元オリコン編集長☆イノマーの『叫訓』

第59回「表紙は雑誌の90%!」――内容は“情熱”“思い込み”!

コンビニにてショックな光景

近所に新しいコンビニエンス・ストアができた。有名な某チェーン店。こりゃいいや! と開店日に行ったのだが妙な違和感が……。

小さな店舗ではあるが、よくあるコンビニの品揃え。何の問題もない。むー⁠ーん。でも、何かが足りない。何かがおかしい。

ふと気づいた。このコンビニには雑誌コーナーがないじゃないか、と。しかし、正確には雑誌売り場はあった。でも、それはあまりにも目立たない。

成人男子の肩幅くらいの棚がひとつトイレ横の隅にポツンとあるだけ。これって、フリーペーパー置いてる棚じゃねーの?

その後、別のコンビニにも行ったのだが、やはり、雑誌コーナーは縮小されていた。雑誌が売れない、なんていう話も聞くけどここまで来たか……。いや、ショックだった。

ま、店側からすれば売れない商品の置き場など確保できないという話なのであろう。利益幅も小さいし、返品作業も面倒だ。

立ち読みしているお客さんが少ないのにもビックリ。雑誌のほとんどは女性誌。しかも、雑誌というよりグッズがメインとなったものが主流。手に取ってみる。あいや~~、これはもう雑誌じゃない。小冊子付のグッズ。

ここ何年そんな傾向が続いているので、そのことには驚きもしなかったけど。実際、オイラもトート・バッグ欲しさに買ったことが何度もある。そんな時代だ。

80年代、雑誌は最大の娯楽だった

モヤモヤした気持ちを解消したく、駅前の本屋へと行った。すると、そこはドラッグ・ストアになっていた。あららん。

別の大手書店へと。中に入ったのだが、フロアはシ~~ン。まるで活気がナッシング。コンビニではなく書店なので棚の数が極端に少なくなった感は無かったけれど、どの棚も寂しそう。オイラも寂しい気分に。

だって、オイラがガキんちょの頃の楽しみったら本屋での立ち読みだったからね(申し訳ないッス⁠⁠。今みたいに立ち読みできないような梱包になっていなかったので、⁠ドカベン』なんて立ち読みで読破した。コントのようにはたきでパタパタされたけど。

中学生、高校生になるとサブカル系雑誌がムチャクチャ新鮮で、発売日を楽しみにして本屋へと行った。買った1冊を1ヵ月、ボロボロになるまで読んだもんだ。

退屈な学校の授業中、昼休み、放課後……読むのではなくて、ずっと眺めてた。

オイラが高校を卒業するくらいにはミニコミ・ブームがあり、素人でも雑誌を作ってインディーズ・レコード取扱店に置いてもらえるようになった。あ、ちなみに、ミニコミって同人誌ね。

オイラも自分で好きなバンドのレコード・レビューを書いたり、ライブに行って写真を撮り、文章を書いて、それをコンビニでコピーしてホッチキスで止めて作ったりした。もちろん、すべて手書き。

インディーズ・ショップに置いてもらうまでは勇気がなくてしなかったけど、友達とかに配って、それなりに評判は良かった。でも、そのときの地道な作業が今につながっている。アハ、今ったってね(笑⁠⁠。この程度だけど。

遊び続けた10年間で時代は変わった

2014年となり、雑誌の創刊話が舞い込んできた。⁠音楽雑誌を作りませんか?』と。悪い話ではない。もちろん、受けることに。

ところが話をしてみると、な~~んにも決まっていない(笑⁠⁠。オイラは会社を辞めてから音楽雑誌とお笑い雑誌、計5誌を創刊した。

全部、廃刊になっちゃったけど(涙⁠⁠。

雑誌を創刊することよりも続けることのほうが難しい。いや、もちろん創刊するのもハンパなく大変だったりするんだけど。

企画書を提出、もしくはもらってから最低でも約1年はかかる。そんなに簡単にできるものではない。

あ、そうそう。今回の叫訓のテーマは⁠雑誌創刊⁠についてね。遅れて失礼。

去年だったかなあ? 次々と連載関係の仕事が終わってしまったので、生まれて初めてハローワークというところに行ってみた。

もう、心臓バックンバックンよ。パックンマックン。社会勉強と思ったのだが、これだけ仕事を探している人が多いことを目の当たりにした。

オイラなんてこの10年以上、ふざけた歌を歌って、自分勝手な文章を書いて生きてきたクズだ。自分を責めた。しっかりしろー⁠ー!

でも、せっかく来たのだからと相談をしてカードをもらうことに。で、雑誌編集という形で探してみたのだが、これが本当に少ない。

Webの編集とかデザインならあるのだが、紙媒体の求人はほっとんど無かった。そっか、もうそういう時代なのね。

どうしてもお金のかかる紙媒体

オイラ知り合いが雑誌デザイン会社の社長をやっている。求人を出すと来るのは40~50代ばかりだと嘆いていた。

でも、中には10~20代で雑誌に思い入れが強く、Webではなく紙の雑誌を作りたいと熱く語る若者もいるとのこと。

Webマガジンは作ろうと思えば、個人でも今は簡単に作ることができる。まー、完成度は置いておいて。

ただ、これが紙媒体となると話は別だ。印刷代、流通費用などもろもろ手間と時間とお金がかかる。

となると、どうしてもスポンサーが不可欠だ。いわゆる広告を出してくれる会社。でも、このご時世である。雑誌に広告を出そうなんていう企業は少ない。

昔からのおつきあいならまだしも、どうなるかわからない雑誌の創刊号に広告など出すはずがない。オイラが逆の立場だったらそうだもの。

ぶっちゃけ、作ってる側だって『良いモノはできたけど、これって売れるのかなあ?』と不安になったりもする。こればっかりは時代と上手く握手できるかどうかによる。その嗅覚こそがヒットの要因。

そこでマジメになって落ちこんだら終わりだ。もうバカになるしかない。自分が作った雑誌が売れないはずはない! という根拠の無い自信。青臭いかもしれないけれど、⁠情熱⁠⁠思い込み⁠だけだ。

雑誌創刊にあたっていちばん大切なこと

先ほども話したけれど、今現在、雑誌創刊に向けて動いている。会議ごとにコロコロといろんなことが変わる。

一体、どんな雑誌が出来上がるのか見失いそうになることもある。でも、自分の中でぶれない軸があれば間違うことはない。

単純なことを言えば、雑誌の表紙を誰にするかで雑誌はほぼ90%は決まったりする。だからこそ、雑誌を創刊するときに最も大切なことはこのアーティストを表紙にするんだ! という強い気持ち。

『表紙、誰にしますかね~~?』なんていう会話が会議の中で出てきたら、その雑誌は永遠に創刊されることはないだろう。

オイラが創刊した雑誌には最初っからそれがあった。だから、創刊に至ったんだと思う。何でもいいから雑誌を作りたいでは100%不可能だ。

そんなに難しいことではない。本当に愛するアーティストがいるかいないかだけの話だ。

ということで今回の叫訓は↓

叫訓59

雑誌創刊は暴走気味の思い込み!
いやらしいけどお金も必要……

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