最初にすいません。前回を読んでくれた方には申し訳ないです。面接についてはまた別の機会に。ちと最近、仕事をしていて思うところがあったんで、『叫訓』第6話はその辺の話をしたいと思います。
ミッション:インポッシブル
さて……
仕事をしていると、ときにどうにもならない理不尽なことを言われたりすることがある。それは新人の頃であればあるほどに多かったりするもんだ。実際、オイラもそう。
こういった荒波にもまれて人間は大きくなっていくのだろう。きっと、たぶん……。
これは極論かもしれないけれど、オフィス北野のたけし軍団の若手などまさに地獄である。先輩の命令は絶対。逆らうことはできない。それがたとえ間違っていることであったとしてもだ。
犬岩石という芸人さんから聞いた話だが、事務所に入ったばかりの頃、軍団の鬼軍曹と恐れられているダンカンさんにいきなり「日本一周ヒッチハイクで行ってこい!」と命令されたらしい。
もちろん、テレビの企画でもなんでもない。カメラも回っていない。プライベートで日本一周してこいというミッション。トム・クルーズだって断るだろう。
芸人になりたくて事務所に入り、最初に下されたのがそんな過酷な指令。でも、それも仕事なのである。
嫌です、とは絶対に言えない。
犬岩石はこれも修行のひとつだと頑張った。先輩からの愛なのだ!と。これをクリアすれば輝かしい未来が待っていると信じて。
1年かけて日本一周を成功させた犬岩石。
ところが東京に戻ってくると、ダンカンさんはすっかりそんなことを忘れていたらしい。「君、誰だっけ?」と。
その後、犬岩石は「刑務所に入ってこい」という指令を出されたらしい。
う~~ん。
芸人で一人前になるのって大変なのね(?)。
無理という言葉は使ってはいけない
サラリーマン地獄の特訓、なんていうものがあるが、確かに新入社員にとってあれは大事なんじゃないかと思う。
雪山にこもったり、自衛隊に体験入隊したり(実際、某テレビ局では毎年、実施しているらしい)、渋谷のスクランブル交差点のど真中で叫んだり、歌ったり……。
45のオイラが今、それをやれと言われたら嫌だけれど(やるけど)、20代前半だったら何も考えずに受け入れただろう。つーか、やらざるを得ない。
だって、会社命令で仕事なんだもん。
こんなことやってられっか!なんて思って会社を辞める人間もいるのだろう。それじゃダメだ。そんな人間は何をやっても続かない。
会社が試したいのは登山家としてのポテンシャルや自衛隊としての可能性ではない。NOと言わない人材の形成である。
若い人と仕事をしていて思うことがあるのだが、すぐに「無理です」と言う。「いや、それはちょっと……」と。
「どうして?」と聞くと、「いやあ~、無理ですよそれは」と。もう、ガッカリだ。
オイラは「無理」という言葉が嫌いである。だから、人生で無理という言葉を使った覚えがない(あるかもしれないけど)。だって、「無理」と言った時点で、それは無理になっちゃうからね。
「ボクは絵が下手なんですよ」と言った瞬間、その人間は漫画家や画家にはなれない。
確かに若いときは自分に何ができるか? ではなく、自分は何ができないのか? ということを探る消去法の旅みたいなもんだ。
自分が何を向いているかではなく、何に向いていないか……。残ったことを仕事にすればいい。でも、何もかも向いていない、できないと決めつけたら生きていくことはできないのである。
できない、という言葉は非常に危険だ。
もちろん物事には限度というものがある。身長160cmちょっとのオイラがお相撲さんになりたい、というのは不可能な話だ。
うん、それは無理だな。って、無理って言っちゃった(笑)。
とりあえず動いてみること
マスコミ業界で働いていると、驚くようなことが多々ある。
先日、氣志團というバンドの打ち合せに参加したときの話。リーダーの綾小路翔がCDの特典映像で127人のコメントを集めたい、といきなり言い出した。
しかもタイムリミットは1ヵ月ちょっと。いや、実際には作業的に1ヵ月もなかったと思う。数週間で127人のコメントを撮影してDVDにする……いやあ、ビックリした。
無理という言葉が嫌いなオイラも、さすがにそれは可能なのだろうか?と不安になった。
でも、結果、撮影クルーは127人のコメントを集め映像化した。すごい!と感動した。
打ち合せでメーカの人間も事務所の人間も「無理です」、「できません」とは一言も言わなかった。もちろん、心の中ではどう考えていたかはわからない。
あそこで誰かひとりが「そんなの無理ですよ~~、時間もないですし」と言っていたら、空気は悪くなっただろうし、現実化しなかったはずだ。
「じゃあ、とりあえず、まず127人の候補を挙げていきましょうか?」と、その場ですぐにチョイス作業に入った。
仕事がはやいっ! つーか、悩んでいる暇なんてないのだ。
ポジティブな愛あるスタッフに囲まれて、今の氣志團があるんだな、と納得。素晴らしいチームだと心から思った。
ちなみに、そのDVDではオイラもコメントをしているので、もしよかったら観てください(笑)。
代案なき否定はしない
そして、否定的な言葉を使うのは若い人だけではない。プロデューサー的な存在。いわゆる人材を育てる立場にいる人間でも「それは無理」、「難しいでしょう」なんて平気で言うこともある。
まー、上司としては失格だ。
それは若い芽をつむ行為でしかない。上司がそれを繰り返していると、部下がモノを言えなくなってしまう。
斬新でフレッシュなアイデアも頭のかたい、フットワークの重い上司によってつぶされてしまうと、会社自体も血液がドロドロになる。
確かにムチャクチャな企画書を提出してくるヤングマンもいる。そのときに、「あ~、ダメダメ」で一蹴するのではなく、具体的にどこをどう修正すればいいのかを話してあげないといけない。
そこはほれ、人生の先輩としてね。
まずはホメる(無理矢理にでも良いところを探して)。そして、その後に細かい話をする。ここがどうで、ここがこう、と。
オイラが編集長をやっていたときはそんな毎日だった。
普通の話をするけれども、“代案のない否定は暴力”でもある。
「こんなことがしたいんですけど?」とせっかく提案してきた人間に対して、「それは無理だよ」と言ったらTHE ENDだ。
「それもいいけど、こういうのはどうかな?」と話をすることが大事。「こんなこともいいんじゃないかな?」と。
そういった代案がないのにバッサリとやってしまうのは大問題だ。すぐに代案が出てこないなら、「ちょっと考えさせて」でもいい。
「どうなるかわからないけど、とりあえず、やってみて決めようか?」なんて。
そう、だから、結局、今回の『叫訓』でオイラが言いたかったことはたったひとつ。
↓(コレ)