決済会議

第4回東急ハンズ長谷川秀樹さんに訊く、「そうだ、ハンズ行こう」(前編)

こんにちは、スマレジの山本です。先日出展させていただいたAWS Summit2013にて、鋭い視線とよく通る声で強く印象に残る男性に出逢いました。彼の名は長谷川秀樹さん、株式会社東急ハンズ執行役員 ・ITコマース部長でありハンズラボ株式会社 代表取締役を務めています。そんな出逢いから長谷川さんにインタビューさせていただく機会をいただきました。

今回から2回に分けて、⁠そうだ、ハンズ行こう」と題してインタビューの模様をお届けします。サーバのことなど内容が専門的な部分もありますが興味深い内容なのでぜひご覧ください。

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長谷川秀樹さん

株式会社東急ハンズ執行役員 ・ITコマース部長/ハンズラボ株式会社 代表取締役

東急ハンズの情報システム部門とEC部門の責任者。東急ハンズのPOSデータ(レジのデータ)をすべてパブリッククラウドに移行した。コレカモネットなどのソーシャルメディアやO2Oを熱心に推進。

何でも揃う東急ハンズからヒント・マーケットの東急ハンズへ

山本:大阪心斎橋の東急ハンズをよく利用しています。1つの店舗にありえないぐらいの商品ラインナップがあるイメージなのですが、ハンズさんの特徴ってどういうところなんですか?

長谷川:現在、東急ハンズの大型店舗では1店舗につき約17万アイテムを取り扱っています。昔は「品揃えのハンズ」と銘打って「ハンズに行ったら何でもある」とうたっていました。でも「何でもある」というなら、数千万アイテムを取り扱っているAmazonや楽天のほうが断然多い。100倍の違いです。

だから、僕たちは「品揃え」を押し出すのをやめました。それに代わって「ヒント・マーケット」をスローガンにしています。コンビニは「便利」を、ブランドショップは「豪華」を、魚市場は「イキのよさ」を売ります。では東急ハンズは何を売るの?とたずねられたら、「それはヒントです!」と言い切ろう、と。ただ「モノ(=商品)」があるだけでなく、「ヒト(=従業員、お取引先様)」や「コト(=イベント)」を組み合わせ、お客様がハンズで暮らしのヒントを見つけ、我々もお客様から明日のハンズのヒントをもらっていく。そんな関係を続けていきたいと思っています。

1番最初にPOSサーバーをクラウド化

山本:先日AWS Summit2013でも話されていましたが、東急ハンズさんは、POSサーバをクラウド化されていますよね。ひとことで言ってしまうと簡単ですが、それってすごい試みじゃないですか。ほかの業務システムはどのような運用をしているんですか?

長谷川:しょぼいサーバをちょこちょこいじっても仕方ないので、1番止まってはいけないPOSサーバをクラウド化してみたんです。⁠とりあえずPOSサーバいっとく?」みたいな(笑⁠⁠。あとは新規のシステムはAWSベースで組んで、逆に古いシステムから順にサーバーにあげていきました。

山本:僕たちのお客様は、東急ハンズさんに比べて規模が小さい会社さんが多いのですが、それでも「目の届くところにサーバを置いてほしい」⁠クラウドサーバは怖い」と言われることがあります。会社の規模が大きくなればなるほど、そういう意見が顕著なのですが、あえてそこを1番最初にやられたのはなぜですか?

長谷川:おっしゃるように、ほとんどの小売業のPOSサーバは、店舗に設置して回線が切れても営業を続行できることを前提にシステムを組み上げます。ただ、出店するごとにPOSサーバを店舗に設置しないといけません。しかも、最近の回線はめったに落ちることがないので、そんなにリスクばかり取っていても前進しないと判断したんです。

システムは、1つのサーバーで動かすのがいいに決まっています。だから、POSサーバもクラウド化して1つにしたんです。

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POSサーバをパブリッククラウド化することによって、お客さまに何かメリットがあるかと尋ねたところ、⁠特にない」という返答(笑⁠⁠。クラウド化されたデータをどう活用するか? ということを暗に示されたところで、次は店内で使用しているハンディ端末について伺いました。

端末の是非、業務用VSコンシューマ用

山本:以前に店舗で商品について店員さんに問い合わせたら端末でピッピと検索されてました。

長谷川:業務用端末ですね。

いま店舗で使っている端末は業務用ですがいずれはコンシューマ向けに移行したいと考えています。しかし「業務用」と名がつくだけでなぜか高い(笑⁠⁠。⁠ロットが違う」とか「頑丈に作ってある」と聞きますが、コンシューマ向け端末だって簡単には壊れません。またコストもさることながら、業務用端末はインターネットを閲覧する思想設計がなくて、いまだにInternet Explorer 5.5や6なんてバージョンが搭載されています。お客様から「ネットで見たこの商品がほしいのですが」と聞かれることも多々あるので、これからインターネット閲覧は必須だと考えています。

僕はすべてをWeb仕様に作っていきたいんです。

山本:今後の展望について教えてください。

長谷川:POSやレジという概念をなくそうと思っています。機能に特化せずにオールインワン端末のように一括でできるようにしたいです。

今度作るシステムではドロワーをくっつけたり、タブレットでクレジットカード決済ができたり……。ほかにも接客中にインターネットを経由して、商品を販売することもできるようにしたいです。⁠発注端末⁠⁠/⁠POS」というような縦分業は廃止にしたいですね。

山本:どうもありがとうございました。


スマレジは iPad 1台あれば、レジ・仕入・棚卸・在庫チェック・顧客データ閲覧など、さまざまな業務が行えるようになっているので、そういう意味では、かなり僕たちと近いところに着目されているなぁと感じました。というか、世の中の流れが、そういう方向に向いているんだなと改めて実感しました。

後編は今後どんなことに取り組もうとしているのか?などについてご紹介します。

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