元オリコン編集長☆イノマーの『叫訓』

第41回「ハプニング発生! そのとき、どうする?」――ハプニングとアクシデントは似て非なるモノ!

基本があって応用がある

20代くらいからお世話になっている、知り合い(といっても、人生のかなり大先輩)がお店を経営していて、たま~に時間があるとき、頼まれたらお手伝いすることがある。

「ちと、どうしても店を空けなくちゃいけなくなっちゃってさ。ちょっとだけいい?」

「いいッスよ」

ヒマなとき、部屋に一人でいるとロクなことにならいから、気分転換にもちょうどいい。

そのマスターの口癖は⁠仕事は段取り⁠というもの。⁠イノマーさー、やっぱり、仕事は段取りがいちばん大切なんだよ。段取りがすべて。わかる?」

「は、はあ……⁠⁠、そりゃそうだ。今更、言われなくてもわかっている。

でも、それは最低限の話だ。基本中の基本。実践応用編ではない。空手の型みたいなものだ(いや、空手の型が無意味だとかという話じゃないッス⁠⁠。

ま、マスターはそうやってずっと自営業を続けてきたんだろう。

確かに段取りというのは大事というか、ひとつの流れでもある。シミュレーション? こうやって、こうなって、こうきて、こうして、するとこうなって……。その間、待ち時間にメシを食って一服した後にフィニッシュだー⁠ー! みたいなね。

ふうむ。

ダンドリくん

80年代だったと思うが、⁠ダンドリくん』⁠著/泉昌之)という漫画をよく読んでいた。とにかく、すべて先の先の先を考えて行動する主人公。しかも、それが仕事とかではなく日常生活のちょっとしたこと。

たとえば中華屋さんでのオーダーでラーメンと餃子とビールを注文する際のタイミングだったり、起きてからトイレに行くまでの効果的なアクションだったり……。

くだらないなあ、と思いながらも好きだった。まー、結局のところ漫画としてのオチは思惑通りにはいかないのだけれど。そういうところも含めてニヤニヤとさせてもらった。

なので、マスターに会うとダンドリくんを思い出して笑ってしまう。⁠仕事は段取りだ!」ってか? ふふふ。

でも、漫画じゃないけど段取り通りにいかないことも多いはず。だからこそおもしろい。

ま、それは職種によっても違うのだろうけど。

段取りを⁠手順⁠という言葉に置き換えればわかりやすい。ラーメン屋さんでそれを間違えれば提供できるスープは作れないだろう。

鰻屋さんとか天ぷら屋さんとかの、戦前から守り続けた店秘伝のタレです、とかね。そりゃ、順番を間違えたら大変だ。

段取りなど一瞬で無くなる

そういった職種は置いておいて、仕事での段取りというのはその都度、その都度、変わったりするものだ。

先日、某アーティストの取材で青ざめたことがあった。取材前にメールしておいた各メンバーへの事前質問事項がまったくメンバーに伝わっていなかった。

それなりに考えてもらって、回答をもらいたかったのだが……。マネージャーさんに聞くと、⁠忘れてました~~」と。

ふう。

キレたり、落胆したり、逃げ出す場合じゃない。とにかく場を作らないといけない。

オイラはオイラなりに、いわゆる段取りチックなことを考え取材に向かっていたのだが、すべてが壊れた。でも、こんなこと珍しいことではない。

取材現場で内容がコロっと変わってしまうこともある。そんなときは瞬時に次の手を考えないといけない。⁠じゃあ、こうしましょう」と。しかも、作り笑顔で。

ライブ(生活)にハプニングはつきもの

でも、結果、それはおもしろい方向に転がっていった。予定通りだったら可能ではないことも可能になり、充実した取材となった。

段取り通りよりもGOOD! もちろん、そういったハプニングに対処することができたことが大きいのではあるけれど。

ある意味、やけくそだった(笑⁠⁠。芸人さんはよく言う。⁠何かハプニングが起きないかなあ~」と。

でも、それはハプニングに対応することができる自信からの言葉だと思う。対処できなければ、それは単なる事故でしかない。

オイラはこうやって文章も書いているが、バンドもやっている。そのバンドはハプニングどころか……う~~ん。ハプニングを自ら作っているバンドだ。

いちばん驚いたのはライブ中にお客さんがステージに上がってきて○○○をしたことだ。さすがに予測はできなかった。

でも、どうにか対処した。ライブは盛り上がった。ライブは生もの。何が起きるかわからない。ある程度のガイドラインというのはあるけれど、そのまま進行することはまずあり得ない(つーか、1回もないや……⁠⁠。

通常はライブ前、曲順を決めてライブハウスに提出しなくてはいけないのだが、うちのバンドはしない。なぜなら、その通りにいかないから。申し訳ないッス。

でも、中にはMCまで前日に考えてステージに出るバンドもいるらしいけどね。こういうMCをするので、こう言ったときにスポットをあててください、みたいな? それが段取りっていうのかなあ。

だとしたら、つまらないや。オイラにはムリなことだな。

現場処理能力をアップ

自分の結婚式で大遅刻をしたことがある。結婚といえば人生最大のパフォーマンスでもある。親族も集まっている。ま、遅刻には理由があったのだけれど。

タクシーで式場に着くと大慌ての式場スタッフさんたちと父ちゃん、母ちゃん。オイラは余裕ブッこいて笑ってた。

「だ、だ、段取りなんですけど……」と式場スタッフさん。⁠大丈夫ですよ。このまま行きましょう」とオイラは言った。

人生なんて何が起きるかわからない。ダンドリくんの考え通りにはいかないもんだ。

そんな結婚式は新郎遅刻のハプニングで爆笑のヒットパレードとなった。

確かに、お世話になっているマスターの言うように段取りは大切だ。でも、それに縛られると、予期せぬことが起きると身動きできなくなってしまう。

「思ってた、考えてたのと違うよこれー⁠ー」と。そんな経験は誰にでもあると思う。そこまで段取りに頼るのなら、その段取りを何重にもしておかないといけない。

でも、人間、そこまで先の先の先の、そしてまたその先の先まで考えて生きていけるもんじゃない。

だとしたら、何が起こっても動じない心と現場処理能力を強めるしかない。

[ハプニングを味方に!]

↑これが今回、オイラが言いたかったこと。ハプニングをアクシデントと考えてはダメだ。先に進めなくなる。

段取りは必要。だけれども、その軌道を外れてしまったとき、動けなくなるのは意味ナッシング。ピンチはチャンス(チャンスはチャンス!⁠⁠。まー、そんなもんだ。

ということで今回の叫訓↓

叫訓41

段取りなんて無視すべし!
ハプニングこそが最大のチャンス

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