桜金造さんと久しぶりに会う……
先日、約14年ぶりにタレント・俳優である桜金造さんにお会いした。と言っても、お見舞いではあったのだけれど……。
2月12日、脳内出血で倒れ緊急手術&入院。一命をとりとめ、現在はリハビリ中。でも、顔色も良く、元気そうで何より。
このことは誰も知らないであろうが、オイラは2代目アゴ&キンゾーなのである。
ふふふっ。意味がわからないかもしれないけれど、桜金造師匠、公認の2代目アゴキン。ちなみに、アゴ&キンゾーとは1980年代を席捲したお笑いコンビである。
アゴ&キンゾーには今をトキメク、様々なお笑い芸人が影響を受けた。芸風はとにかくバカ。バカを貫くことで名声を得た。
ちなみに、お笑い界の虎の穴的テレビ番組『お笑いスター誕生!!』(1980~1986年・日本テレビ系列)の7代目チャンピオンである。
そんな師匠とは取材で初めて出会った。波長がバシーっと合って「弟子にしてください。2代目アゴ&キンゾーを襲名させてください!」とお願いした。ま、ムチャな話だ。
「いいよ~」と、簡単に桜金造さんは言った。「でも、ひとりでアゴキンなの~?」
懐かしい話だ。オイラは30代で金造さんは40代。お互いに元気だった(笑)。
仕事ができてやる気のない人間
ベッドに横たわる桜金造さん。「イノマーさー、本を出したいんだよね。この今の経験をもとにした本をさ」と金造さんは言った。
「はい」、オイラは返事をした。タダでは転ばない人だ。「いいと思いますよ」。
「誰かいい人いない?」と金造さん。「マジメじゃない人。マジメ過ぎる人はダメ。この状況を笑いにかえられるようなふざけた人間。そういう人と仕事がしたいんだよな」。
相変わらずだな、とオイラは思った。脳ミソにドリルをブチ込まれても、ちゃんと芸人としての自分を第一に考えている。
「やっぱりさー、マジメな奴はダメだよな? 疲れちゃうもん」と金造さん。「ふざけてるんだけど、仕事はきっちりできて、やる気がない奴。そんな奴はいないか?」
「いないよー」と、ベッド横で金造さんの息子さんが言った。
「やる気だけあって、仕事ができない奴がいちばん面倒なんだよな~」、と金造さん。麻痺症状を残しながらも笑いながら言った。
オイラは安心した。ここまでこれからのことを考えているのなら大丈夫だろう、と。
これが芸人魂なのだろう。自分の立ち位置と言うのをわかっている。
オイラは具体的な話をした。「それは実際に師匠が書くんですか? それとも、間にライターとかを入れて聞き書きみたいな……」。
「間に入ってくれる人がいるといいな」と金造さん。「自分ひとりでやると偏っちゃうじゃん? 自分、自分! ってなって、曲作りもそうだと思うけど、誰かが入って、全然別のモノになったりするじゃない? そういういほうが俺はいいんだよなあ」。
意外だった。ぶっちゃけ、金造さんはガンコな人だ(いや、これ、ホメ言葉ですから)。自分の意見や意思を貫くイメージが強かった。だから、ぶつかったこともある。でも、そんな風に物事を考えているとは思ってもみなかった。そっか、そうだったのね。
忘れられない一言
オイラは自分名義の作品だとしたら、間に誰か入られるのはものすごく嫌だ。とにかく、自分ひとりでモノ(作品)を作りたいタイプ。よっぽど、オイラのほうがガンコだ。
もちろん、バンドで曲を作るとなるとそれは不可能。それぞれのパートに任せる部分も大きい。ただ、作詞・作曲は自分で! というのは譲れない。自分以外の人間が作った歌詞やメロディを歌うことには抵抗がある。
それが自分のやり方だと思ってやってきた。だけど、確かにそういう考え方、やり方もあるなあ、と。47歳を迎える年齢にもなれば、自分を軸にしたネタも尽きる。
まあ、何をするにせよ、自分ひとりでは難しいのは当然なのだけれども……。
ふと、金造さんが出会ったばかりの頃に言ったことを思い出した。あれは取材後、雑談をしているときだったと思う。
『ハッキリ言おう。自分の意見はない。俺は言いなりになる。言われた通りにする』。
面倒くさいからとか、そういうことではない。これは自分に自信があるからこその言葉であったと思う。そうでなければ、こういう発言はできない。これこそが“桜金造的”な生き方なのだろう。
何でもします、ともまた違う。「何でもやります」という人間に限って、困ったことに何にもできなかったりする。
プライドについて
どんなお題を出されても、やり遂げる自信がなければ出てこない発言だ。
それが桜金造・伝説のひとつになっている、『ビートたけしのお笑いウルトラクイズ』(1989~1996年・日本テレビ系列)にてのワニとの激闘であろう。
ワニと戦ってあそこまで笑いを取れる芸人などそうはいない。つーか、普通は断るよなあ(笑)。まさに“桜金造言いなり論”。いよっ! さすが我が師匠!
プライドって大切だと思う。プライド持つことは悪いことではない。プライドを持っていなければやってられないことも多い。
でも、オイラ、プライドってないなあ。いや、どうなんだろ? 昔、つきあっていた彼女には「プライドが高い」と叱責されたこともある。だけど、そんなつもりはない。
ま、限度モンではあるけれど、基本NGは無いのでゴミを食べろと言われれば食べる。もちろん、プライベートではゴメンだけれども。
仕事であれば、そんなの何でもない。ゴキブリもミミズも食べた(実はもっといろいろ食べているけど、動物愛護団体からのクレームがこわいので書きません)。
プライドがあるからこそ可能なヨゴレ仕事。結局はどうにかして、ゴールを見つけてやるぜ! という確信がなければできない。
自分のやり方とエゴの違い
雑誌の編集などをやっていると、これはダメですあれはダメですというNGを出してくるタレントも多い。
でも、意外かもしれないけれど芸能界の大物に限ってNGは少ない。というか無いに近い。
編集作業の工程上、ありがたいと思うものの逆にプレッシャー。間違いが無いようにと気を使う。信頼に応えなければいけない、と。
「お任せします」という言葉をラクに受け止めることはできない。ものすごく危険だ。満点以上のことをしなければいけない。
結局、自分に自信のない人間ほど自分のエゴや考え方を全面にアピールしてくるのだろう。自分のテリトリー(許容範囲)の中でやりたいだけだ。そりゃ、誰でも安全地帯にいたいもんだ。よーく、わかる。
桜金造さんは言いなりだ。でも、最終的には自分の色に染める。エゴなんて進入禁止の看板みたいなもんで、逆に自分を踏みとどめる。
「言いなりになる」か……。裏を返せば良い言葉だ。でも、師匠、病院ではかなり、言いなりになってないみたいですけど?
看護師さんの言うことはちゃんと聞いて、1日でも早く退院してくださいね。
つーことで、今回の叫訓↓
叫訓36
エゴを捨てること……
それが自信とプライドの表れである