全体でサポートをするかです。

「そっちのせいで、こっちが遅れた。どうしてくれる?」と、遅れた原因追及に時間を費やすことや、チーム間で言い争いをしても、解決にはなりません。⁠次にどうしていくか?」を導くことと、チーム間のギスギスを取り除くことが必要となります。

一緒になって考える

さて、このように改善チーム間でちょっとギスギス関係になってしまった。リーダーのあなたなら、どのように解決しますか?

「そこまでやらなきゃいけないの?当事者同士で解決すれば……」と言いたくなる気持ちもわかりますが、それではリーダーの機能を果たしていません。

ポイントは意外とシンプルです。「当事者同士の解決に任すことなく、双方の改善チームが集まって、どうすれば遅れを取り戻せるか」を、リーダーも交じって一緒に考えることです。

改善チーム同士では、お互いのタスクを入れ子の構造にしているので、相手の改善チームにも自部門のメンバーが関わっている場合も少なくなく、話もしやすいでしょう。しかし、⁠一緒になって考える」ことなど、無関心な現場では今までなかったわけなので、「考える材料=業務改善」「考える場」ができたら、これを取り持ち、チーム全体を良い解決策へ導く役割をリーダーは担います。良い具合にチーム間で競争意識を持つことは望ましいことですが、進んでいるチームが下手な優越感を持つくらいなら、遅れているチームを助けることに誘導することにエネルギーを注いでもらうようにします。

ここでもう1つ注意があります。改善活動に関わっていない社員や役員から、改善メンバーに余計なノイズが入るときがあります。

スモールスタートは部門外からのノイズを受けやすい

大掛かりで部門全体、全社的に業務改善に取り組む場合よりも、小さな部門から着手する場合、外野からのノイズの影響を受けやすくなります。

単純に、改善活動が社内だけでなく、時には部門内にも周知されていないことが原因で、⁠仕事しなくていいの?」など、耳障りな声が耳に入るときがあります。

本来、部門責任者がきちんと話をしておけば済む程度のものですが、無関心な現場ではメンバーからの第一声は決まっています。⁠ちゃんと話をしてくれていないの?」という、どうにも煮え切らない気持ちの矛先は上司や、リーダーに向きます。

直接、業務改善に関わっていない社員から、改善メンバーに対して「何をやっているのか?」⁠何か変わるのか?」といった意見や、さらに、⁠改善なんてやって意味あるの?」と言ってくる場合もあります。これらは、メンバーのモチベーションに悪影響を与えます。

これらが繰り返されると、改善メンバーは「自分たちだけが頑張っている」⁠貧乏くじを引いた」と思うようになり、せっかく軌道に乗りかけた改善の実行サイクルの進み具合にブレーキがかかります。

本来、このような業務改善活動は、周りの人の関心度が高まり、⁠隣の部門、何だか面白そうなことをやっているな……」となれば、このような外来ノイズもおのずと減ってくるものです。リーダーは、改善チームの中だけではなく、周囲にも気を配りましょう。そして、関心を持ってもらえた人には、⁠じゃあ、一緒にやろうよ!」と改善メンバーに入れてしまうのもありです。このような流れを作るためには、業務改善の情報発信を継続する必要があります。

経営者も傍観者であってはならない

大企業であれば、現場の改善に対して経営者が直接、口を出すことはありませんが、中堅・中小企業では経営者の業務改善に対する関心は高く、メンバーに対して大きい影響を持ちます。

メンバーにさりげなく「改善はどんな感じだい?」⁠ご苦労さん!」と声をかけるだけでモチベーションはプラスに働きます。逆に、⁠いつになったら結果が出るんだ?」⁠改善をする時間があるなら1件でも契約を取ってくれればいいんだけどね?」などという発言はマイナスとして働きます。

リーダーは定期的に経営者クラスに自部門の取り組みや途中成果を報告します。できれば、業務改善報告会など開催して、経営者に活動をより知ってもらう、他部門への水平展開も狙い、活動を伝えていく場をどんどん仕掛けていくことも重要です。

「見せる化」「社内における改善活動の見える化」

これらの、改善活動が開始して間もない時期に生じる問題は、そのほとんどが社内に業務改善活動が知られていないことが原因です。

経営者も含めて社内に対しての情報発信は、業務改善にはとても重要となります。

業務改善に直接関わっていない人から、⁠知らなかった」という声が出ないように、社内に向けての積極的な情報開示が必要です。積極的な情報開示のことを我々は、"社内広報"と呼んでいます。

「見せる化」の社内広報

社内広報の役割は、先に述べた「知らなかった」と言わせないように、積極的に情報開示をしていくことですが、具体的には何を見せたらよいのか考えてみましょう。

多かれ少なかれ、改善が必要となる原因は、組織風土的な原因が潜んでいるケースがほとんどです。何か全員で改善活動を行うという場合に、一生懸命やる人の横で、冷めて見ている人もいるのも事実です。

したがって、業務改善のリーダーは、組織がこのような特性を持っていることを十分理解し、改善に関わるメンバーがやりやすい環境づくりを支援することが重要です。

第7回でお話をした「社内広報とモチベーション」では、業務改善により生まれた変化を見せていくことが重要と書きました。トップの腹くくりと同様、業務改善に関わっていない人にも関心を持ってもらうことが、業務改善メンバーのモチベーションとなります。

無関心な現場であろうとなかろうと、「きちんとやっていることが認知されている」ということがモチベーションにつながり、業務改善を成功に導くこととなります。

会社の社内報、イントラネット、社員の多くが目にする場所への掲示、定期的な成果報告会のようなもの、そのほかいろいろな手段が考えられます。

業務プロセスの可視化で「見える化」が進み、業務改善で改善効果や取り組みそのものを「見せる化」しましょう。

次回は、本社・管理系、開発・設計系、企画・研究系など、いくつか業務内容による業務改善のポイントをお話します。一般に、ルーティン業務以外の企画や研究職などはどのように業務改善を行っていけばよいか、そのヒントをお伝えします。

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