元オリコン編集長☆イノマーの『叫訓』

第27回仕事に「控えめ」ない!“もうひと手間”大切さ

ひと手間について

“ちょい足しレシピ⁠が流行っている。冷凍食品だったり、簡単な料理にひと手間かけることによって、より美味しくなるというすぐれ業。テレビを観ながら、雑誌を読みながら、なるほどなあと感心することしばし。

でも、そんなもん!とも思う。わざわざ、そこまでするか?と。人間は基本、怠け者。

めんどくせー。

何を食ったって、どうせ排泄物になってしまうんだと考えたら、ささっと作って、ちゃちゃっと食べてしまえばオッケーだろうと。

でも、この⁠ちょい足し⁠という考え方はビジネスにおいても非常に大切で、それこそまさにスパイス。出来上がりがまるで違ったりするのだ。

ある日の某情報番組……

『実は、意外かもしれませんが、最後に市販の粉チーズをかけるんです。これで、お店の味になりま~~す』

やかましーわ!と、ついひとり言(テレビに向かってひとり言って寂しいな……⁠⁠。

でも、そう言った後に後悔した。こりゃいかん、と。

粉チーズかけるだけでお店の味になるんだもの。だったら、最後のひと手間を惜しむことはない。でも、やらない。

うん、やらないんだよなあ。大概の人はやらない。でも、やる人はやる。そこで、実は人生にとって大きな差が出る。だって、美味しいもの食べたほうが幸せじゃんね?

しかも、大したことじゃない。最後のひと手間。塩をかけるとか、醤油を軽くまわすなんていう程度のこと。

たったそれだけのことができないなんて、人間が小さいんじゃないかとすら思ってしまう。いや、実際に人間が小さいんだろう。完成形のことを考えたら、それくらいの手間は何でもないはずだ。

うん、必要だ。

ビジネスにおいての天丼

企画書を書く、取材をする、ゲンコーを書く……オイラは仕事をするとき、必ず、もうひと盛りと考える。

お笑い論ではないけど天丼(同じフリやボケをかぶせる)的な発想って大切。1回ゲンコーを書き終わった後に、もう1ネタ、乗せるように読み直す。オチたなと思いつつ、その後にもうひとつ。

ホラー映画的な考え方なのかな? これはゲンコーだけではなく、企画書だったり取材のやり方だったりも然り。

はあ、終わったと思ったら、バコー⁠ーー⁠ーー⁠ーー⁠ーーン!みたいな(笑⁠⁠。まさに、ジェイソンね。

小心者なんだろう。不安症候群? 企画書もとりあえず1枚は作っておいて、それ以外にも必ず用意しておく。⁠こういう企画なんですが」と提出しつつ、その後に「実はそれプラス、こんなこともできればと……」

ずるいね? でも、この⁠ちょい足し⁠が大切。もちろん、出さないケースもあり。相手の顔色を見つつ、空気を読んで。

企画書を手にして読んだ相手も、その後にもう1ネタ出てきたら嬉しいもんだ。それが、たとえひどいネタだったとしても。真剣に考えてくれているんだな、と。

デザートみたいな感じ? これぞ、まさにリアルな⁠ちょい足し⁠なんじゃないかとオイラは思う。

実現するかしないかは置いておいて。こういった⁠ちょい足し⁠は想像以上に大きな効果があったりする。

ある意味、裏技的な方法。まずは大きなフォーマットを提出する。その後に細かなつけ足しを小出しにする。じわじわと相手を攻めていく。すると、熱意は確実に伝わる。

かぶせて、かぶせて……。

人生はサービス!

要するに⁠ちょい足し⁠というのは、気配りである。ひと手間を惜しむ人間に良い仕事はできない。ひと手間ができない、イコール、手抜きということだ。

もちろん、手抜きの考え方にもいろいろある。時間と労力の削減?

