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第23回エスキュービズムのオムニチャネルへの挑戦 前編

こんにちは、スマレジの山本です。

今回は、EC-Orangeなどのシステムで有名な株式会社エスキュービズム・テクノロジーさんにお邪魔したときのお話です。同社はいま「オムニチャネル」に着目し、いろんな取り組みを行っているとのこと。代表取締役社長 武下真典さんにオムニチャネルについて伺いました。

消費者からデジタル消費者へ

株式会社エスキュービズム・テクノロジー 代表取締役社長 武下真典さん
株式会社エスキュービズム・テクノロジー 代表取締役社長 武下真典さん
山本:

最近よく耳にする「オムニチャネル」ってなんですか?

武下:

昨今消費の仕方が変わってきていて、ただの消費者じゃなくて「デジタル消費者」と呼ばれる人たちが現れました。デジタル消費者とは、インターネットなどを使って、価格は価格比較サイトで調べたり、口コミを確認して商品の評判を確認したりする人のことです。

たとえば「ネットショップの買い物で貯めたポイントを、リアル店舗でのお買い物に使いたい!」というような要望があります。そういった「デジタル消費者⁠⁠ のニーズを叶えるための答えが「オムニチャネル」というキーワードになると考えています。

山本:

なるほど。わかりやすい解釈ですね。では、エスキュービズム・テクノロジーさんがオムニチャネルにチカラを入れている理由ってなんでしょうか?

武下:

私たちは元々eコマースのパッケージを構築し、販売していました。その流れでお客さんから話を聞くと「リアル店舗のデータと繋ぎたい」というニーズがあることがわかりました。

リアル店舗のデータということはPOSレジのこと。では、eコマースとPOSレジのデータを繋げばいいのですが、それだけではおもしろくないので「タブレットでできるPOSレジを作ったらハッピーだよね」ということでPOSレジができたんです。流行りのキーワードにとらわれず、お客さんのニーズに沿って開発した結果、たどりついたようなものです。ソリューションを先に用意しておいて「こんなのありますけどどうですか?」っていう提案の名前が「オムニチャネル」でした。

オムニチャネルとO2Oの関係

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山本:

いま店頭のPOSとネットショップが連動するお話がありました。スマレジでもそういう機能があります。

スマレジの場合は、店舗とネットショップの連動で、商品・在庫・売上が一元管理できるのが特徴です。それにより、業務の効率化をはかります。オムニチャネルやO2Oは、送客や集客の仕組みが備わってるんじゃないかなと感じるのですが、その辺はいかがでしょうか?

武下:

物事の判断をするとき歴史から紐解く必要がありますが、オムニチャネルの前にはO2Oがあったと思います。

O2Oって魚屋さんにたとえると「奥さん、今日いい魚入ってますよ!」っていう呼び込みですが、本音は「奥さん、明日も来てね」ですよね。⁠奥さん、明日も来てね」を実現するには、クーポンやポイントだけだと、本質的な価値がないので難しい。

「1回来店してくれたお客さんを、いかにしてもう1度来てもらうか?Webでもリアルでも」という仕組みづくりがオムニチャネルなんです。

山本:

O2Oはインターネット上のSNSなどでクーポンを発行して「お店に来てね」という販促活動が直接店舗の送客に繋がるような活動。オムニチャネルは、データ自体をそもそも統合化した上で再来店を促すような仕組みづくりということになりますね。

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武下:

もうひとつ重要なことは組織構造です。

会社組織では、Webをマネジメントしている部門と店舗をマネージメントしている部門がそれぞれ別なことが多い。O2O施策をおこなう場合は、クーポンやポイントだけが各部門間の接点しかないので簡単です。しかしオムニチャネルの場合、Web部門と店舗部門ががっつり組まないと成立しないので「オムニチャネルを構築する」「小売企業の組織構造まで変える」ということだと考えます。

山本:

「仕組みだけでなく店舗のオペレーション、全体的な取り組みも含めてオムニチャネル化するよ」という広い意味での定義も?

武下:

「会社として、ブランドとして成果を出すために何をしないといけないのか? 社内部署間の利害関係なんか考えてちゃダメですよね?」ということが含まれます。

山本:

「明日も来てね」というのって、具体的にはどういうことができるんですか?

武下:

いろいろありますけど、パーソナライズドされたレコメンデーションや会員ランクがわかりやすいです。お得意さんにはお得意さんなりの扱いをするみたいなところですね。CRM的な部分でいままで店舗だけでやってたのを、オンラインのデータを組み合わせたり、もしくは地域特性のデータと組み合わせたりして実施することが「また来てね」の秘策です。

山本:

では切り口を変えて質問します。オムニチャネルによって、どんないいことが起こるんでしょうか?

武下:

消費者からすると、純粋にお買い物がすごく便利になります。

たとえば、アパレルのネットショップで商品を見つけて試着したいと思ったら「店頭に在庫があります」と表示され、自宅にいながら取り置きができたらうれしいですよね。

お店側からすると、従来の「雑誌に掲載される→消費者が電話で問い合わせ→店舗に問い合わせ」という流れが、クリックひとつで済んで、確実にお客さんが来てくれることがわかるんです。そういったお互いにとって幸せになれる仕組みがようやく整いつつある気がします。

店舗では実物が見られてフィッティングもできるし、ネットでは事前に在庫がわかって、店舗に行かなくても取り置きできるようなメリットがある。オムニチャネルはその両方をいいとこ取りできます。

山本:

消費者にとって、ネットショップで獲得したポイントを店頭でも利用できることを不思議に思わないぐらい、あたりまえな感覚になりつつあります。世の中がそういうステージに来てるので、入ってきやすんでしょうね。

武下:

あたりまえになりつつあるし、そもそも「オムニチャネル」なんて名前をつけなくてもいいぐらいの大きな流れですよね。お店からすれば、⁠オムニチャネルなんて言葉がない時代から、お客さんのことをよく知り、リーチするっていうのはずっと前からやってきたよ!」っていうのが本音なんでしょう。

話がめっちゃ盛り上がったので、次回へ続きます。ではまた。

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