元オリコン編集長☆イノマーの『叫訓』

第47回ネーミングがすべて!――“降りてきた”ものを付けろ!

名前をつけてやる(byスピッツ)

この数週間、ずっと悩んでいる。真っ白なメモ帳を目の前に鉛筆を握りしめ「う~~ん」と唸り続ける日々。

ちと、わけあって、ネーミング作業の真っ最中。名前を付けないといけない。いや、子供ができたとか、ワンコ、ニャンコの話とかじゃないッスよ。お仕事の話です。

名前というかタイトルというかキャッチというか……何というか。まだ微妙な段階なんでハッキリとしたことは言えないんで申し訳ない。でも、そう、オイラは悩んでいる&考えているのである。

むー⁠ーー⁠ーん。

人はもちろん、モノには必ず名前がある。というか、名前が無いというのは⁠存在しない⁠ということになってしまう。

だから、名前は存在する。⁠それ⁠が存在しないことを避けるために名前はある。

オイラも生まれたときから名前があった。なんでもお婆ちゃんが付けてくれたらしい。商売繁昌を祈って「昌也⁠⁠。也という漢字はお爺ちゃんの名前から。

繁昌しなくて、しみません。

いや、でも、自分の子供の名前をつけるって夫婦にとっては高いハードルだろうなあ。その昔、⁠悪魔」って役所に届けに行って却下された夫婦のことを思い出す。

さすがに、⁠悪魔」はないよなあ。大きなニュースになった。20年も前の話。

両親としたら、いろいろ考えての決断だったかもしれない。でも、3年後に父親は覚せい剤取締法違反で逮捕されている……。

ネーミング

オイラはこれまで数々の名前を付けてきた。名前を付け続けた人生と言ってもおかしくない。それは雑誌名だったり、バンド名だったり様々だ。まあ、人のあだ名とかね。

雑誌の話をすれば、まず雑誌名がある。これが決まらないと何もスタートしない。雑誌名を考えるだけで数ヵ月かかったことも。

これは雑誌に限ったことではないけれど、商品の売れる売れないの半分はネーミングにかかっている。

雑誌名を考えるときにオイラが心がけるのはスパッとリズム感のある言葉。ダラダラ長いのはややこしい。語感の悪いものは覚えにくい。シンプル・イズ・ベスト。

そして、どういった内容なのかというのがすぐにわかる一言。だから、小難しいのはダメ。

一発で決める!

でも、これが本当に難しい。考えれば考えるほどドツボにハマっていく。最後には笑いや下ネタに逃げている自分がいる。

でも、脱線は必要だ。そんな中からかすかな光を見い出すこともある。

とにかく、メモ用紙などを用意して書いて、書いて、書きまくる。1,000個も書けば1個くらい理想に近い名前は出てくるもんだ。

キター⁠ーー⁠ーーッ!?

さて、雑誌名が決まったとしよう。すると、次は各コーナーのタイトルを決めないといけない。これまた面倒な作業。

ここまでくると悩んでいる場合じゃない。引っ越してきたばかりの部屋のカーテンみたいなもんだ。とりあえずで進めないと創刊に間に合わない。

連載のタイトルを決めるのも編集の仕事だ。オイラは昔から、好きなバンドの曲からいただいたりしていた。それを少し変えたり、変えなかったり。パクってパロって。

オリコン時代の編集長連載コーナー、タイトルは『兵士トナッテ戦場へ向カエ⁠⁠。オイラが愛してやまないパンクバンドの代表曲からいただいた。

オイラ監修の雑誌『STREET ROCK FILE』<宝島社>のライブイベントのタイトルは『終わらない歌⁠⁠。はい、ブルーハーツです。

もちろん許可取りナッシング。リスペクトですから……。しかも、アレンジなし。まんまだもんなあ。

ま、そんなもんだ。新しい斬新なネーミングなんてもう、この世にはあり得ない(と、思ったほうがいい⁠⁠。

ふと思いつくパターンというのもある。それは人それぞれ。AさんとBさんでは違う。それがオリジナルなんだと思う。

何日も寝ずに、考えに考えたネーミングよりも、街を歩いてきたときにふと思いついたネーミングがグッドだったりする。

それを業界では⁠降りてきた⁠という。

その瞬間はキター⁠ーー⁠ーッ!ってなもん。

それが、なかなか来ないんですが(涙⁠⁠。

曲作りに関しての話

バンドの話をすれば、バンド名から。どんな曲をやるかよりもまずはバンド名。バンド名が無ければライブもできない。

バンド名が無い? それはイコール、自己主張が無いということになる。

オイラは自分のバンド名は3秒で決めた。ま、ひっどいバンド名なんでここでは書かないけれど。でも、このネーミングというのは、繰り返すけれどとても大事である。

売れるバンドに共通しているのは略せるということ。ミスチル、イエモン、ハイスタ、ゴイステ……これこそがヒットの法則。

今の若い世代は長ったらしい言葉とか使わないからね。どれだけ省略できるか。

バンド名の次はオリジナルソング。ちなみに、自分のバンドでは100曲以上のオリジナル曲を作ってきた。オイラはまず曲のタイトルから決める。ネーミングからね。

そして、その後、それにふさわしい歌詞、メロディーを作る。曲名というのはテーマだ。そのテーマを具体的にふくらませていく作業が曲作り。オイラの作詞・作曲はそういったやり方だ。

言葉は生活の中にある

そう、だから、今回の叫訓でオイラが叫びたかったことは、まず物事をスタートするときに必要となるのはネーミングだということ。

曲のタイトルが大事だ、とオイラに直接ではないけれど教えてくれたのはブルハ(ブルーハーツ⁠⁠。とにかく、新曲を聴く前にタイトルを見ただけでコーフンできた。

絶対に、これ名曲だよな! って号泣。それって、まー、才能なんだろう。ヒロトさん、真島さんは作詞家としても、作曲家としても優れているけれど、コピーライターとしての資質がハンパない。

言葉のマジシャンだと思う。ふたりが食品企業で新商品のネーミングを考える仕事に就いたら、ヒット商品の連発だと思うなあ。

味なんて普通でいい。要はパッケージとネーミング。今の時代、何を食べたって、そこそこどれも美味い。だから、食品名、キャッチコピーが重要。

雑誌名、バンド名、商品名、イベント名、テレビ番組名……名、迷、メ~~イ。

その辺のセンスは神のみぞ知る、ってなもんだ。方程式はあるようでない。

そのフレーズが降りてくるか、降りてこないかはアナタ次第っ。

普段、どんな生活をしているか。過去にどんな経験をしてきたか。それによるところがすこぶる大きい。

こればっかりは、DOにもならない話だ。でも、ホント、そうなんだよね。生活から生まれてくる言葉。

と、言いつつ今現在、もろもろ悩んでいるオイラ。ロクな生き方をしてこなかったからなあ。でも、絶対に自分の人生の中にヒントはある。それを引っ張り出せる人が成功しているのだろう。

良い悪いは置いといてね。だって、しょうがないじゃん。過去の自分は。そこから生まれてくる言葉を信じるしかない。

ということで、降りてこ~~~い! と念を込めながら白紙に向かうオイラ。

降りてこないかなあ……。

叫訓47

ネーミングがすべてを左右する
中身など後でどうにでもなる

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