今年の夏に知り合いの店を手伝ったときに言われた。⁠そんな細かいことどうでもいい」

う~ん、確かに細かい作業で時間と労力をさくことだったかもしれないが、オイラ的には許せなかった。見逃せなかった。

しかも、たかだか1時間くらいの作業だ。それを惜しむから店の売上が悪いんじゃないか?とすら思った。ま、それはオーナーの考え方だからね。何も言わなかった。

そう、⁠ちょい足し⁠というのはサービスにもつながる考え方だ。最低限のことをやって、あとはどうにか……なんて考えていたらお客さんは満足などしない。

こちらが100パーセントだと思うことも、相手には響かないものだ。それが仕事であり、エンターテインメントでもある。

100パーセントの後に何が出来るか? 勝負はそこにある。100パーセントなんて当たり前だ。それが出来ないのなら商売などヤメてしまったほうがいい。

ひと手間はアイデア。本編じゃないからこそ遊びができる。ひと手間に行き着くまでの道のりのほうが長く面倒だ。でも、その旅が終わればステキなことが待っている。

ひと手間はご褒美。

カロリーの高い仕事

話はひっくり返ってしまうが、⁠ちょい足し⁠って要するに、足りないんじゃないか?と思う。足りないから足す。だって、足りていたら足す必要がない。

歴史のあるインスタントラーメン。発売以来、味は変わりません? 変えろー⁠ーー! 企業努力しろ。って、嘘、嘘。

いや、大したもんだ。でも、それが2012年を生きる現代人にとってどうなのかは微妙なところ。時代によって味覚も変わる。

でも、そういったベーシックがあるからこそアレンジができるのは確かなところ。ビートルズがいたからこそ、セックス・ピストルズは出現した。そんなもんだ(?⁠⁠。

結局、仕事にしても⁠こんなもんでいいだろ⁠みたいなところでやっているから、⁠ちょい足し⁠が必要になってしまう。

相手がお腹いっぱいです、と言ってくるくらいの熱量を吐き出すくらいじゃないとダメだ。常に100パーセント以上でゴー。

でも、相手には100パーセントも伝わらない。オイラの好きなアーティストは皆、そうだ。これでもかというくらいのカロリーでぶつかってくる。

何が美味いじゃない。大切なのはカロリーだ(笑⁠⁠。カロリーが高ければ、大概のものは美味しいのだ。

だから、こちらが弱っているときにはあまりにもヘヴィーだったりもする。だけど、そこまでやらなければ伝わらないこともある。

“ちょい足しブーム⁠なんて草食系男子云々と同じようなもんだ。音楽、映画、小説……とにかく、トゥー・マッチじゃないとNG。仕事もそう。

企画出しにしろ、これはやり過ぎかな?と思うくらいじゃないと成立しない。これは大げさな話じゃない。

会議なんて、油でベチョベチョの中華屋店主になるべし!

今までどうして、自分の企画書が通らなかったんだろう?と思う人は試しに思い切ってみればわかる。

きっと、通ります。

カロリーの高い企画(笑⁠⁠。

それ、プラス、自分なりのデザートを添えて。⁠ちょい足し⁠なんて必要ないメニューを考えること。かぶせて、かぶせて。

旨みの向こう側へ……

味の薄いヘルシーな企画だったり仕事。まあ、とりあえずやり終えたとする。でも、上司に⁠ちょい足し⁠されたら?

あんまり、良い気分はしないはずだ。でも、部下がそういった仕事をしたらオイラはきっと⁠ちょい足し⁠をするだろう。

ちょっとしたことだ。もうひと味。それを考えられる、実行できるようになれば一人前だ。アマチュアとプロの違いはそこにある。

仕事がら、月に数多くのバンドをライブハウスで観る。申し訳ないけれど、ほとんどのバンドがもうひと味どころか……う~~~~~~ん。

でも、良いところを持っているバンドもいる。オイラがプロデューサーになり、メジャーに送ったバンドも最初はひと味足りないと思った。もったいないなあ、と。

でも、たった1曲。1曲だけ最高に素晴らしい曲があった。オイラはそれを伸ばそうと思い、声をかけた。

今ではコマーシャルにも楽曲が使われている誰もが知っている有名なバンドだ。

彼らは彼らで精一杯ライブをやってはいたが、それは彼らの精一杯で、お客さんにとってのお腹いっぱいではなかった。

その、お客さんとの距離を詰めていくこと、そして、それを超えていくことがプロの仕事だ。それは、やがてオリジナルな料理となる。その作品に⁠ちょい足し⁠など必要ない。

“ちょい足し⁠なんてトレンディーに語られているけど、⁠ちょい足し⁠はダメ出し。マスコミが上手いこと言ってるだけだ。

惑わされるなー⁠ーー⁠ー!

って、あれ、オチてないな……しかも、天丼にもなってない……しみません。

コホン。

今回の叫訓です。

叫訓27

自分の100パーセントなんて
他人にとっては30パーセント以下

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