フリーランスは障害物競争
ふと、自分の人生を振り返る。
秋だからかなあ?
会社員を10年やって、その後、フリーになって15年。会社員時代もいろいろあったけど、フリーになってからはもっと多くの困難がオイラを待ち受けていた。
もちろん、楽しいこともい~~っぱいあったけど、倍返しされた(笑)。ま、それはオイラの不徳の致すところ。自業自得。
のほほ~んとしていた。ま、どうにかなるだろうと。確かにどうにかなるときもある。仕事が0<皆無>なのに、事務所のベランダで町田康の「どうにかなる」を歌ってた。
それこそ、芸人・有吉弘行さんじゃないけど、大袈裟ではなく“地獄を見た”。
もうこれ以上の底はないだろうと思い乗り切ると、まだまだ底があった。底なしの底。
って、暗い話になっちゃったな。いかん、いかん。そうじゃない。
今回の叫訓はフリーランスの話。
人生はサバイバル
会社を辞めるとき、オイラに雑誌編集の“いろは”を教えてくれた先輩に送別会で言われた。「イノマー、会社員を辞めてフリーになるなら、今の3倍は稼がないとダメだぞ。」
「は、はい」とオイラは言った。でも、まったく何も考えていなかった。だって、次に自分がどんな仕事をするか決めてなかったんだもの。先の見えない三度笠。
当時、オイラは30代前半。フリーで働いていくということがどういうことかさっぱりわかっていなかった。甘かったんだと思う。
オイラのまわりにはフリーの編集、ライター、カメラマン……たくさんいる。フリーランスとして働きながら、しっかりと生計を立てている人間に関して総じて言えることは“貪欲”であるということ。そりゃ、もう、greedyだ。ライオン並みね。
ただただ感心する。何よりオイラに足りないところだから。のんびりしてるもんな。おばあちゃんっ子だったからかしらん?(笑)。
でも、動物は食べる分だけ食べる。必要以上に食べる動物は人間くらいだ。ライオンはお腹いっぱい食べたらしばらくは食べない。
だけど、フリーとして仕事をするならそんなことは言ってられない。1つの仕事にたくさんの人間が群がり、奪い合い、取り合う。
ヤな言い方かもしれないけれど、ひとり占めしようとする。シェアするなんて脳ミソは無い。でも、そうじゃないとやってられないシビアな世界。
お先にどうぞ、なんてあり得ない。食いっぱぐれる。死活問題だ。
勝ちでも負けでもないフィールド
ま、それはどこの世界でも一緒。バラエティ番組のひな壇だって座席数は決まってるわけだもんね。
イス取りゲームみたいなもんだ。
オイラは子供の頃からそういうことが苦手だった。運動会の50メートル走でもわざと遅く走って負けてた。
勝つのは面倒だ。1度勝ったら、次も期待される。勝ち続けるのは疲れる。負けるのには慣れているけど、勝つことに慣れていない。
何だか照れる。1位になったとき、どんな顔をすりゃいいんだ? メダリストは決まってメダルをかじる。メダルにキスをする。とりあえず画にはなるからね。
「何も言えねぇ」って、その通りだと思う。「今の気持ちはどうですか?」って、子供の頃から勝つことだけを目標にしてきたスポーツ選手に聞く言葉じゃない。
アスリートがすごいのは肉体や身体能力もそうだけれども、その精神力、ハートだと思う。オイラには向かない。
だったら、そういう人間はどうすればいいのか? 誰も見たことがない自分だけの走り方をすればいい。
よーいドン! で、いきなり逆走するとかね。父兄の見守る観客席に向かって突進するとか、校門から出て家に帰っちゃうとか。
これは極論かもしれないけれど、決まったルールの中でトップになることがすべてではない。ルールもいずれ変わる。
今日の1位は明日のビリで、今日のビリは明日の1位かもしれない。もちろん、努力することは大事。でも、それだけではないことも事実だ。どうしても逆らえない力というものが時代を作用するときがある。
フリーは常にオープン価格
会社員を辞めるとき、編集部の先輩にこうも言われた。「自分の単価を上げろ。フリーで食っていくんだったらそれしかない。」
要するにページ単価を上げろ、と。たとえば1ページ1万円で仕事の発注を受けるのではなく、最低でも1ページ3万円のライターとなれ! ということ。
これ、相当ハードルの高い指令だ。でも、そうするしかないのだろう。何となくはわかっていた。ちなみに、オイラはお金の交渉は大の苦手。って、今回は苦手だ苦手だばっかりだなあ……。
だけど、仕事のできるフリーランスの人たちはお金の話をスマートにする。オイラの2人目の奥さんはフリーライターだったから、最初の電話からやりとりがハンパなんかった。
「ページ単価は○○○○○円以上からしか受けてないんですけど大丈夫ですか?」
マジかーーー! 1回目の電話からそれ言う!? ビックリした。ま、彼女曰く、ハナっからそういったことはハッキリさせておかないと後々、問題になるかららしい。
実際にお金の話をしなかったばっかりに原稿料が入らなかった苦い経験もあったとか。
しかし、まー、自分の単価を上げるというのは自己価値をアピールすること。でも、そんな価格設定どうすれば?
会社員orフリーランス?
自分のライター(フリーランス)としての値段? いやあ、言い切れないなあ。
よっぽど文章が上手いとか、賞を取ったとか? そんなん、ひと握りの話。勝ち目はない。正攻法では難しい。だとしたら、残された手段は誰もやったことがない、やらないことをやるしかない。
水鉄砲で銀行強盗未遂でもするか? そうすれば、“元銀行強盗ライター”という肩書ができる。って、違うか。
でも、それに近いこと。自分の価格は自分で付けるしかない。10円の単価でも1万円だと言い切る勇気。
言ったもん勝ち、やったもん勝ち。
大学を卒業しても就職せずにフリーターの道を選ぶヤングが珍しくなくなっている昨今。両方を経験したオイラからすると、どっちもどっちだな、と。
よく、“会社員は人生で1度は経験したほうがいい”なんていう言葉も聞くけれども、今更、それもどうなのかな? と。
オイラ周辺には1度も会社員を経験したことがない人間が山ほどいる。
ただ、今現在、会社員で自分の可能性を信じ、フリーランスの道を選ぼうとしている人にアドバイス。突き進むんだったらブッ込んでしまえばいい。夢に向かってGOだ。
でも……。
もう一度、冷静に考えたほうがいい(笑)。
だって、結局、元の会社に頭下げて戻ってる人、い~~っぱいいるもの。そんなカッチョ悪いことするんなら辞めないほうがいい。
ま、結果は人それぞれ。
つーことで、今回の叫訓↓
叫訓50
フリーは目標会社員時代の3倍収入
自分の単価を上げるというシビアな現実
……それくらいの覚悟が必要