ログ化した情報を役立てる
前回、筆者はライフログと予定表とを、現在を始点にして鏡対称に広がる情報群だ、と位置づけました。したがって、行動のログを記録しうまく体系化すれば、可能なかぎりスマートに予定をこなせると予想できます。
行動に先だって行動をリードするように、ライフログ・システムが機能したら、それこそライフログの醍醐味ってやつでしょう。
ここで素朴に根本的な疑問をあげると、はたして「うまく体系化」などということが可能なものでしょうか。人生のうち、くり返し行うことははたしてどの程度あるのでしょう。それをうまく体系化なんてできるのでしょうか。
しばしばいわれることですが、現代的な日本人の場合、住宅を購入するのは一生のうちに1回かせいぜい数回だと考えられます(結婚と離婚は、最近は増えているのかもしれませんが、まあこれも数回でしょう)。
このような特別な体験は、ログ化したとしても、再利用できるほど体系化してパターンを抽出するのはむずかしいと考えられます。
車の購入となるとすこし回数は増えて10回前後でしょうか。もうすこし少ないかもしれませんが、このくらいになるとパターン化するメリットの恩恵に恵まれる状況になりそうです。
筆者の場合だと、猫を飼うのがある程度のパターンになっているように思われます。ただし、まだ体系化できるほどではないようです。猫と暮らす日々のパターンはできています。トイレの砂を買ったり、というようなことです。定期的にねこの砂を補充するのを自動化できないかと研究中です。
中規模のパターン
結婚や住宅購入のように、長期的な視野で見て一生に数回のパターンを見いだすことはむずかしいです。ライフログの出番となるのは、もっと視野を絞った、年に数回とかのパターンであろうと考えられます。年に数回程度であれば、比較的ログをパターン化して役立てることが可能になるし、パターン化による省力化の恩恵も出てきます。
特に、毎週くり返しおなじ曜日にあるようなパターンは、それが生活に組み込まれていると、忘れにくいものです。たとえば月曜日に定例の会議があるとか、火曜日は燃えるゴミの日だとか、土曜日には映画を見るとか、毎週くり返して行うことは、わざわざログを記録し体系化する必要もないほど体系化されています。それが生活というものです。
その中間くらいのこと。すなわち、何ヶ月かに1回なのだけれど、それは必ずやってきて、その1回にまつわるいろいろは、具体的な手順をもっていて、その順番に行う必要があるようなものをうまく見いだして、体系化できると、予定がタイミングよく出てくることを可能とするのではないかと考えています。
このようなことは、比較的多いものです。
共同で行う中規模の会議、親戚の集まり、冠婚葬祭、海外旅行や家族旅行などのイメージです。ライブや芝居などもそうです。学生なら学園祭や各種行事などもあるかもしれません。社会人だとなんでしょうね。食事会とか勉強会とか展示会とか学会や研究会でしょうか。通院とかもあるかもしれません。
それらは厳密に順番を追って行う必要があるものであり、特定のパターンをもっているので、それをログ化し、予定に組み込むと、とてもスマートに、予定を組み立てることができる可能性があります。
「ときどき予定」を忘れないシステム
まずはこの特別な予定の名前をつけましょう。
『ときどき予定』(©美崎薫)としてみます。
『ときどき予定』の場合、そもそもそれをスタートするきっかけは、きわめて恣意的なタイミングに依存することがあります。恣意的であるということは、忘れるわけです。
「あれ、**の準備はいつごろやるんだっけ」とふと思い出すと、もう『ときどき予定』の準備のタイミングはすでに手遅れになっていた、とはいかないまでも、出遅れていて予約がとれないとか、取りにくくなっているとか。あるいは予約を取るのに、あと1日早ければ割引期間だったのに、みたいなこともあるかもしれません。
そこで、『ときどき予定』のタイミングを思い出すきっかけとしてライフログシステムを使おう、と考えるわけです。
パターンじたいは、じつはすでに頭のなかにあるので、最初のきっかけだけ与えるだけでも充分機能するかもしれません。前回ご紹介した「(不)定期実行リスト」のリマインダー機能はこれです。
逆に、パターンがかなり厳密にきまっているので、きっかけと同時にパターンを予定化してしまうほうが楽なこともあるでしょう。
思い出すタイミングを与えるためのシステムとしては、この「(不)定期実行リスト」がかなり有効に機能するようです。
これまで筆者は「(不)定期実行リスト」とメーラーを連携させて運用してきました。『ときどき予定』のリマインダー代わりに使ってきたわけです。さらに『ときどき予定』を予定表に登録するシステムも作りました。
これで、ログシステムやメーラー、実行リスト、スケジューラーがすこし回り始めました。動き始めたばかりで検証はこれからですが、1回分を動かした段階では、『ときどき予定』を完全に忘れていても半自動的に調整が行われ、予定まで登録できました。あとはその予定にしたがって行動すればよい、というわけです。
今後さらに『ときどき予定』のパターンの抽出と、対応アクションの抽象化を行うことで、ライフログシステムのサブセットである『ときどき予定』システムを確立したいと思っています。