元オリコン編集長☆イノマーの『叫訓』

第18回“とにかく相手の話を聞け”人生の恩師に教わったトークの極意

すべての道はトークから

結局、トークなんだよなあと思う。トーク術。これしかない。打合せ、会議、取材……

とにかく、トークしかない。

某出版社のヒットメーカーであるプロデューサーは真顔で語っていた。⁠もう、トークしかないッスよ。トークで250万部!」と。

う~~~ん、深いい話。

自分は不器用なんで…、なんて黙っていると仕事も恋愛も上手くは行かない。

考えてみれば、仕事が上手く行ってるときは恋愛も上手く行ってるもんなあ。私生活も充実している。

オイラは基本、無口。普段はほっとんどしゃべらない。ま、プライベートでひとり部屋でテンション高くしゃべってたら頭おかしい人間だもんな。近所からクレームが来る。あそこのマンションの501号室(仮)に危険人物が住んでいる、と。

でも、無口っちゅーのはダメだな。それが許されるのはイケメンか才能のある人間か、お金を持ってるリッチマンだけだ。

オイラみたいな腐れ外道が「いや、すいません、無口なもんで」なんて図々しいことを言ったら社会から抹殺される。

某有名独立系カリスマ・バンドのギタリストがインタビューで語ってた。⁠黙ってると持っていかれちゃうんですよ」と。

なるほど、ふうむ。納得した。

言葉にしないと伝わらないことってあるもんなあ。だから、オイラは女のコにフラれてばっかなんだろう。

キャバクラとか合コンが好きではないオイラ。でも、修行の場と考えて行ったほうが良いのかもしれない。

女のコのオチのない話を延々と聞かされてお金を払うという理不尽な場に身を置いてみるというのも必要だ。

営業が売るものは?

それで、ちと思い出したことがある。オリコン時代の話だ。毎週月曜日の幹部会議には各セクションの部長クラスが一堂に会した。

もちろん、そこには先代の社長がいた。コの字形に配置された長机。営業成績が悪かったことを営業部長が雑誌の内容、中身が悪いからと編集部のせいにするような発言をした。

編集長であるオイラは言いたいことは山ほどあったが黙ってしまった。確かに、そう言われたらそうかもしれない、と……。

あきらかに営業部長の言い訳である。でも、雑誌を作る作業に満足という言葉は永遠にない。もっと良いものが作れるはずだと、どうしても考えてしまう。

社長はしばらく考えてから言った。⁠白紙の雑誌でも広告を取ってこれるくらいじゃないとダメだよ」

もちろん、これは極論というかある種の例えだったと思う。それくらいの心意気ではないといけないということだ。

そりゃあ、さすがに中身が白紙だったら広告は難しい。というか、あり得ない。でも、オイラは感動した。やっぱり、違うなと。

器(スケール)が違い過ぎる。

営業は商品を売るのではない。自分を売らなくてはダメだ!と言いたかったのだろう。

良い商品を売るのは当たり前、そんなことは素人でもできる。プロだったらどんな商品でも売らなくてはいけない。

営業といえば会社の顔だ。それがメーカーに顔を売らずにどうするんだ?という訓示だったのだろう。

やっぱり、スゲー人だ。

半分ハンガーの話

そのとき、オイラはイッセー尾形のひとり芝居に行ったとき観たネタが頭に浮かんだ。セールスマンのネタ。

ある商品販売説明会に来たスタッフ希望者にイッセー尾形演じるスーパー・セールスマンが講義をする。

さて、何をセールスするか? それは半分ハンガー。

その名の通り、その商品は半分しかないハンガーである。もちろん、使い道などない。でも、そんな半分ハンガーをどうやって売るかということをコンコンと説く。

そんな商品は売れませんという販売スタッフ希望者にスーパー・セールスマンは「だから、あなたはダメなんですよ」と説教する。

詳しいことは忘れてしまったが、そんな内容のひとり芝居だったと思う。

言ってることはまー、ムチャクチャだった。だけど、これってビジネスの基本なのかも、と真剣に思ってしまった。

普通のハンガーだったら誰にでも売れる。でも、半分ハンガーを売るのはハードルが高い。つーか、不可能に近いだろう。

でも、スーパー・セールスマンは言葉巧みに説き伏せていく。圧巻のステージだった。

やっぱり、トークなんだよなあ。

すぐれた交渉術について

話を戻す。

オリコンの先代社長は音楽チャート(レコードなどの売上ランキング)を作った創始者である。エジソンなみの発明だ。

音楽業界を変えた偉人。

もちろん、立ち上げるときは本当に大変だったらしい。そんなことできるわけがない、と誰も最初は相手にしてくれなかったとか。

理解どころか反発と反対ばかりでレコードメーカーや事務所、レコードショップ……協力してくれる人はほとんどいなかった。

誰も社長の話を絵空事のように思っていたのだろう。天才の考えることを凡人が受け入れるのは難しい。46年も前の話だ。

それでも、社長は絶対にこれは実現可能だ。音楽業界のために必要なことだ!と考えた。

社長は自ら足を運びチャートの話をした。いや、正確には話をしたのではない。相手の話を聞いたのだ。

「とにかく、話を聞くこと。こっちの話は後。向こうが話疲れるまで話を聞いて、最後の最後に自分の言いたいことを言う」と社長は会議で教えてくれた。⁠自分の言いたいことばかり言っちゃダメ。とにかく、相手の話を聞くこと。これが大事なの」

う~~~~ん。

そうやって、今では音楽業界だけではないチャート・ビジネスの大企業となった。ちなみに、起業したときのスタッフは数名だけだったとか。

自分で作って、自分で印刷所に持っていって……人に仕事に会社に歴史あり。

敬礼。

叫訓18

仕事成功の秘訣は
聞き上手になるべし!

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