Lifelog~毎日保存したログから見えてくる個性

第69回ライフログ的ライブの楽しみかた

ライブで合唱

昨年のことになりますが、2011年6月、2日間で11万人を動員した氷室京介の東京ドームライブ『GIG at TOKYO DOME "We Are Down But Never Give UP!!"』にいきました。東日本大震災復興支援のチャリティライブです。

BOOWY世代をターゲットにしたライブで、観客のほとんどに、歌詞もメロディーも入っていて、合唱状態のライブでした。しかしながら、たまたまいっしょにいった相手はBOOWY世代ではなく、したがって歌詞を(ライブを)充分楽しめない状態だったのです。

ライブの「肝」となる2大要素は、セットリスト(曲順)と歌詞(曲)です。アルバムの発売と連動した普通のライブならそのアルバムをある程度聴き込んでからいくものですが、なにしろBOOWYの曲となるとアルバムが10枚くらいあるので10曲ずつとしてざっくり100曲程度あり、全曲をマスターするには時間が不足していたようです。

オリコンによれば、2011年6月12日のセットリストは次のとおりです。

  1. DREAMIN'
  2. RUNAWAY TRAIN
  3. BLUE VACATION
  4. ROUGE OF GRAY
  5. TO THE HIGHWAY
  6. BABY ACTION
  7. JUSTY
  8. WELCOME TO THE TWILIGHT
  9. BAD FEELING
  10. "16"
  11. LONGER THAN FOREVER
  12. MEMORY
  13. B・E・L・I・E・V・E
  14. 季節が君だけを変える
  15. B.BLUE
  16. MARIONETTE
  17. PLASTIC BOMB
  18. DOWN TOWN SHUFFLE
  19. BEAT SWEET
  20. RENDEZ-VOUS
  21. ONLY YOU
  22. IMAGE DOWN

Encore

  1. ON MY BEAT
  2. HONKY TONKY CRAZY
  3. NO.NEW YORK

わたしは『DREAMIN'』『季節が君だけを変える⁠⁠、⁠NO.NEW YORK』のようなメジャーな曲はなじみがありますが、BGM状態で聴いている曲の歌詞といわれると、ぜんぶそらんじている程でもないですし、それをライブでどう伝えるのかもむずかしいものです。

ライブでiPhone

するとその方はどうしたか。ライブ会場でライブの最中であるにもかかわらず、iPhoneを取り出して、歌詞検索サイトで検索を始めたのです。これぞデジタル時代ならではの楽しみかたといえるでしょう。

リアルな現実をデジタル機器を使って「強化していく」作業は、⁠AugmentedReality』⁠拡張現実/強化現実)などと呼ばれます。ライブの会場で歌詞を見たいというニーズは、iPhoneと歌詞検索サイトを使えば、特別な機材などを使うことなく、結構かんたんに実現できるポピュラーな方法になる可能性があります。iPhoneによる拡張現実です。

「ライブのまえにアルバムを聴き込む」スタイルは、それはそれで20世紀的でオーソドックスな方法です。ただ、21世紀の方式はそれとは違うのかもしれないと感じました。

これを拡張していくと、たとえばですが、ライブの最中に好きな曲をTwitterで投票してそれを演奏するとかいうようなことも、可能性としては考えられるわけです。うろ覚えで恐縮ですが、坂本龍一の実験的な演奏会で、そういうのがあった気もします。

リアルタイムで歌詞を表示

先走りましたが、ライブで演奏中に、リアルタイムで曲の歌詞を検索することの可能性はいくつもあります。

たとえば、わたしはメジャーな曲でないと、歌詞はサビくらいしか記憶していないので、そのiPhoneを見せてもらいながら、⁠えっ、この曲って失恋の曲だったんだ」なんて新鮮な驚きにとまどっていました。

ライブでは踊れて楽しめればいいと思っていたので、じつはそんなに細かく歌詞を追いかけたことがないのです。曲を聴きながらちゃんと歌詞を見ると、歌詞の世界はそれはそれで楽しいのだと気づきました。

もちろん、歌詞に疎い洋楽のライブで歌詞は必要なのか、ライブは熱いリズムとメロディーと一体感だけでいいんじゃないか、あるいは歌詞はどの程度価値をもつのかとか、考え始めればきりはないのですけれど、歌詞を知らないで曲を聴くよりは、知っているほうがよいのはたしかです。

会場での制約

ライブの最中にリアルタイムで歌詞を検索する場合、環境によっていくつもの制約があります。

まずなにより曲の最中に歌詞を見つける必要がある、時間的な制約です。ライブの場合1曲を5分程とすると、せめて最初の1分以内に見つけられないと、ライブを楽しめなくなります。アーティストが目の前にいて歌っているのに、歌に集中できないからです。これは、ドームで格闘技を見るときにも共通する点で、せっかく会場に足を運んでも、リングに目を向けず、二次情報である大きなディスプレイを見ていたりします。

次に、歌詞を検索する場合には、歌いだしの歌詞が重要なキーワードです。そのキーワードは、アーティストの言葉から聞き取る必要があります。したがって、滑舌の悪いアーティストや、あるいは音響のよくない会場(たとえば東京ドーム)の場合には、どのようにして歌詞を聞き取るかが重要なポイントです。

歌いだしの歌詞は、可能なかぎり表記のばらつきがないことが望ましいです。英語なのかカタカナなのか、ひらがななのか漢字なのか。悩んでいる時間はほとんどないです。これは、レシピや書籍の検索システムとも共通します。

可能ならサビが頭にあり、曲名がサビに入っているとなおグッドです。歌いだしの歌詞がわからなくても、サビの連呼で曲名を判別できる可能性が出てくるからです。

この条件をあてはめてみると、次の曲名は検索しやすく、

  • DREAMIN'
  • PLASTIC BOMB
  • HONKY TONKY CRAZY

次の場合には歌詞がわかりにくいことがわかります。

  • B・E・L・I・E・V・E
  • B.BLUE

これで曲の作り方も変わってくるのでしょうか。

ライフログ的21世紀ライブ

ライフログの観点からいうと、あるキーワードで検索してその歌詞を表示した場合、その歌詞を表示した時刻を記録しておくと、ライブでの分単位でのライフログ/セットリストを記録できることになります。そこまで緻密な記録に意味があるのかどうかはにわかには判断しかねますけれども、そういうことができる可能性は見えてくるわけです。

21世紀的ライブの楽しみかたは、もっといろいろあるかもしれません。

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