自由は不自由だったりもする
今年の夏の思い出といえば、夏休みを利用して(1年中がホリデイだけど)、新しい仕事にチャレンジしてみたことだ。
知り合いの関係で紹介され、おもしろそうだからちょっとやってみようかなと。週に1回、短期の仕事なのでメインの仕事に支障はない。
20年以上、マスコミ・出版関係で働いているので異業種はかなり新鮮。オイラも今年の冬には46歳になる。ちと、違うことにもトライしてみたいという気持ちも強かった。
正直、いろんなことに飽きてしまっていたのかもしれない。
たまにはリフレッシュも必要だ。せっかく30過ぎてフリーになったんだから。
オイラは自由だ~~~~!
って、自由がいちばん不自由だったりするんだけど……実際、問題ね。
会社員からフリーになって最初に思ったことはそのこと。自由って大変。いろいろな誘惑に負けそうになる。
だって、さぼろうと思えばいつでもさぼれるからね。でも、さぼったら生きていけない。食っていけない。
だから、自由を得るためには強くならなくちゃいけない。弱い人間には一生かかっても自由は手に入らない。
タイムカードのある生活のほうがもしかしたら不自由でなく自由なのかもしれないと思った33の夏。懐かしい話だ。
って、マジメなこと言ってんな。しみません。何だろう? 夏のせいだ……。
マスコミ業界に3年いたら世の中では使い物にならない!?
そう、それで新しい仕事。
とにかくわからないことが多い。マスコミ業界なんていうある意味狂った世界で生きてきたので、普通のこと、当たり前のことを知らず、世の中的にまともな感覚がズレていることに驚かされた。
自分、もしかしたら間違ってるんじゃないか?と。アロハシャツに半ズボン、金髪にハットをかぶってビーチサンダルで初日に事務所へと(←あきらかに間違ってますな)。
「どうも、おはようございまーす!」とオイラ。「よろしくですーー」
「…………」。もう、明らかに不審者扱い。「あの、いつもそんな感じなんですか?」「は、はい?」、オイラはキョトン。
「ファッションというか…」と社長さん。「ま、人に会う仕事ではないんで構わないんですけど。帽子はどうなんでしょうね?」
う~~~ん。ま、そう言われればそうなのかもしれない。オイラは超クセっ毛。寝起きにセットするのが面倒なので常に帽子をかぶっている。今まで一度も何も言われたことがなかった。そっかあ。
これぞ、まさに業界の常識と非常識。
「ま、いいです」と社長さん。
帽子を脱いだところで金髪である。まだ帽子をかぶっていたほうがマシかもしれない。
う~ん、社会復帰の道は険しい。
こんな人が来ますよ、と伝わっていたはずだったが、社長さんにしてみれば、予想以上だったのだろう。そもそも、履歴書も提出していなければ、面接だって受けていないのだ。
ノリで来た話にはノリで返す。それがオイラのルールだ。
でも、このクソ暑い夏にスーツ&革靴姿の社長さんのほうがおかしいと思うんだけどなあ。エアコンの設定温度は24度。オイラ、26度で快適なんですけど……このファッションはエコなんです。
大切なことは“居る”ということ
まずは仕事を教えてもらう。ペンとメモを持って話を聞く。オイラはメモ魔。とにかくメモをしないと落ち着かない。
最近、記憶力が鈍ってきているというのもあるんだけど。これ、ヤバいんだよなあ……。40歳を過ぎてから、夕方になるとすでに昼間に食べたものを思い出せない。
これはライターとしては致命的だ。
ライターに必要なのは文章力なんかじゃない。ズバリ、記憶力である。10年前、20年前に観たライブや聴いた曲のことを鮮明にこと細かく思い出せなければいけない。
しかも、西暦何年何月何日、天気と場所まで。そこに実はライターの存在意義があったりする。これはまかり間違いない事実。
ま、おじいちゃんから昔話を聞くようなもんだ。歴史の教科書みたいな? 口から耳へという原始的なメソッド。
でも、そうやって繰り返され過去は現在に記されていく。大切な作業だ。
でも、不思議なんだよなあ。昨日のことはまったく覚えてないのに、10年前のことはしっかりと覚えてたりする……ということは、オイラはまだ大丈夫ということか。20歳のときに観たライブのこととか覚えてるんだもの。で、そのことをゲンコーにしたりしている。
要するに、そこに“居た”ということが大事なんだろう。“そこに居た自分”が求められているだけだ。
って、何の話? またそれた。戻します。
聞いて、聞いて、聞きまくる!
オイラは仕事でわからないことがあれば、しつこいくらいに聞く。聞くのを躊躇して見切り発車でスタートすれば面倒なことになるのがわかっているから。
聞くことは恥ずかしいことじゃない。聞かずに当てずっぽうで動くほうが迷惑をかける。
だから、オイラは新入り編集者時代は聞きまくったし、編集長時代はそんなことまで? ということまで説明をした。
中には何度教えても飲み込みの悪いスタッフもいた。でも、根気強く教えた。質問をしない人間がいちばんタチが悪い。
質問をしないからわかってるのかなあ、なんて思うと何ひとつわかっていない。
で、教えるとメモひとつ取らずに「はい、はい、はい」と聞いている。
でも、結局、同じミス。
最近、映像関係の仕事もはじめた。まー、これがわからないことばっか。まず、何を言ってるのかがわからない。専門用語の嵐。
もちろん、自分でも勉強したがわからないことはわからない。だから、45歳にして聞きまくった。「あの、大変申し訳ないんですが、初歩的なことを聞くんですけど、その○○ってどういうことですか?」
こちらも正直&素直になれば、聞かれたほうも親身になって教えてくれるもんだ。
で、3回まではオッケー。それ以上は聞かないこと。これ、大事ね。そこまで甘えちゃいけない。それは礼儀。相手が教え下手ということにもなってしまう。
教えること、教えられること
仕事ができる人間が必ずしも教え上手とは限らない。得てして仕事ができる人間は教え下手だったりもするのも事実。
なぜなら、自分ができることは相手もできると思い込んでいるから。だから、何でこんなこともできないんだ!? となる。
これ、最低ね。
自分が知っていること、できること、すべてが自分以外も可能かと思ったら大間違いだ。自分が言った、教えたことの2割でもできたら儲けモン!くらいに思ってないと上に立つ人間はダメ。上司失格だ。
オイラは冷たいかもしれないけれど、部下に何ひとつ期待していなかった。でも、それくらいの気持ちでいないとやってられない。
他人に期待したら裏切られた気持ちしか残らなくなる。みんな、自分以外に期待し過ぎなんだ。だったら、自分がやればいい。
そんな上司の背中を見て部下は動く。上司に認められたいと思う部下と部下を認めたい上司。そういう関係でチームはできあがる。
なんで、今回、こんな話をしたかというと……先日、スーパーでツナの缶詰を探していた。でも、いくら探しても売り場がわからなかった。いまどき、ツナの缶詰を売っていないスーパーなんてないだろう。
約1時間くらい探し求めて、諦め、売り場の方に聞いた。すると、ここですよとすぐ連れて行ってくれた。
こんなことなら、と……。
聞くは1秒、聞かぬは1時間。
ということで、22回目の叫訓はこんな感じ。プライドって大事だけど、それも限度もんだ。
叫訓22
聞くことは恥じゃない(部下)
教えることは財産になる(上司)